気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Scarecrow by Michael Connely

2015-06-21 16:14:12 | 読書感想

 

金曜日の午後、LAの新聞記者Jack McEvoyは経営が悪化しているタイムズ社から解雇通知を受ける、新人のAngela Cookの後任教育をすることを条件に2週間の猶予を与えられて。

40代の彼は、もはや自分を採用してくれる新聞社はないと考え、新聞社を去るに当たって、残り2週間で新聞記者として永遠に自分の名前が残るような最高の記事を書く決心をする。

彼は、解雇通知を受けた直後に苦情の電話がかかってきたtrunk murder事件に関する記事に注目する。事件は、LA南部の黒人スラム街で黒人ギャング団の一人でドラッグ売人の16歳の少年Alonzo Winslowがドラッグを買いにきた白人のストリッパーDenise Babbitを残忍な方法で殺し、その死体を彼女の車のトランクに隠した事件だった。容疑者はドラッグの売人、被害者はドラッグ常習者ということでJackも編集長もさして事件に関心を示さず、彼は警察発表のままに記事を書き、社会面の片隅にその記事は載せられた。少年の母親と名乗った女性Wanda Sessumsは、息子は無罪だと主張し、記事の訂正を求めていた。さらに 彼女は16歳という年齢なのに犯罪の残忍な手口から、裁判が少年としてではなく、成人として裁かれる可能性に怒っていた。

Jackは 犯罪者の身内から無罪を主張する電話が来るのには慣れていた。たとえ、決定的な証拠があっても、彼らの家族は、新聞記事は嘘で彼は無罪だと苦情を言ってくる。Jackは、彼が書いた記事を読み直し、少年が犯行を自白したと警察が発表していることから有罪を確信する。

彼は少年が どうしてこのような残虐な犯罪を行ったのか、10歳のときから学校に行くのを止め、ドラッグ売人になり、ついには殺人を犯すようになった原因は何か、この事件をとおして貧困と犯罪の密接な関係について書くならば、自分の新聞記者として最後の仕事として相応しい記事が完成すると考えていた。

Jackは、Sessumsに少年が無罪ならばすぐに釈放させると言い、弁護士に電話をさせて、Winslowの供述調書を手に入れる。調書を熟読したJackは9時間に及ぶ尋問にもかかわらず、Winslowは窃盗については自白したが、殺人についてはかたくなに否定していることを知る。また、Winslowが殺人を犯したという証拠もないことがわかり、Jackは 彼の有罪について疑問を感じ始める。さらに彼は、Angelaがインターネットでtrunk murderを検索した結果から、2年前、今回と同じ手口で女性が殺されたが事件が、Las Vegasで起きていることを突き止める。事件は女性の死体が元夫の車のトランクの中で発見されたため、元夫が逮捕され有罪となっていたが 元夫は無罪を主張して控訴していた。

どちらも同一犯とすれば大スクープになると予感したJackは事件の当事者に会うためにLas Vegasに向かう。その途中、かって一緒にPoetという男による連続殺人事件を解決したFBI Rachel Walling捜査官に電話して、彼女に捜査に参加するよう要請する。

一方、インターネットで自分の犯した殺人に対する情報が検索されるのを監視している男がいた。ちょうど、畑の作物を食べにくる鳥たちを監視している案山子のように。男は Jack達が情報にアクセスするのを検知、直ちに対策を立て、Jackを罠にかけるべく待ち構える。

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一つの謎が解けると、次なる謎がとテンポよく物語が展開していき面白かった。

犯人の先の先を読んでいる犯行は鮮やか、なんでそのような行動を取るのか?読む進んでいくとその意味が分かってくる。警察の捜査手法をあらかじめ予測して組み立てられた犯人のミスリードの手法には感嘆。そんな犯人の意図を見破って、彼を追いつめていくRachelとJackの推理も見事。とくに、ついに犯人を特定するときのJackの推理は、あっ、そういうことかぁ! と感心した。

この本を読んでいると、インターネットの普及による新聞業界の苦境が伝わってくる。そしてデジタル化に対応できないアナログ人間のJackのデジタル人間(mojo)に対する反発も。ふとKindleで本を読んでいる僕は出版不況に一役買っているのだろうかと考えてしまった。

  ★★★★ Kindle版 559ページ(長さを感じさせないおもしろさ)


Memory Man by David Baldacci

2015-06-14 08:38:55 | 読書感想

深夜、張り込みから帰宅したBurlington 警察の刑事Amos Deckerは妻と娘が殺されているのを発見する。愛する人を失った悲しみから彼は自殺を図るが、駆けつけた警官によって止められる。
彼は 警官になる前、Burlington出身の唯一のプロフットボールプレイヤーとして、全市民から期待されていた。しかし、デビュー戦で頭を強打し、生死の境をさまよう。奇跡的に命を取り留めた彼は、選手生命を無くすが、代わりに観たものすべてを記憶する能力を身につける。
彼は警官になり、その能力を生かし、相棒のMary Lancasterとともに犯人逮捕に優秀な検挙実績をあげていた。
しかし、妻子が殺された後、その特殊能力の故に、惨たらしく殺されていた妻子の記憶が際限無く彼の頭に浮かび、働く気力を無くした彼は、警官の職も自宅も失う。そして、生活費を得る目的で、私立探偵となり、元同僚の警官たちの紹介してくれる仕事で、かろうじて今日の食事をありつけるホームレス一歩手前の生活をしていた。
そして、事件から16ヶ月経った今、元パートナーだったLancasterが彼を訪ねてきて、男が出頭して彼の妻子を殺したことを自供したと伝える。
男はSebastian Leopoldと名乗ったが、ホームレスで身元を証明するものは持っていなかった。Leopoldは事件の一ヶ月前、7ーElevenでDeckerが彼をバカにしたことに恨みをもって、彼の妻子を殺したと供述していた。しかし、完璧な記憶を持つ彼は、7ーElevenでLeopoldが言ったような出来事の記憶がなかった。
Deckerは、彼の母校でもあるMansfield高校で起こった銃の乱射事件で署内が騒然としている状態を利用して、弁護士を装ってLeopoldに会い、彼が真犯人であるか見極めようとする。Deckerは自らの記憶と照合しながら、Leopoldから犯行の内容を聞き出し、彼がマスコミに載っている事実以外、警察が内部留保している事実を供述しないことから、Leopoldは犯人ではないと確信する。
Leopoldの尋問の後、家に戻ったDeckerは待ちかまえていた元上司の警部Millerから、無断で権限もないのにLeopoldに会ったことに釘を刺される。
だが、元同僚だった刑事たちの子供たちが通うMansfield高校の銃乱射事件が気になって様子を見に行ったDeckerは、Millerからofficial consultantとして事件の捜査に加わるように要請される。
Deckerは事件の現場に佇む人々の悲しみを観て、さらに、犯人が誰にも目撃されずに現場から逃走できたことに興味を抱き、捜査に協力することに同意する。
事件現場と目撃者たちの証言記録をすべて彼の記憶に刻みつけ、その記憶を検証した彼は次々と犯人の痕跡を突き止めていくが、犯人へとたどり着く手がかりは得られずにいた。そんな中、彼は、この事件で使用された銃が彼の妻を殺した銃と同じものであることを知らされる。
Deckerは、妻子が殺された事件はcold caseとなってしまったが、この事件の犯人を逮捕することが妻子殺しの犯人を捕まえることになると知り、動機、手がかりを徹底的に追及していくことを決心する。
それは やがて今以上の絶望感に彼を直面させることになるのだが・・・

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捜査が行き詰まったら、現場に戻るという現場100回という言葉が刑事にあるが、このDeckerはまさに、その言葉通りの行動をとる。現場に佇んで、その風景を心に記憶させ、目撃者の証言などと照らし併せて、じっと手がかりを探る。
またこの物語の中には犯人の侵入、逃走経路についての謎解きがあるが、学校の校内の見取り図があると読む方は助かる。

メモリーの記憶という点、色とか数などがからんで、ちょとまどろこっしい。同じような設定のBrenna Spectorのほうがすんなり物語にとけ込んでいる。
ただ、完璧な記憶能力を持っているために、忘れたい妻子が殺されていた場面が目の前に浮かんできてしまう。完璧な記憶をもっているなんて羨ましいと思っていたが、そういう負の一面もあると書いてあるのは新鮮だった。

Deckerというキャラがしっくりこなかった。妻子を殺されて生きる気力を無くして自殺を図る。ふつう、こういう場合、犯人を突き止めることに執念を燃やすことを期待して読む、迫力不足。

犯人の執拗なまでのDeckerへの執着理由がなかなか明かされない。Deckerも必死に考えるのだが分からない。理由が分かったとき、ちょっと犯人にも同情してしまう。それを見透かしたような最後のどんでん返しにはビックリ。

 ★★★★ Kindle版 405ページ

 


Mr.Mercedes by Stephen King

2015-06-07 09:02:51 | 読書感想

WIINNWER OF THE 2015 EDGAR AWARD FOR BEST NOVEL

2009年4月、リーマンショックで不況にあえぐアメリカ中東部の都市。職を求めて市役所が開くのを徹夜で並んで待つ人々がいる。
その人々の中に、後に盗難車と分かる一台のMercedesベンツが意図的に何度も突っ込み、8人がひき殺され、多数のけが人が出る事件が発生する。Mercedes Killerと名付けられた犯人は車を残し,現場から逃走する。

この事件の捜査責任者だった刑事Bill Hodgesは犯人を逮捕することなく定年を迎える。
定年から6ヶ月、凶悪犯の逮捕ということが生き甲斐だった彼は、人生に目的を失い、テレビのワイドショーを観ながら酒を飲むという自堕落な生活を送りながら、自殺を考えていた。そんな彼のもとに、Mercedes Killerは自分だという男から手紙が届く。

男は、二度とこのような事件は起こさないと言いながら、車で人を殺したときの快感を滔々とまくしたて、多くの人が自分の起こした事件をテレビやネットで観て楽しんでいると語る。また、シリアルキラーの逮捕に失敗した刑事が自殺した映画の話をし、暗にHodgesに自殺を勧めているようにみえた。さらに男は、男と接触する手段としてネットのUnder Debbie's Blue Umbrellaというチャットルームを指定し、そのサイトに彼がメッセージを残すことを求めていた。

Hodgesは手紙の内容から、男は、彼が常に酒と銃を手元に置いて、時には銃口を口に入れているのを窓越しに目撃していると推測する。また、二度と事件は起こさないと言っているが、男は再び世間の脚光を浴びることを望んでいることが文面から窺われた。
彼は、この手紙を警察に届けたならば、刑事の一人から手紙の内容がマスコミに漏れ、この事件が再び世間の注目を浴びることが男の望みと考え、自分一人で事件の再捜査に取り組んでいく決心をする。彼は、酒もテレビも見るのを止め、手元に置いていた銃も金庫にしまう。そして手紙の内容から、男が真犯人だと断定し、文体、使われている単語などから犯人像を探ろうとする。さらに、ネットでMercedes Killerの事件の新聞記事を調べる。さらに、かってのパートナーで、今、この事件を担当している刑事Peteから、彼に悟られることなく、事件の最新情報を得ようとする。Hodgesは、刑事時代の自分に戻ったように、彼が行動していることに満足し、久しぶりに精神が高揚するのを感じる。

小学校が終わる2時ぐらいまではPCの修理屋として、2時からは子供相手のアイスクリーム屋として、車でHodgesの住む周辺を巡回しているMercedes KillerことBrady Hartsfieldは、Hodgesに手紙を書く。彼の退屈しきった顔を見て、彼がその手紙を警察には届けず、自分で動くと考えて。彼は手紙に次の犯行は無いと書いたが、次なる犯行に備えて、自宅の地下室に多量のプラスティック爆弾を保管していた。
しかし、その犯行の前に彼はやるべき仕事をもっていた、Hodgesを自殺させるという仕事を。彼は、Hodgesの退職記念パーティーが盛大に行われたという報道記事に激怒していた。市の歴史上、最悪の惨事を引き起こしたMercedes Killer事件の犯人の逮捕に失敗したにもかかわらず、Hodgesが、優秀な刑事だったとして、退職パーティを開いてもらったことが、彼には許せなかった。Hodgesは負け犬で、勝ったのは自分なのだから。彼はHodgesを自殺に追い込む手段を準備して、Hodgesがチャットルームにログインするのを待っていた。

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序盤は犯人BradyとHodgesとの心理ゲームのようだ。Mercedes Killerを捕まえるという目的ができ、再び、人生に生き甲斐を感じはじめるHodgesと、その生き甲斐を挫折させて自殺に導こうとするBrady。ネットへのメッセージを通して、相手の意図を判読し、自分の意図する方向に相手を引き込んでいこうとする。その駆け引きが面白い。

中盤からは、二人の駆け引きが伯仲して、読むのが止められなくなるほど緊迫した場面が続き、どきどきしながら最後まで読み切った。

キングは、SF作家、スリラー作家だと思っていた。彼のMWA受賞におやっと思ったが反省してます。
手紙の内容を分析して犯人像に迫ったりするのは、シャーロック・ホームズのミステリーを連想させたし、車のKeyの問題は密室殺人を解くようで、キングはミステリーもすごいんだと実感した。

ただ、身勝手なHodgesという男は、あまり好きになれないキャラクターだった。
僕のお気に入りのキャラはある女性。普通、女性は命の危険に迫られるとパニックに陥り為すすべもなく男の助けを待つが・・この女性がたくましく成長する姿は、読んでいて心地よかった。

 ★★★★ Kindle版 紙の本の長さ 449ページ