気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Hardball by Sara Paretsky

2013-10-27 09:36:02 | 読書感想

 

恋人のMorrellとイタリアでの休暇を過ごしてシカゴに帰ってきたV.I.Warshawski(Vic)。久しぶりに仕事に戻ったVicは事務所の前に顔見知りのホームレスEltonが倒れているのを発見し、救急車を手配、病院に付きそう。彼の無事を確認し、事務所に戻ったVicを病院でEltonの入院手続きをしてくれたKaren Lennonという介助養護施設付きの女性の牧師が訪ねてくる。彼女は自分の施設に死期が迫っている黒人の老婦人Cladiaとその姉Ellaがいて、二人は姉の息子Lamontを探しており、できたらVicに探して欲しいと頼む。それも無報酬で。

Karenの熱意に負けてとにかく彼女らに会いに行ったVicは、探す相手は40年前に行方不明になった当時21歳、生きていたら61歳になる男と聞いて唖然とする。息子の失踪当時、二人は警察に行ったが、黒人である彼女らはまったく相手にされなかった。以来、二人は警察に不信感をもっており、探偵を雇うことを考えていた、報酬は姉が死んだときにはいる保険料で払うことにして。即座に断ろうと思ったが、甥であるLamontの消息を知ることが死が迫ったClaudiaの最後の望みであると知り、Vicはその仕事を引き受けることにした。

Vicは40年前のLamontの友人、知人に彼の消息を尋ねるが誰も彼の消息を知らなかった。
しかし、彼が黒人少年グループで組織されたAnacondasに所属していたことがわかる。彼を洗礼した牧師はこのグループが麻薬、殺人、強盗など行っている犯罪グループと断定し、それに加わっていたLamontも麻薬を売っていたと糾弾した。
一方、牧師の娘のRoseはLamontは人種差別に不満を持っていて、公民権運動を主導しているキング牧師を白人の暴徒から守る一員として活動していたと牧師の発言を否定した。
さらにRoseは、その夜Vicに電話をしてきて、Lamontが失踪したといわれる日の夜、彼がAnacondasのリーダー、Johnny Mertonと一緒にいるのを見たと告げる。

Vicは当時の状況を調べるために大学の図書館に行き、1967年1月25日、Lamontが目撃された最後の日、身元不明の死体が発見されたという新聞記事がないか調べる。記事を検索している中、Vicは、Lamont の友人だったSteve Sawyerが、前年の8月6日に起きたHarmony殺人事件の犯人として逮捕され、その裁判が1月25日に行われるという記事を見つける。そして、1月30日の記事で動機も凶器も不明のまま有罪の判決を受けていることを知る。
Vicは、Steve の所在を突き止めようと刑務所のデータベースにアクセスするが、どこにも彼の名前は存在せずLamontのように消息不明になっていた。Vicは州検事局に勤める友人にHarmony殺人事件の裁判記録のコピーを頼む。
裁判記録を読み始めたVicは彼を逮捕に行ったのが父のTonyであることを知り呆然とする。
1966年8月6日、公民権運動のデモ行進、それに反対する白人との騒乱の中、Harmony Newsomeは殺された。捜査を担当したLarry AlitoGeorge Dornickは この混乱の中、殺害場所や凶器を発見できなかった。しかし、クリスマス直後、匿名の情報によってSteve Sawyerを逮捕する。三日後、Steveは自白した。自白以外何の証拠もないままに陪審員は有罪の評決をする。Vicは この情報提供者がLamontではないかと推理する。そして、それを知ったJohnny Mertonに殺されたのでは考え、現在、刑務所に収監されている彼との面会の必要性を感じる。
また、当時の新聞記事や裁判記録によると、裁判に出廷したSteveはおどおどして精神が不安定な状態のように見え、拘留中に拷問された様子が推測され、Vicは父もその拷問に加わったのではと不安になる。

Johnnyとの面会の段取りを考えている中、KarenがVicに会いに来て、知り合いの修道女FrankieがHarmonyが殺されたデモに彼女と一緒に参加していたと話し、FrankieはSawyerが逮捕されたことに疑問を感じ続けていて、Vicにあって話したいことがあると伝言されたと告げる。Vicは、Frankieに電話してSawyerのことを聞こうとするが重大なことなので直接会って話したいとして、予定しているアイオワ州での仕事をすませてから会うことにする。

VicはSteveを密告したのはLamontだという推測を確認するために 収監中のJohnny に面会に行く。何も収穫がなく事務所に戻ったVicは、室内がめちゃくちゃに荒らされているのを発見する。さらに姪のPetraがいつもつけていたブレスレットが落ちており、以後Petraと連絡が取れないことから 彼女は侵入者に誘拐されたと思われた。

姪のPetraは両親とカンサスに住んでおり、父の故郷のシカゴに来るのは初めてだった。大学を卒業した彼女は父の友人で上院選に立候補するBrianの選挙活動のボランティアとしてシカゴにやってくる。彼女は父親のシカゴ時代の様子や父方の家系の歴史に興味津々で、昔、Vicたち家族が住んでいた家やVicの父親の遺品などを見せて欲しいと頼み込み、Vicはそれらを案内しながら、昔の思い出を彼女に語ったりした。Vicは Petraの若さあふれる行動力や明るさをうらやましく思っていた。

Vicは 事務所に仕掛けてある防犯カメラのビデオからPetraが二人組の男と一緒に事務所に入るのを見て、この男たちがLamontに関する調査を妨害する目的で乱入し、Petraを拉致したと考え、この二人組を特定すべく全力を挙げる。また、最近、Petraがふさぎ込んでいたように見えたことから、彼女の周囲の人物にも聞き込みを開始する。

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久しぶりにVicの物語。携帯電話、インターネットでの個人や会社の必要な情報を調査できる時代になっても、ジョッギング、ムスタングの愛車、常に弱者の立場に立つという信念、昔も今も変わらない、 読んでいて安心感がある。
例によって最初の章はトラブル発生に会うVic.そして、その事態に至るまでの過程が次章から語られていく。やがて、最初の章を受けて物語が盛り上がっていく。いたるところに事件を解く鍵が隠されていて後で納得。よくできている。

印象に残ったのはそれぞれの父娘の問題。 苦労して一代で精肉会社の社長になった父を尊敬し、その大好きな父のルーツを探ろうとする娘、厳格な牧師の娘として生まれ、夜遊びしている若者の仲間に加わることができず、好きなボーイフレンドに自分の心を打ち明けることもできず男が出てくるのを道路で佇んで見守る娘、尊敬する父親の彼女の信頼を裏切るような行為に戸惑うVic、拷問などないと信じようと捜査に携わった刑事たちが否定すると安心したりする。特に、牧師の娘Roseの人生には切なさを感じる。


Vicの物語は重厚感がある、アメリカの暗い部分を常に主題に取り上げる。今回は 60年代のアメリカの公民権運動。当時の状況をネットで検索してみると キング牧師のシカゴでの運動は白人による反抗でうまくいかなかったようだ。牧師は白人が投げたレンガによって血を流しながら行進していたようだ。しかし、物語で語られているように非暴力主義に反発して結成されたブラックパンサーや黒人のストリートギャングなども協定を結び、このデモに参加してキング牧師を白人の暴徒から守っていたようだ。

★★★★


High Treason by John Gilstrap

2013-10-14 09:56:08 | 読書感想


Jonathan Grave シリーズ#5

アメリカの民間航空機がミシガン湖上空でStingerミサイルで爆破される事件が起きる。
1週間後、ワシントンのナイトクラブthe Wild Times Barで銃撃事件が起き、シークレットサービスが殺され、お忍びで来ていた大統領夫人Mrs Darmondが誘拐される事件が起きる。事件が公になったときの国民に与える衝撃を考え、FBI長官Irene Rivers(通称Wolverine)は秘かに婦人を救出することを決定して、古くからの盟友である人質救出専門家である民間人Jonathan Graveに救出を依頼する。

誘拐犯は現金の要求、政治的な要求など行わず、沈黙を守っていた。誘拐の目的を探ろうと婦人の身辺を調べたJonathanは彼女がアメリカ国内で破壊工作を行っていたテロリストだったという驚くべき過去の秘密を発見する。彼女は免責を条件に米国内のテロリスト達の情報をFBIに与え、ウィットネスプログラムのもと名前を変えてアメリカ市民として大統領のTonyと結婚していた。

一方、ワシントンの新聞記者David Kirkは、大株主の父親を後ろ盾に、上司の命令を無視し、勝手に取材したり、取材した記事をブログに載せ、その閲覧数の多さから自己の才能に自信満々、怖い物知らずだった。

ある日、知り合いの警官DeShawn Lincolnからナイトクラブの銃撃事件について特ダネ情報があると電話を受ける。待合せ場所に行った彼は、二人組の男たちに襲撃される。かろうじて窮地を脱したDavidは 待ち合わせたDeShawnは殺され 警官殺しとして彼が指名手配されていることを知る。


婦人の手がかりを探していたJonathanたちは彼女の友人Albert Banks 、 Steven Gutowskiが襲撃の現場の近くにいたことが携帯の通話記録から知る。その一人Albertを訪ねた彼らは、その男が自殺する現場に出くわす。Wolverineにその事実を報告したJonathanは彼女から、もう一人の男Stevenが拷問の末,、殺されていたと告げられる。また、彼女は、警官殺しで指名手配されているDavidという新聞記者が彼のブログで殺された警官はナイトクラブでの銃撃事件に関連して殺されたと投稿しており、彼が誘拐事件について何か情報を持っている可能性があるとして、Jonathanに彼の保護を要請する。保護に向かったJonathanはそこで警官を殺した二人組と遭遇する。格闘の上、彼らを捕獲し、Davidを助けたJonathanは彼らの拠点に彼らをかくまう。
AlbertのPCを調べたJonathan達はそこにアメリカ国内の橋やトンネルなどの多数の施設の設計図を発見し、さらに捕獲した男から在米ロシア人によるテロ組織が結成され 彼らがそれらの施設の破壊を計画しており、航空機爆破もその計画の一部であることを知る。

ナイトクラブの銃撃事件は、テロ計画の首謀者が婦人だと考えたシークレットサービスが彼女を拉致尋問するために行ったことなのか、それとも第三者なのか?大統領夫人をテロリストと疑うという、下手をすると大逆罪(high treason)になる危険を冒しながらもテロ攻撃を防ぐためJonathanは彼女の行方を突き止める決心をする。

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息もつかせず最初から最後まで引っ張っていく。プロットも捻りがうまく、次なる展開が予測できない。救出場面は迫力があって誰が生き残るのか(もちろんJonathanとBoxersをのぞいてだけど)ハラハラしながら読んでいった。しかし、bad peopleとgood peopleとわけてbadに対しては情け容赦なく殺戮していくのは殺人を楽しんでいるようで抵抗がある。

★★★☆ Kindle版 697円


The Other Woman by Hank Phillippi Ryan

2013-10-06 10:32:26 | 読書感想

ボストン、10月深夜 週末の夜、川に架かる橋の近くで相次いで身元不明の若い女性の死体が発見される。マスコミは同じ犯人の仕業とみて連続殺人犯を「Bridge Killer」と名付けて騒然とするが、捜査に当たるBPDのJakeは、彼らの中にテレビレポーターのJaneがいないことを寂しく感じながらも、事件は偶然だとして連続殺人を否定した。

一方、Jakeの恋人、テレビレポーターのJaneは、スーパー業界の大物のセックススキャンダルをレポートする。しかし、報道したテレビ局はその男から事実無根だとして名誉毀損で訴えられる。Janeは裁判で報道の取材元を明らかにすることを拒否したため、陪審員は根も葉もないことを報道したとして名誉毀損を認めTV会社に一億円の損害賠償を命じる評決をする。そして、彼女は解雇される。

Janeのこれからを心配した恋人のJakeは、彼女に就職先として日刊紙Boston Registerを紹介する。
しかし、新聞記者として新聞の一面を飾る記事を書くことを夢見ていた彼女に与えられた仕事は、上院選挙に立候補した州知事Owen Lassiterの婦人Moira Lassiterの行方を突き止めインタビューすること、およそ、一面を飾ることなどない地味な仕事だった。与えられた仕事に落胆しながらも彼女はMoiraと連絡を取ろうとする。選挙序盤は夫と共に選挙運動に参加していたMoiraだが突然、選挙運動からも、社交界からも姿を消していた。彼女になにが起きたかを探るようJaneは編集長Alex Wyattに命じられる。

 Alexから与えられた知事の選挙活動の資料の写真から、Janeは選挙キャンペーンのすべての現場の最前列に常に20代の女性がいることを発見する。彼女はその女性とOwenが愛人関係にあるのではと疑う。そして、そのせいでMoiraは家に引きこもってしまったのではないかと推測する。
それを裏付けるかのように、JaneはMoiraとのインタビューの時、Moiraから夫が浮気している可能性がある、相手(other woman)を突き止めて欲しいと頼まれる。Janeは、もし彼が浮気していたら大スクープになり、新聞記者として最スタートした自分の自信になると考え全力を挙げて調査に取り組む。

そんな中、さらに橋の近くで同じような殺人事件が起き、第3、第4の犠牲者がでる。しかし、Jakeは別々の事件だという信念を変えない。捜査が進むに連れ、やがてJakeの捜査とJaneの調査とが関連をもっていることがわかり、二人はお互いの情報を交換しあいながら捜査をすすめていく

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おもしろかった。途中から 読むのを止められなくなり深夜までかかって読み切った。

Janeは新しい職場で自分の能力を認めさせようとして 特ダネを得ようと焦っている、何かミスをしそうでハラハラする。とくに、Janeと違い読者であるこちらはすべての状況を把握しているので Jane が犯人の思惑どうり行動するのがわかりハラハラして途中で読書を止められない。、

JakeとJaneの恋は事件記者と事件を捜査する刑事、そこまでしなくてもと思うほど秘めやかな恋。彼女が書いた記事がJake から与えられた情報に基づいて書かれた思われたら二人とも職を追放される。二人ともそのことをわかっているのでデートなどはせず やりとりは携帯のみ。今どきの恋にはめずらしく微笑ましい。

また、二人の怪しげな女性がでてくるのだが 僕の想像したことと違っていた、まんまとミスリードされた。

Kindle版 ★★★★