気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Make Them Pay(Lucy Kincaid12) by Allison Brennam

2017-03-28 18:54:31 | 読書感想

結婚式を2週間後に控えた朝、FBI捜査官Lucy Kincadeと婚約者Seanが住む邸宅にSeanの姉Eden Roganが訪ねて来る。彼女と彼女の双子の兄Liamはヨーロッパに住んでいてSeanとは疎遠になっていたが、彼は二人に結婚式の招待状を出していた。SeanはWitness Protectonの保護下にある彼の息子Jesseに会いに行っており、連絡が取ることが不可能な状態の中、LucyはEdenに滞在先として自宅を提供する。

LucyからEdenがSeanとLucyの自宅に滞在していることを聞いた上司のNoah Armstrongは彼女の来訪に疑問を感じる。LucyはEdenとは初対面だったがNoahは彼女のことをよく知っていた。6年前、彼は2人が古美術品を盗んでは、収集家に売り付ける犯罪を何度も繰り返していることを突き止めたが、具体的な証拠をあげることができず彼らを逮捕することはできなかった。彼は、彼女の巧みな人心掌握術に何度も騙された経験があった。今回も、彼女は結婚式に参加するために来たのではなく、何か他の目的があってSeanの留守を狙って来たという疑惑を彼は持っていた。NoahはEdenに会い、直ちに立ち去るよう要求するが弟の結婚式に参加すると言って拒否される。疑念を持ったままEdenのもとを去ったNoahは彼女が兄のKane Roganを恐れていることを察知し、彼に連絡を取り彼女の目的を探ろうとする。

そんな中、昼食を取りにSiobhan Walshと一緒に自宅に戻ったLucyは、待ち構えていたEdenの双子の兄に捕まり、Seanの金庫に入っていた600万ドルの債権とともにメキシコに拉致される。彼らは、決してLucyに危害を加えることはないというメモをSeanあてに残していく。しかし、彼女が拉致されたその場所は先月、彼女がNoah達と乳幼児売買を行なっていた犯罪組織を摘発した場所だった。そして、組織の再建を図る犯罪組織のボスJasmineはLucy達に対する復讐を誓っていた。

メキシコにいたKaneはNoahの電話でEdenがSeanの家にいると聞き、Edenが滞在する理由が、彼がSeanに一時的に保管を頼んだ債権であることを即座に理解する。彼はFBI本部に戻ったNoahに、Seanの家に戻りEdenから目を離さないように要求する。そして、彼はSeanやLucyに連絡を取ろうとするが留守電になってしまい、二人と連絡が取れないことに苛立ちを感じる。Seanの家を再度訪れたNoahは、LucyとSiobhan WalshがEdenとLiamに拉致されたことを知る。そして、そのことはすぐにKaneをはじめJackなどKincadeやRogan家族の知るところとなる、息子との面会を終え帰宅したSeanを含めて。彼らは、EdenとLiamがLucyを傷つけることはないと思いながらも、Lucyがメキシコに拉致されていることを犯罪組織が知った場合、彼女の身が危険になることを危惧して、一刻も早く彼女を救出するべく行動を起こす。

******************************************************:****************

もっとLucyが活躍することを期待していたのだが、拉致されてジタバタしているだけで、いつもの推理力や行動が見られず残念。今回はKaneやNoahの活躍がメインだが、Lucy救出作戦はよく練られていて読み応えがあり、面白かった。

自分たちの正当性を主張しあう家族同士の揉め事に巻き込まれてLucyが誘拐されるが、誘拐した方も危害を加えないと断言しているので、Lucyの身にたいする危機は感じられないと思いたいのだが、彼女が壊滅状態に追い込んだ犯罪組織が彼女に復讐を企てている。Lucyが監禁されている場所は彼女の縄張り。このまま、単なる家族間の争いで終わるはずがないという期待感、ドキドキが先へ先へと読ませる。

犯罪組織の女ボスJasmine、Kaneの恋人Siobhan Walsh、Edenなど女性の強さが目立った。Seanも含め、そんな女性たちを愛する男たちの心情もよく描かれている。

E-book(Kindle版) ★★★☆ 416ページ 2017年3月 825円(2017年3月購入)
Lucy Kincaid Series(出版順 2010年12月28日~)
(1)Love Me to Death (2)Kiss Me,Kill Me (3) If I should Die (4)Silenced (5)Stalked (6)Stolen (7)Cold Snap (8)Dead Heat (9)Best Laid Plans  (10)No Good Deed  (11)Lost Girls  (12)Make Them Pay


The Ex by Alafair Burke

2017-03-16 19:04:53 | 読書感想

2017年MWA、Best Novel候補作


2015年6月、朝 7時、ニューヨークのハドソン川沿いにある運動場で銃の乱射事件が起こり、3人の市民が犠牲になる。捜査を担当したNYPDは、事件発生時現場付近にいたJack Harrisを殺人罪で逮捕する。彼の上着からは硝煙反応があり、またJackは犠牲者の1人、Malcom Neeleyを殺害する十分な動機を持っていた。

3年前、後にPen Stationの大虐殺と名付けられた銃乱射事件があり、13人の死者と多数の怪我人が出る事件が起きる。Jackの最愛の妻Mollyも犠牲者の1人だった。犯人は母親の自殺によって精神的障害を負った15歳の少年、Todd Neeley。Toddは 通勤客でにぎわう駅で父親のMalcomから買い与えられた3丁の銃を乱射した後、自ら自殺する。Malcomは、息子の精神的障害を癒そうとしてToddに銃を買い与え、射撃場に頻繁に彼を連れ出していた。
Jack達、犠牲者の遺族は、精神的問題のあるToddに銃を買い与えた父親に怒りを覚え、彼の保護責任を問う集団訴訟を起こすが、先月、訴訟は却下されていた。Jackは却下の決定に不満を感じ、Malcomに対する怒りを募らせていた。

刑事専門弁護士Olivia Randallは、父親を助けてほしいと言うJackの娘Buckleyからの電話を受け、元婚約者だったJackと20年ぶりに警察署で会い、彼の弁護を引き受けることにする。彼女は、20年前、Jackとの婚約を破棄するときに彼女が行ったことに、今なお罪悪感を感じていた。彼女は5年間の交際を通して、彼の人の好さ、善人ぶりを熟知していた。提示されている不利な証拠にも関わらず、彼女は、彼が乱射事件を起こすことなどあり得ないと信じ、彼は誰かに嵌められたと考えていた。

彼女は、彼の無実を証明するため、乱射事件が起きる時刻に運動場で彼と会う約束をしていた謎の女性の正体を突き止めるべく全力をあげる。だが、ここ20年間のJackの行動を調べ始めた彼女は、かってJackが彼女を殺すことを考えていたことなど、彼が彼女の知らない暗い一面を持っていることを知る。Jackが善人であるという彼女の信念が揺らぎ始めるが、彼女は感情に左右されることなく、次々と発見される事実に基づいて彼の有罪の有無を判断することを決意する。

**************************************************************

Jackが無実だと思わせる証拠が見つかった、と思うと逆に有罪が確実だと思う事実が発見されたり、最後まで彼が犯人かどうかわからず一気に読ませてくれる。最後は予想外の展開で衝撃的、でもちょとしんみりした終わり方。

ヒロインOlivia Randallのキャラは刑事弁護士としての能力はクールで魅力的。検事が提示した証拠、反論のしようがないと思う相手の論理を見事に覆す弁論の巧みさ。Jackの言っていた女性が実際に存在することが証明され、彼の無実が証明されたと思ったら、いやそんなに簡単じゃないよという論理を展開する。証拠や事実に対する分析力、思考力が見事で小気味が良かった。
ただライフスタイルでは、よくわからないキャラ。婚約したにもかかわらず、それを相手に破棄させようとして他の男と関係を持つ?反省していると思いきや、今も妻子ある男と不倫している。


E-book(Kindle版) ★★★☆ 283ページ 2016年1月出版 887円(2017年購入)


What Remains of Me by Alison Gaylin

2017-03-05 18:06:38 | 読書感想

2017年MWA、Best Novel候補作

ハリウッドの映画関係者の子供たちが大半を占める高校に通う17歳のKelly Lundは15歳の時、最愛の双子の姉を事故で亡くして以来、誰1人、友と呼べる人がいなかった。彼女以外の誰もがリッチな服装をしている中で、自分1人みすぼらしい恰好をしていることを皆に揶揄されて、孤独感を強めていた彼女は、最近転校してきた映画スターSterling Marshallの娘Bellamyからパーティに招待される。そして、Bellamyを通して、父親同士が親友であるという有名映画監督John McFaddenの息子で子役タレントでもあるVeeとも友達になる。その日から、彼女は真面目で孤独な少女から、ドラッグやパーティ、そして危険な遊びに参加する少女に変身していく。

しかし、彼女は青春を楽しむ友達を得たが、映画関係者の子供達とは付き合うなという母親の忠告を無視したため、母親から絶縁される。そして、KellyがVeeの父親で映画監督であるJohnを射殺し、刑務所に収監された時、彼女は唯一の友達BellamyとVeeから絶縁される。

そんな中、Kellyは、唯一刑務所の彼女のことを気にかけ接触を続けていたBellamyの弟Shaneと獄中結婚式を挙げる。そして、釈放されてから5年、彼女とShaneはハリウッド郊外に邸宅を構える。やっと落ち着いた人生を送れると考えていた彼女にさらなる試練がやってくる。Shaneの父親で映画スターのSterling Marshallが自宅で殺される事件が起きる。手口は30年前のJohnが殺された時と同じ。警察もマスコミもKellyの犯行と疑う。そして彼女の最大の理解者であったShaneも彼女の犯行を疑い、彼女から離れていく。

孤独と絶望に陥った彼女に、30年前、法廷から出てきた彼女の姿をMona Lisa Death Smileと名付けた著名な新聞記者Sebastian Toddが接近してくる。彼は彼女がJohnを殺した犯人ではないと信じていると話して、彼女にある手掛かりを与える。その手掛かりをもとに事実を調べ始めたKellyは、彼女の家族の衝撃的な秘密を発見する。

*********************************

この本を読んでいて感じるKellyの心の叫び。
please don't leave me,Mom. I don't have anybody else. P140より
She cried everything she'd lost with John's death... p152より
" Don't leave my life"、"What makes you think I'd do that?",
"Everybody else dose." P209より
 

母親、友人、そして夫、皆が彼女を見捨てていった。にもかかわらず、彼女はBellamyが彼女の唯一の友達であるとまだ信じて、いつかまた彼女とVeeとBellamyの3人で語り遊ぶことを夢見ている。なんか健気で応援したくなるキャラ。

現在の事件と過去の事件が交互に語られていく。過去の事件は、事件の4ヶ月前から事件当日までカウントダウンしていくが、彼女の犯行を裏付けるような事実が次々と明かされていきその日が近づくにつれ、緊張感が高まっていく。さらに 現在の殺人事件、いきなり彼女に不利な証拠が立て続けに提示されて、どうなるのかドキドキさせる。予想外の結末、伏線、小道具がうまく活かされていて、真相が最後までわからず、面白く読めた。
ただ、この小説作法はあまり好きでない。今、読んでいる部分は過去なのか現在の出来事なのか混乱してしまう時がある。

E-book(Kindle版)★★★★ 375ページ 2016年1月出版 1119円(2017年購入)