気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Rage Against the Dying by Beckey Masterman

2014-04-27 10:43:11 | 読書感想

性犯罪担当のFBI捜査官Brigid Quinnは非武装の容疑者を射殺したことが問題となりArizona州のTucsonに転勤させられる。57歳になった彼女はそこで退職し、そのまま町に住み続けていた。

そして余暇を利用して通っていた大学でCarolと云う名の教授と親しくなり結婚する。彼女は、夫には自分がFBIの性犯罪担当の捜査官だったことを秘密にしていた。彼女は、かって、性犯罪事件の捜査を担当していることを知った恋人に去られた苦い経験があり、 もし 彼女が凶悪犯たちを相手に捜査活動がしていたことが牧師でもあるCarloに知られたら結婚生活が破綻すると考えていた。

Brigidは、ここ2年間、単調だが平穏幸せな日々を夫Carolと過ごしてきた。
しかし、そんなある日、元仕事仲間で今は友人の副保安官Max CoyoteがBrigidを訪ねて来たことから彼女の生活は一変する。


MaxはCarolがいないことを確認した後、BrigidがFBI時代に担当したthe R66 murdersと名付けた連続レイプ殺人事件の犯人が捕まったと話す。

今から7年前、the R66 Murdersは、年に一度5年にわたって、夏休みを利用してR66沿いをヒッチハイクをして旅する若い女性を襲い、レイプして殺すという犯行を重ねていた。
捜査を担当したBrigidは 新人の女性捜査官Jessicaを囮にして彼を逮捕しようとしたが、逆に彼女も犠牲者の一人となってしまうミスを犯していた。そして、それ以後the R66 murdersは犯行を止め、事件は未解決のまま、また、Jessicaの遺体も発見することができないままに、Brigidは退職していた。

the R66 murdersの犯行を自白したFloyd Lynchと言う男はミイラ化した女性の死体を車に乗せていたところを検問中の警官に見つかり逮捕された。

Floyd Lynchの車の中にはthe R66 murdersに関する新聞記事の切り抜きと彼の日記が見つかった。その日記には被害者の名前などのほか、犯人と警察しか知らない詳細な犯罪手口が記述されていた。さらに、Lynchは、最後の犠牲者となったJessicaの遺体が何処にあるか知っていると言い、司法当局は、彼がその場所に案内することを条件に死刑を終身刑に軽減する司法取引を決定する。

事件を担当することになったFBI捜査官Laura Colemanは、Maxを通じて、以前この事件に関わっていたBrigidにJessicaの身元確認と捜査協力を要請、死体遺棄現場への同行を求めてくる。
Lynchの案内で遺棄現場に着いたBrigidは そこでかって自分の部下だったミイラ化したJessicaの遺体と対面する。そして、そこには彼女が把握していなかったもうひとりの被害者の遺体があることを発見する。BrigidはLynchが遺体の場所に案内した代わりに自分は死刑を免れると得々と話す態度に憤りを覚える。しかし、長い間重荷になっていたJessicaの遺体をやっと遺族に渡すことができ、また犯人を逮捕したことに安堵を感じていた。

遺体が見つかったという知らせを聞いて駆けつけてきたJessicaの父親と彼女の検視に立ち会い、変わり果てた娘と対面した父親の精神状態を心配しながらも彼をホテルに送り届けた後、Colemanに電話したBrigidは彼女から会って話したいことがあると告げられる。

Brigidと会ったColemanは、Lynchは死体愛好者であって殺人者ではなく、自白は信用できず、真犯人は他にいると主張する。その根拠として、犯人にとって重要な意味のある被害者から切り取った耳が何処にあるかを聞いたときの彼の戸惑った様子、そしてその保管場所を提示できずにいたことをあげる。
次いで、彼女は、Brigidに捜査の協力を求め、尋問のビデオや捜査資料を見てほしいと頼む。

BrigidはColemanの必死さから彼女の疑問を上司のMorrisonや検事に無視され、最後の頼みの綱としてBrigidに協力を求めてきたと推測する。Brigidは他の捜査官と同様にLynchが犯人しか知り得ない被害者の耳が切除されていたこと、Jessicaの遺体が放置されていた場所を知っていたことから彼が犯人だと考えていた。しかし、Colemanの疑問にも一理があり、もし、彼が犯人でない場合、真犯人がまた犯行を行う可能性があるという彼女の言葉に負け、Lynchの捜査資料に目を通すことを約束する。

翌朝、Brigidは一連の出来事を整理するためと気分転換に、家の近くの川に、趣味としている岩石採集に行く。 そこで彼女は熟年女性目当てのレイプ犯に襲われる。反撃した彼女は蛇避け用に杖につけていたナイフで誤って男を殺してしまう。Brigidは正当防衛として警察に通報しようと思ったが、彼女の経歴が明らかになった場合、過剰防衛と取られる可能性が高いこと、また、今まで隠していた自分の過去が夫に知られた場合、結婚生活が破綻すると考え直す。彼女は 警察に通報することを止め、男が自殺したように偽装してその場を去る。

そして、Brigidは男の身元を探る手がかりとして持ちった封筒の中に、彼女の写真とR66 murdersに関するDVDがあるのを発見し、男が自分の命を狙って襲ってきたことを知る。襲ってきた男とthe R66 murdersとの関連性が気になったBrigidは、Colemanから渡された捜査資料を検証する。その結果、彼女は LynchはR66 murdersではないことを確信し、真犯人は他にいるというColemanの話を信じる。

BrigidとColemanはLynchは真犯人を知っている可能性が高いことで意見が一致し、LynchをBrigid立ち会いの下、再尋問することにし拘置所で待ち合わせすることにする。

翌日朝、Brigidが尋問にそなえてLynchの捜査資料を検討している時Maxがやってきて、Brigidがよく行く川縁で男の死体が発見されたことを話す。何か知らないかという問いに対して、Brigidは致命的なミスを犯してしまいMaxに不審をもたれる。さらに、二人のやりとりを聞いていた夫のCarolにも。

Brigidはよそよそしくなってきた二人の態度に不安を感じながらLynchの尋問のため拘置所に向かうが、そこで彼女を待っていたのはColemanではなく、Lynchの国選弁護士だった。Brigidは彼から、Colemanは、彼女がBrigidに捜査協力を求めた3日前に捜査担当を外されたことを知らされる。BrigidはColemanが担当をはずされたにもかかわらず、Lynchをthe R66 murdersだとすることは正義に反すると信じて、独自に捜査をしていく姿勢に昔の自分を思い出していた。
Brigidは解任されたColemanと連絡を取ろうとするが携帯は電源が切られていてつながらず、Eメールを送るが返事が返ってこなかった。
Colemanが解任されたことでLynchを尋問することなどが不可能になり、捜査の糸口を失ったBrigidは、捜査方針を考えるため森林公園を散策するが、そこで彼女は何者かに狙撃される。

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ヒロインが59才というユニークな設定に惹かれて読み始めた。しかし、 年齢が物語に与えている要素は感じなかった。

前半、正当防衛でレイプ犯を殺した後、自分の生活が破綻することを第一に考えて行動するところは、人生の余生を平穏に暮らしたいという平凡な女性という感じがして、元FBIの敏腕捜査官というイメージとはかけ離れているようでいらいらする。しかし、自分の犯した殺人が保安官のMaxや夫に気づかれた後は、ふたりに殺人についての言質を与えず、居直って、孤立無援でR66 murdersを追いつめていく行動力、推理力は敏腕捜査官だったことを納得させる。

また、連続殺人犯を突き止めようとする熱意、正当防衛とはいえ殺人罪で何時自分が捕まるかもしれない恐怖、彼女の二つの心情がストーリーの緊迫感を持たせる。特に Maxが頻繁に彼女につきまといはじめるようになり、逮捕されることはないだろう(物語が成立しないから?)と思いながらも 読むほうをハラハラさせる。

これも2014年MWA最優秀新人賞候補作
私は Ghostmanのほうが好き。

320ぺーじ ★★★   Kindle版 1066円


Ghostman by Roger Hobbs

2014-04-13 09:28:33 | 読書感想

MWA Best First Novel 候補作

俺が最初に銀行強盗を行ったのは10代のときだった。以来20年近く強盗などの犯罪に手を染めながら生きてきた。にもかかわらず、俺は一度も逮捕されたことや職務質問をされたことがない。よって、警察には俺の指紋は登録されていない。いや、それどころか俺の存在自体が知られていない。

今、俺は変装のプロ、Ghostmanと呼ばれている。ある時は20代の若者、ある時は50代の初老の男に見事なりきることができる。俺はJack Deltonという名前の免許証やパスポートを持っているが、それは本名ではない、そのほか、John、Georgeなど様々な名前のものもあるが、どれも同じように本名ではない。おれの本名は警察などの治安機関を含め誰も知らない。

俺の仕事は銀行強盗した奴らの逃走を助けること、強盗した男に別の名前を与えて別人に扮装させ、彼をこの世から消し去ること(disappearing)、いわば、FBIのWitness Protectionの犯罪者版、それが俺、Ghostmanの仕事。

Washington州のSeatle、7月の朝5時。俺はMarcusという男からのEメールの着信音で起こされる。Marcusは銀行強盗を企画立案し、自分は強盗に加わることなしに、男たちを雇ってその計画を実行させるという方法で巨万の富を築いていた。5年前、俺は奴の計画した銀行強盗に参加したが、そこで俺は致命的なミスをしてしまい、彼に借りがあった。

Marcusと会った俺は、今朝、Atlantic Cityで彼が計画実行させたカジノ現金強奪についての顛末を聞かされる。現金輸送車から現金が降ろされカジノに運ばれる瞬間を狙った襲撃。運転手役と襲撃役、二人いれば簡単に成功する仕事と思われたが、現金を奪った後、銃撃戦になり、実行役二人のうち一人は射殺され、一人(Ribbonsという男)は現場から逃走。しかし、当然あるべくMarcusへの連絡がなく、男は消息不明になっていた。

Marcusは強奪した金はFedaral Payloadであると言い、48時間以内の金の回収とRibbonsのDisappearingを俺に依頼する。

Federal Payloadと云われる金は銀行強盗には忌み嫌われる金である。包装されている紙幣にはインク爆弾というものが仕掛けられており、仕掛けを解除することなく48時間経つか、梱包された包装を解くと仕掛けが作動して、紙幣がインクで汚れて使いものにならないように安全が施されていた。

Marcusはアメリカ東海岸のドラッグ王Wolfとのドラッグ取引のために、この金を必要としていた。Marcusはこのドラッグでアメリカ西海岸の麻薬王になることを夢見ていた。しかし、もし、金が用立てできない場合、自分がWolfに殺されることを確信していた。
Marcusはこの仕事を俺が引き受けたら貸し借りなしにすると断言、俺は承諾する。
残り時間、44時間、俺はMarcusの自家用機でAtrantic Cityに向かう。

Atlantic Cityに降り立った俺は、Ribbonsの身元が判明し、彼の顔写真がテレビで全国に流されていることを知る。またFBIが銀行強盗の黒幕として知られるMarcusをマークしていて そんな彼と会った俺をマークしていることを知る。

捜査官に変装して(Ghostmanの俺にとって朝飯前の仕事)襲撃現場に赴いた俺は、現場に残された銃弾や血痕から強盗犯二人は警備員ではない第三者によって狙撃されたことを発見する。それはMarcusの計画は事前に漏れていて、誰かが強奪した金を横取りしようと企んでいた可能性を示唆していた。それを裏付けるかのように、Ribbonsの逃走経路を調査している俺のことを尾行監視している車がいる。Marcusとの5年前の借りをチャラにするために 俺はRibbonsの居場所を突き止めるのに障害となる正体不明の奴らと命のやりとりをすることになる。

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書き出しから物語に惹きつけられていく、一人称で語られていく文のリズムがすごく心地いい。
とてもユーニークで魅力的なキャラクター。ダーティヒーロー、自分の命を狙ってくる奴は躊躇なく殺す。仕事がないときは古代ギリシャやローマの古典を訳すことを趣味とする。
現場にたって そのときの状況を推理していく様子はなかなかの名探偵。ふつうの探偵と違い、ただ悪をやっつけるのではなくしっかり金も稼ぐ。MarcusとかWolf、どちらも冷酷非情というが,そんな彼らが普通の悪人に見えるほどGhostmanのほうが冷酷非情に見える。自分を殺そうとした男は、例え、降伏しても生かしておかない。生かしておく限り、何時また銃を持って自分の命を狙ってくる可能性があるから。

悪漢探偵としてシリーズになることを期待。

Kuala Lumpurの銀行強盗の計画は、あっと思うほどユニーク。どうやって強奪した1800万ドルの大金を持ち出すのかと思っていたがその方法はユニーク。うまく、捜査の盲点をついている。

Kindle版 ★★★★★ 385ページ


It Happens in the Dark by Carol O'Connell

2014-04-03 13:10:53 | 読書感想

冬のニューヨーク、ブロードウェイ。上演中の劇場で二夜連続で観客に死者が出る事態が起きる。開幕初日、最前列の女性が演劇の過激

さに心臓麻痺で死亡。二日目、女性が死亡した時とほぼ同時刻、舞台が暗転したその時、同じく最前列に座っていたその劇の脚本家

Peter Beckが喉をナイフで切って死亡。使用されたナイフは彼の所有で足下に落ちており、死の恐怖を忘れるためか、彼はアルコール

を大量に摂取しており、さらに彼の周りの席は空席だったことなどから地元の警察はBeckは自殺したと結論づけた。しかし、観劇に来て

いた市会議員の要請を受けた市警長官のBealeはNYPDの刑事Malloryたちに事件の捜査を命ずる。

Malloryは左利きのBeckのコートの右ポケットに他のキーとは別に玄関のキーだけがあるのに注目し この男は殺されたと断言する。

 

Beckは舞台が暗転した40秒の間に殺されたことから犯人は舞台関係者の誰かと思われた。

Malloryは 各役者や舞台関係者をそれぞれの位置に立たせ、誰が40秒で殺人を実行できるか検証する。しかし、舞台が暗転した暗闇の

中でBeckの喉を切り裂くことは、殺人者が誰であろうと不可能であると思われた。

また、台本にある40秒の暗闇の設定はghostwriterによって新たに書き加えられたものであることを、Malloryは知る。かって映画界で脚

本家として成功を収めたBeckによって書かれた台本は、舞台のリハーサルを通じてghostwriterによって大幅に書き換えられていた。役者

たちもそれに異議を唱えず従っていることに苛立ったBeckはついにリハーサルにも姿を見せることもなくなくなり、舞台初日にも姿を見

せなかった。Ghostwriterは直接俳優たちと接触せず、舞台裏にある黒板を通して脚本の書き換えなどの彼の指示メッセージを伝えてい

た。黒板のメッセージの検証に向かったMalloryは、黒板に彼女宛のメッセージが書かれているのを発見する。「Good Evening

Detective Mallory.How you inspire Me・・・But You Must Lose Your Lovely Head」

役者たちもその正体を知らないGhostwriterが殺人者なのか?

 

Malloryは、殺人犯はBeckのアパートに侵入し凶器となったナイフを盗むために、彼と行動を共にし、彼の隙を見てアパートの鍵を奪い、

犯行後彼のポケットに鍵を戻したと推理し、自宅から劇場までのBeckの足取りを辿り殺人犯の目撃情報を得ようとする。

舞台初日、二日目と2夜連続で観客が死亡するという事態はマスコミ、世間の関心を喚び3日目の公演が行われるのか、警察の対応に注

目が集まる。Malloryの上司Jack Coffeyは検視医の報告書などから初日の死は心臓麻痺、2日目のBeckの死は自殺と断定し、公演が行わ

れることを認める。Beckは殺されたと信じるMalloryは次なる死者が出ることを警戒して劇場に赴くが、そこにはghostwriterから

Malloryへの「今日こそ、おまえの首が飛ぶ日だ」というメッセージが残されていた。

 

何かが起きることを期待した満員の観客が見守る中、公演が始まる、舞台に現れた女優はMalloryと同じ姿、形の扮装をしていた。そし

て、二人の死者が出た時とほぼ同じ時刻、舞台が暗転し、40秒後明るくなったとき、新たな死者が発見される

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人間離れしたその美しさのため張り込みや尾行が不得手のニューヨーク市警の刑事Mallory、演劇関係者の間でもその美貌、スタイルは

注目の的となる。しかし、彼女はそんな視線も意に介せず、著名な男優であろうが容赦なく容疑者リストに入れ、納得がいくまでアリバ

イの立証をする。

 

勝手はハリウッドで名声を博した役者たちがこの舞台を機会に再び脚光を浴びることを夢見る。また自分の演技への不安、将来への不安

からドラッグを常用、仲間の死よりその死による自分の利得を考える、一般人とはかけ離れた演劇界の倫理、読んでいるうちにこういう

ことも実際にあるかも知れないと思わせる説得力がある。

コートのポケットにあった鍵から自殺でなく殺人だと見破り、Beckが殺されるまでのその日の行動を推理していく手際は見事!

 

しかし、今回のMalloryは彼女らしからぬ点がいろいろあるようにみえる。

 

CSIの女性から教えられるまで台本の内容を読んでおらず、その内容が過去に起きた一家惨殺事件と酷似していることを指摘されるとい

う不手際、彼女らしくない。

また 人手が足りないと言って他の刑事に助力を求め、めずらしくユニット全体の力で捜査を進めているというのも彼女らしくない。

さらに大詰めでもMallory the Machineと呼ばれる彼女らしくない手抜かりがあったような気がする。本来の彼女ならこのような展開にはしないはずと思ったので読み終わった後の満足感がいまいちだった。

ただ、人手不足を訴えるために自分宛の電話連絡先を上司のJack Coffeyの電話番号にしてJackを困らせるのはMalloryらしい。 

Kindle版408ページ1490円 ★★★