気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Find Her by Lisa Gardner

2016-06-19 20:32:03 | 読書感想

アメリカ、ボストン市、金曜日夜、バーで独り飲んでいた女はカクテルをおごってくれた男と店を出たところを、そのバーで働いている大男のバーテンダーに襲われ、意識を失い拉致される。意識を戻した彼女は、自分が全裸で手錠をかけられて男のガレージに放置されていることを知る。しかし、彼女はその事態に慌てることなく、ガレージにあったゴミ箱をあさり、自分を守る武器を作る。そして、男が現れたとき、彼女その武器では男を殺す。

1年前の大怪我から回復できず、一線の捜査から外され、捜査について監督指導する役職に異動させられたボストン市警巡査部長、DD.Warren(D.D) は、拉致されたと思われる20代の女性が両手を縛られていたにも関わらず誘拐犯に反撃して殺したことにショックを受ける。
女性は何者なのか?彼女は、自分の名前を名乗ることなく、FBIのBoston 支部と連絡を取る。さらに彼女は、自分を誘拐した男は、誘拐の手口から見て3ヶ月前女子大生Stacey Summersを誘拐した男だと断言し直ちにこの家を捜索するよう進言する。DD は、彼女が冷静に誘拐された経緯や捜査について助言したりする様子から、彼女は警察関係者かと考えるが、やがて、彼女の要請で駆けつけてきたFBI のVictim Specialist(誘拐事件専門の精神科医)、Samuel Keynesから彼女がかってマスコミを賑わしたFlora Daneであることを知る。

Flora は学生だった7年前に誘拐、拉致され、472日後に奇跡的に救出される。以来、彼女はサバイバル格闘術を学び、二度とあのような目に遭わないよう備えると共に、自分のような犠牲者が出るのを防ぐため自ら囮となってレイプシスト達を捕らえ、警察に引き渡していた。

DD は彼女が今までに3件のレイプシストを摘発し警察に引き渡しているが、この4件目ではレイプシストを殺していることを懸念する。男の部屋を捜索したDD達は、Floraが推測したStaceyのものではなかったが、拉致、殺されたと思われる二人の女性の運転免許証を発見する。そして、マスコミがこの事件を報じた後、Staceyの父親から殺された男が娘を誘拐した犯人であるかどうかについての問い合わせの電話がDDにかかってくる。彼女は電話の内容から、Floraと父親は娘の誘拐について話合っていて FloraはStaceyの行方を追っているのではという疑いを抱く。

DDはその疑問を解明しようとFloraのアパートを訪ねるが、そこで彼女が拉致誘拐されたことを発見する。DDはFloraがStaceyの行方を追っていたのを察知した誘拐犯が彼女も拉致したと推測する。FloraはStaceyの行方をどこまで追っていたのか?またFloraが殺した男はStaceyと関連があるのか?DDは上司から厳命されている刑事達を監督指導する捜査事務の立場を捨て、自ら捜査の先頭に立ってFloraたちの行方を追う決心をする。

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一味違った誘拐を扱ったストーリー。捜査する側と誘拐された被害者の様子が交互に描かれて物語が進んでいくというパターンはよくあるが、誘拐された女性がここまでたくましく、強い姿は痛快、DDが誘拐犯に迫っていくという期待感とFloraが誘拐犯に立ち向かっていくという期待感で、先が気になって終わりまで一気に読める。

特に、物語の冒頭、誘拐されたFloraが逆に誘拐犯を殺すという予想外の展開、いきなり物語に引き付けられてしまった。また、7年前の誘拐された時の彼女のひ弱さと現在の彼女のたくましさとのコントラストがうまく描かれている。

著者もあとがきで述べているが、FBIにVictim Specialsitという被害者の心のケアをする専門官がいるというのを初めて知った。長い拘禁生活の中、公共の場に連れ出されて、逃げようとすれば逃げられるという状況に置かれても逃げようとしないほど誘拐犯に精神的に追い込まれた被害者を元の生活に戻れるようカウンセリングしていくという仕事。たしかに 解放されたからすぐに元の自分に戻れるなんて思えないなと納得。

E-book(Kindle版) ★★★★ 400ページ 2016年2月出版 141円(2016年購入)


The Long and Faraway Gone by Lou Berney

2016-06-12 19:31:14 | 読書感想

2016年 MWA Best Paperback Original受賞作品

過去を忘れて生きようとする男がいる。
26年前、Oklahoma 市の映画館が強盗に襲われ、マネージャーと5人のアルバイトの高校生が射殺される事件が起きる。当時、そこでアルバイトをしていた高校生Wyatt は独りだけ生き残る。何故、自分だけが殺されなかったのか?仲良しだった仲間の高校生が殺され、自分だけが生き残ったことに言い知れぬ罪悪感を男は抱く。彼は、他の州に移り住み、この出来事を忘れようとした。
しかし今、ラスベガスで探偵業を営む男は、上得意である客の依頼を受け、Oklahoma に戻るはめになる。20数年ぶりに町に戻った男は、昔と変わらぬ町並みや建物を眺めるうちに彼を苦しめている過去の記憶が甦る。何故、自分だけが殺されなかった?男は、やむにやまれぬ衝動にかられ、この謎を解明すべく調査を開始する。

過去を忘れずに生きようとする女がいる。
26年前の祭りの夜、一ヶ月前の映画館での惨劇の後、母親は12歳のJulianna が一人で外出することを許さず、5歳上の姉が同行することを条件に州が主催する祭りに行くことを許す。そして、その祭りの会場で、12才になる彼女 を独り残して、姉 は15分で戻ると言って、何処へともなく去っていき、そのまま行方不明になる。皮肉屋だけど妹思いの姉が自分を置いてきぼりにすることはあり得ないと信じて、以来、26年間、彼女 は姉の行方を探し続けていた。
そして、今、彼女は最有力容疑者だった祭りの売店にいた男Crowleyが町に戻っていることを知る。Juliannaは、姉は彼女を残して彼に会いに行ったと思っていた。姉の事件を担当している刑事から犯罪常習者である彼に近づくなと言う忠告を無視して、彼女は、彼に会いに行く決心をする。男はアリバイが認められ、姉については何も知らないと刑事に話していたが、彼女は男が姉に関する手がかりを知っていると推測していた。

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ある意味で、何とも不思議な展開。こういうミステリーもあるんだ?というのが率直な感想。僕には予想外だった。

Wyatt(男)は探偵という能力を生かし、証言、証拠資料に疑問点を見つけると、その点を徹底的に調査し、その調査の過程で更なる疑問点を見つけるという手法で徐々に真相に迫っていく。現在の事件を含め、謎の解明の仕方が見事だった。
Julianna(女)も、は何度も何度も、当時の捜査資料を精査し、どこかに捜査漏れがないか調べ、26年経った今も、姉の事件を担当している刑事と会い、気付いた点を捜査してもらうよう提言する。姉に関する情報を得るためなら、たとえ、全財産を失っても良いと考えているところに彼女の意思の強さを感じる。

ふたりのキャラも魅力的。たびたび出て来る過去の思い出の感傷にひたるシーンは、そこで人生を終えた人々と今も生きている彼らとの対比でしんみりさせてくれる。そして、Arielという若い女性、天涯孤独で、子宮がんの可能性が高いにもかかわらず陽気で楽観的にふるまいながらJuliannaにつきまとってくる。看護師であるJuliannaが過去と決別して、今を生きようと決心する大きなきっかけを与える、最後に、彼女とArielが語るシーンは良かった。

E-book(Kindle版) ★★★★ 2015年2月出版 454ページ 231円(2016年5月購入)


Cuts Like a Knife by M.K.Gilroy

2016-06-01 19:48:23 | 読書感想


土曜日朝、7歳になる姪の所属するサッカーチームのコーチをしているシカゴ警察署(CPD)の殺人課刑事Kristen Connerはチームの祝勝会に参加していた時、上司からの若い女性が殺されたという電話を受け、直ちに捜査本部に向かう。
いつものように一番最後に捜査会議の席についた彼女は、いつもと違いそこにFBI捜査官が同席していることを知る。
FBI が作成した犯罪データベースプログラムProject Vigilance (VP)は、今回シカゴで起きた殺人事件を全米各州にまたがって47件の犯行を繰り返しているシリアルキラーの48件目の犯行と断定する。Killerは狡猾で手がかりをほとんど残さずに、ある街で数件の殺人を実行した後、他の町へ移動し、そこでまた複数の殺人を繰り返すという行為を数年に亘って行っていた。
Austin Reynoldsと名乗ったFBI捜査官は、Killerは47件目の殺害を行った後、ここシカゴに移り住み、6か月の周到な準備をした後、女性を殺害したと断言する。そして、PVの分析から、殺された女性はこの町で最初の犠牲者であり、Killerは第二、第三の犯行をこの町で計画していると主張し、一刻も早く彼を逮捕する必要があると力説する。
Kristenは 今までに48人の女性を殺し、さらになお女性を殺そうとしている殺人犯の存在に怒りを覚え、必ず、自ら逮捕することを誓う。
そして、FBIとCPDの合同捜査本部は48人の犠牲者のうちの半数近くが禁酒の会(AAmeeting)に参加していたことを突き止め、犠牲者とKillerの接点がこの会合にあると考えて、彼女たち捜査官に、この町のさまざまな場所で行われている禁酒の会に潜入捜査するよう命ずる。しかし、Killerに対するなんの手掛かりを得ることができないままに第2、第3の犠牲者が出る。またマスコミもKillerの存在を知り、世間は騒然となっていき、彼女達捜査陣は窮地に陥る。

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ミステリーとしては、物足りない。でもキャラクターは魅力的で最後まで楽しませてくれる。物語は、刑事である彼女の日常生活とその雑感が、彼女の目を通して語られていく。アメリカの理想的な家族像を具現する彼女の家族、日曜日、朝は必ず教会に行き、夜には家族が揃って夕食を取るという、善良無垢な母親を中心とした家族の絆の強さ、そしてお互いを思いやる微笑ましい会話。また同僚の刑事たちに対する彼女の人物評、および捜査会議についての感想観察がユニークで面白い。また彼女の母親、姉、妹や刑事達のキャラクターも魅力的。ただ、物語は、最後に彼女の捜査能力が認められてFBI にスカウトされるところで終わるのだが、彼女の捜査能力の優秀さが読んでいて分からなかった。

ただ ページを読み飛ばしたかと思うほど物語の繋がりの唐突さ、さっきの話の続きはどうなった?と一瞬戸惑ってしまう。とくに、クライマックスの物語の流れには抵抗があった。

ミステリーとしてはいまいちだけど、Kristenや家族のキャラが魅力的で次の作品も読みたくなる。

E-book(Kindle版) ★★★ 2012年10月初版  355円(2016年購入)