冬のロンドン、Victoria Station近くのCoffee Shopで爆弾テロが起こる。
爆発から数分後、BBC放送局にイスラム過激派から犯行声明があり、アラブ地域からの軍の撤退の政府声明を今夜8時までに出すことを要求し、もし出さない場合はさらなるテロを予告する。
一ヶ月前に刑事に復職したTina Boydは、爆発現場近くで強盗犯の自宅の張り込みをしていたが 衝撃音と立ち上る黒煙を目にして爆発現場に向かう。途中、爆発物をShopに置いたと思われる男を発見し追跡するが、男は逃走中に車に跳ねられ死亡する。
Tinaは、自ら逮捕に向かうのではなく一定の距離を置いて犯人を追跡するように命令されていたにもかかわらず その命令に反して逮捕に向かい、結果、彼から証言を得る機会を失ったことで上司から譴責を受ける。
失職を懸念するTinaは上司から一時的にほかの部署へ移動する要請があったことを明かされる。
上司から渡された連絡先に電話したTinaは移動先がCTC(Counter Terrorism Command)のMike Boltの部署であることを知る。彼とは一緒に仕事したことがある旧知の仲であった。BoltはTinaに一年前に起きたテロ事件の首謀者の1人William Garrett(コードネームFox)を尋問することを要求する。
一ヶ月後に公判を控え、刑務所に拘留中のFoxは、自分たちが起こしたStanhope Hotel占拠事件について黙秘を貫き通していたが、爆弾テロを房内のテレビで見て、今回の事件と自分たちが起こしたStanhope Hotel占拠との関連についての情報を持っていると話し、証言する相手としてTinaを指名していた。
Boltはこれらの事件の背後には国内に協力者がいると確信し、TinaがFoxから彼らの名前を聞き出すことを期待していた。
TinaはFoxと過去になんの関わりも持っていなかった。なぜ彼が自分を指名したのか疑問を感じながらも、重大な任務を与えられたことに精神の高揚を覚える。
Fox は前回のテロと今回のテロは国内の極秘組織The Brotherhoodと称する移民排斥を主張する組織が主導していると話し、彼らの名前を明かすことを条件に、自分の安全と10年以下に刑を軽減するよう要求する。
そして 話の信憑性を疑うTinaに二つのテロに使われた爆弾の供給者としてJetmir Broziという男の名をあげる。Tinaは 3日前にFoxが刑務所内で襲われたことに注目し、その襲撃はテロの首謀者が彼の口封じを狙った可能性が高く、Foxも身の危険を感じて取引を申し出たとみて、彼の情報を信じる。Tinaから証言の内容を聞いたBoltは、Foxの要求を拒否し、情報を小出しにするFoxの狡猾さに苛立ちながらも、Jetmir Broziについて居所などの情報を調査するように命じる。
そんな中、BoltはRichard Jonesという男からテロに関する有力な情報があるとの電話を受ける。軍隊を退役した後、警察官になっていたJonesは、残忍なレイプ犯の反省のない不埒な態度に怒りを覚え、逮捕したときに男に暴行を加えて重傷を負わせていた。
本来なら公務員暴行陵虐で重罪になる可能性が高かったが、Boltは刑を一年に軽減する代わりにJonesに潜入捜査員となることを了承させる。そして、Boltは、Jonesの服役中はFoxの隣の房に彼を拘留しホテル占拠事件の黒幕を聞き出させようとし、何の情報も得ることなく出所した後は Jonesの戦友だったCecil Boormanと連絡を取り彼の仕事仲間になるよう命令する。
CecilはかってFoxの下で働いていたことがあり、ホテル人質事件について共犯の可能性を疑われていた。そして今日、JonesはCecilのボスである男と初めて会い、今日行われるあるグループとの取引に用心棒として彼ら二人が立ち会うよう頼まれたことを話す。さらに Jonesは 男が今朝の爆弾テロについて話し、彼らが武装している以上、自分たちも国や家族を守るために武装する必要性があることを強調していたこと、また 男と会う前にJonesはCecilから 盗聴器などのチェックをされたことを挙げ 今日の取引が尋常なものでないことを示唆する。Boltはその男の身元を探るために車にGPSをつけるよう要請する。
Boltは、Foxとつながりをもった男たちが動き出したことに注目し、彼が言ったJetmir Broziとテロとの関連を調べるため彼の自宅に盗聴装置を設置すべくTinaと一緒に男の自宅に向かう。
そこで Boltはパートナーを死の窮地に追い込むといわれ、Black Widowとあだ名されるTinaのために生命の危機に見舞われる。
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アメリカのテレビドラマ「24」のように朝8時の爆弾テロから最後通牒の夜の8時までの12時間、TinaとBoltがテロを防止すべく手がかりを求めて走り回る様子、そして徐々に明らかになっていくテロ側の行動の様子が緊張感をもって描かれていて、また、予想外の展開がありおもしろく読めた。ただ、結末に消化不良の部分が残るので★一つ減。
最初、この本のあらすじを読んだとき、一瞬、以前読んだ作品だと錯覚した。まず、ロンドン市内で爆弾テロがあり、イスラム過激派からの犯行声明と、ここまでは前回と同じようなストーリー。ただ、ここから展開はがらりと変わってくる。前回はホテルの占拠、実行犯はイスラム過激派とFoxをリーダーとする白人傭兵、とテロリストと標的の場所がはっきりしていた。 今回はテロリストの正体も標的が何処なのかもはっきりしない。前回よりもテロを阻止するハードルが高い。前作「Siege」の続編でもあるが 別に前作を読んでなくとも十分に楽しめる独立した作品であると思う。
イギリスばかりではなくヨーロッパで起きている移民の増加の問題がプロットの一つとなっているが、確かに、旅の番組やニュースなどでロンドンの様子を見ると白人ばかりでなく黒人やアジア系の人が警官や店員になっているのをよく見かける。移民の増加によって少数派となっていく白人たちの危機感、この物語のプロットが分かるような気がする。
また アフガンに従軍した帰還兵士、うまく世の中に適合できない彼らの不満をうまく利用され使い捨てにされていく彼等の悲哀。どこか「ランボー」の映画を思いださせる。
銃を持ったテロリストたちに素手で立ち向かうTinaやBoltちょっとまどろっこしく感じる。犯罪者のほとんどが拳銃を所持している現状で 拳銃を持たずに彼らと立ち向かうのは困難。かと言って、警察のマニュアル通りに 安全な距離をとって武装警官の到着を待つというのは その間に犯人を逃がすことになってしまう可能性があり、パートナーの刑事が尻込みする中 なんとかして逮捕しようとするTinaの態度はカッコいいし、納得がいく。このイギリスの警察官の銃の不所持は読んでるこちらもいらいらする。
★★★★ Kindle版 436 ページ