気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Hold Still by Lisa Reagan

2014-11-23 08:54:29 | 読書感想

Philadelphia警察の刑事Jocelyn Rushは、車を離れた一瞬の隙に3歳になる愛娘を乗せた車をカージャックされる。必死に車
を追いかけたJocelynは他の車に遮断され停まっている車に追いつく。怒りに我を忘れる性癖がある彼女は、カージャック犯を
車から引きずり出し、怒りに刈られて犯人が倒れ伏すまでめったうちにする。

警察に男を引き渡した後、犯人と格闘した際に受けた傷の治療に病院に行った彼女は、パトロール警官だった時代に補導などを
通して顔見知りになった女性Anita Grantに会う。Anitaはかって売春婦として通りに立っていたが4年前に足を洗っていた。
しかし、子供の養育費や母親のガンの治療費のためインターネットに広告を出し再び売春を始めていた。そしてネットの広告を
見て連絡してきたLarryと名乗る黒人の男とその友人のAngelと喫茶店で待ち合わせる。しかし、二人の様子に危険を感じた彼女
は交渉を中断してその場を立ち去るが、尾けてきた男たちによって車に拉致される。
廃屋に連れ込まれた彼女は、そこに待ちかまえていたスキーマスクをかぶった白人の男に両手両足を床に釘で固定された後、男
たちにレイプされる。女性を釘で床に磔にし、二人の男にレイプするよう促し、その様子を見て興奮する、仲間からFaceと呼ばれていた白人の男の異常さにJocelynは怒りと戦慄を覚える。

またJocelynは、彼女を看た看護士の女性から6ヶ月前にも同じように被害を受けた売春婦がいたことを知らされる。Jocelynは
同じ男たちによる報告されていない犯行が他にもある可能性を危惧する。

Anitaが拉致された瞬間を目撃していた男が、彼らの車のナンバーを見ていたことからLarryの身元と住まいがわかり、彼の家に
向かったJocelynはそこにAngelもいることを発見、二人に署への同行を求める。

JocelynとパートナーのKevinは二人を尋問するが、二人はあらかじめ示し合わせていたようで、彼女を拉致してセックスしたこ
とは認めたが磔にしたことと白人の男の存在は頑強に否定する。
Jocelynは10代の頃、妹が少年たちにレイプされる場面を目撃し、以後、家族の絆が崩壊してしまった悲しい過去を持ってい
た。そして今でもレイプ事件は悪夢となって彼女を苦しめていた。それゆえ、彼女はレイプ犯には異常な憤りを覚えていた。
性犯罪はSVU(Special Victims Unit)が扱う事件で自分たちは管轄外と主張するパートナーのKevinにSVUが多忙でこの事件に手
が回らないことを言い訳にしてJocelynはこの事件の捜査にのめり込んでいく。
そしてJocelynは、自分が得た情報をSVUに伝えていたが、事件を担当する警部Calebから何の連絡がないのにいらだち、自らSVU
に出向き捜査主任のCalebに会う。
彼は彼女の捜査協力に感謝し、彼らの犯行と思われる事件が4年前から起きていたと話す。事件の被害者は何れも売春婦、そし
て彼らが起こした最初の事件の時、白人の男はマスクをつけておらず被害者Raeann Churchは彼の素顔を見ていたという重大な
事実を告げる。
JocelynはLarryとAngelが本名を名乗っていたことについて、彼らは犯行後、金を置いていったので娼婦たちはレイプについて
警察に話さないと安易に考え、身元を隠さなかったと推理する。一方、マスクをした白人の男は身なりの良さからレイプに関与
したことがわかると身の破滅になるような人物だと推理する。Jocelynは、行方がわからない最初の犠牲者Raeannの居場所を探
し出し、男の正体を突きとめようとする。

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性犯罪ということで物語が暗い、じめじめした印象を与える。その暗さを補うため娘の出てくる場面を随所に入れて愛らしい描
写で読む側に清涼感を与える。ただ、ヒロインの娘の可愛がり方はちょとオーバーだと思うのだけど。
レイプ犯の二人があっさり捕まって、あれぇと思っていたらもう一人の白人の正体がなかなか掴めず、こちらもあれこれ推理す
るのだが・・けっこうよくできている。
Jocelynの捜査能力は人の手助けがあって事件を解決していくようで、もうひとふんばりかな。

Amazonのプライム会員なのでこの本は無料で読めた。いままで無料本、いろいろ挑戦したけどこの本が最後まで読み切った唯一
の本だと思う。おもしろかった。

★★★★ 366ページ


Sycamore Row by John Grisham

2014-11-16 09:32:19 | 読書感想

ミシシッピー州の片田舎Clantonに住む事業家Seth Hubbardは、長年の間、一族が所有する広大な土地に生育しているSycamore
の古木で首を吊って自殺する。彼は癌の末期症状にあり苦痛に耐えきれず自殺したと思われた。自宅に自筆のメモが残され、自
殺することや自分の葬儀や埋葬場所についての指示が書かれていた。

翌朝、Clantonで弁護士事務所を開業しているJake BriganceはSethからの手紙を受け取る。Jakeは朝食に立ち寄った店でSethが
自殺した件が話題になっていたので彼が自殺したことは知っていた。Jakeは面識のない自分に当てた手紙の内容に興味を引かれ
る。手紙には自筆の遺言書とJakeを遺言書の検認手続きの弁護士として指名するという文書が入っていた。

遺言書は彼の子供や孫には一切の財産を与えず、家政婦として3年間勤めていた黒人のLettie Langに遺産の90%を与えると
いう驚愕の内容だった。
Jakeに宛てた手紙の中でSethは、当然、この内容に彼の子や孫から反発があり遺言書を巡って法廷闘争が起きると予測し、この
遺言書が検認されるようJakeが全力をあげるよう指示していた。

検認手続きは子供達に葬儀を行わせた後に、という指示に従い、葬儀後、Jakeは遺言書の検認の申し立てを裁判所に提出する。
そして Lettieに会い 遺言により彼女がSethの遺産2000万ドルの90%を受け取る権利を持っていることを話す。Sethの
自殺で仕事を失い、これからの生活に窮していた彼女は、その知らせに驚き、喜び、涙する。そんな彼女にJakeはSethの親族か
ら遺言への反発があり、裁判で遺言書の無効を証明するために彼女に対するきびしい言葉が浴びせられることは必死であり、裁
判は厳しいものになると忠告する。

やがて、陪審審理が始まる。親族側の弁護士は、親族を排除して3年間しか勤めていない家政婦に遺産のほぼ全額を与えるとい
う遺言は常識から考えてあり得ない、Lettieが性的に誘惑して遺言書を書かせたか、痛み止めの薬の影響で意識朦朧とした状態
でSethが遺言書を書いたものであり、遺言書は無効であると主張する。
Jakeはそれに対して反論していくが、彼自身もなぜSethが家政婦のLettieに巨額の財産を与えたのかわからなかった。陪審員に
遺言書を認証してもらうには、その理由を明らかにする必要があるとJakeは痛感する。Jakeは元弁護士で事務所のオーナーであ
Lucian Wilbanksの協力を得てその理由を探り出そうとする。

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Lettieのシンデレラストーリーはわくわくする。親族から看病に対するねぎらいの言葉をもらうこともなく、早く首にしようと
いう会話を聞いてがっくりする彼女、不幸のどん底に陥った彼女が遺言の内容を知らされて幸福の高みに駆けあがっていく様子
はなんども読み返したくなる。

ただ、常識からいうと相手側の弁護士の言い分がもっともだと思う。SethがなぜLetteiにほぼ遺産の全額を与えたのか 陪審員
同様、こちらもその理由が知りたくて読書スピードがあがっていった。
裁判での弁護士双方の弁論は迫力がありおもしろかった。

そして Lettieに巨額の遺産が舞い込むと知ったとたん、彼女に群がってくる親族と称する黒人達。そして巨額の報酬を当てに
して裁判に群がる弁護士達。もしかして人間不信に陥っていたSethは天の高みから人間どもの業をあざ笑うためにこの遺言を残
したのか?と思ってしまった。

終わり方はよかった。読み終わった後もほのぼの心に残る物がある。しばらくその余韻に浸り、なにもせずボーとしていた。

ただ、彼の作品は映画的。場面が変わると、それぞれの場面で、それぞれの人物の視点からその場面が語られていく。僕として
はJakeの視点で、それぞれの場面が語られていく方が物語にとけこみやすい。

 ★★★★ 459ページ Kindle版 734円

 


A Time to Kill by John Grisham

2014-11-02 10:15:45 | 読書感想


Mississippi州の片田舎Clantonで貧しい人々の法律問題を助けるStreet Lawyerとして働いている弁護士のJake Briganceは貧しい黒人Carl Leeから弁護の依頼を受ける。
かって彼は殺人罪で起訴されたCarlの兄Lesterを裁判で無罪にしたことがあった。

ドラッグ取引で前科のある白人の若者Cobbと友人のWillardは、Carlの10歳の娘を拉致し暴行を加えたうえ、レイプしたことで警察に捕まる。
瀕死の重傷を負わされた娘に会ったCarlは報復として男達を射殺して殺人罪で逮捕されていた。
同じように娘を持つJakeは彼の怒りと悲しみそして彼の行為が理解できた。

Carlが二人を殺したことを認めているので、Jakeは娘を持つ親の心情を陪審員に訴えて無罪を勝ち取ろうと考える。しかし、陪審員は同情だけでは白人の若者を殺した罪を免責しないと考えた彼は、犯行時Carlは精神錯乱状態(心神喪失)にあって刑事責任を問えないと主張することによって無罪を勝ち取ろうとする。

Jakeは白人が人口の大多数を占めるこの場所での裁判は黒人の被告には不利と見て裁判を他の地域、黒人が多い地域で行うことを提訴する。
つぎに陪審員の選定で黒人とこの事件に同情的な陪審員を選ぼうとする。
さらに、裁判では検事や判事に注意されても陪審員に被告に同情するように意識を植え付けていく。

一方、町では教会の黒人牧師が中心になってCarlを支援すべく周辺の地域からの黒人達を動員して集会を連日開く。
そしてそれに呼応するかのようにKKKが町に乗り込んで来て、Carlに死刑を求め、彼を弁護するJakeに脅しをかけてくる。Jakeは自宅の庭で十字架を燃やされたり、爆弾を仕掛けられたり命の危険に迫られる。

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Grishamのデビュー作で今さらとも思うが、彼の最新作「Sycamore Row」がJakeを主人公にしているらしいので こちらから読むことにした。

僕は まず殺人があって、それを捜査する過程でさらなる殺人が・・というストーリが好きなのだが、理由はどうあれ、二人の若者を殺した男を、どうやって無罪放免できるのか?Jakeが奔走する様子、なかなか興味深くおもしろく読めた。

陪審員が同情からCarkを無罪にするためには、嘘でも良いから彼が心神喪失状態だったと主張することが、陪審員にとって彼を無罪にする言い訳になるという元弁護士Lucienの言葉はうまく考えたなぁと思った。
しかし、KKKに対して警察が何もできないというのは、それが現実なのかもしれないが不満。

物語の冒頭の男達の犯行の描写は、この男達は生きるに値しないと思わせる。
Carlが殺したことが明白なのでほかに真犯人が・・ということもなく殺人事件の裁判がどのように進んでいくのかが克明に描かれていく。
まずは予審、そして大陪審、陪審員を選定する審理、小陪審(裁判)。陪審員達の裁判の間の待遇の様子、判事室での判事と弁護士、検事との頻繁な話し合いなどアメリカの裁判の過程を知るにはいい本だった。

 ★★★★ 515ページ ペーパーバック