ダンポポの種

備忘録です

気を付けましょ、落とし物

2022年07月16日 22時05分00秒 | 鉄 道

↑先日、こういうニュースがありました。
財布を早く拾いたい!という乗客の気持ちは分かるけど、非常停止ボタンを押してしまったのはダメやね。
拾い棒というか、マジックハンドみたいな〝掴んで拾い上げる道具〟はホームに常備されてないのか?
或いは、そんな道具が常備してあったら、好き勝手に使われ過ぎて、それこそ運行障害を引き起こすかな
動画中にもあるけれど、山手線みたいに運行本数が多い駅では『安全上、拾い上げるのが終電後になるケースもある』とのことですね。線路に財布を落としたぐらいじゃ、大都市の電車は止められないのだな。

   ◇          ◇          ◇

私も、プラットホームから線路へ、大事な物を落とした経験がある

何年も前のことだけど、私は、東海道新幹線の東京駅ホームで、きっぷを線路に落とした経験がある。
東京駅から新幹線で京都へ帰ろうとしているときだった。
着ているワイシャツの胸ポケットに「携帯電話」と一緒に「乗車券と特急券」を入れたのが、失敗の原因

まず最初に、東京駅の新幹線改札口を入ったとき、自動改札機を通した「乗車券と特急券」を、とりあえず胸ポケットに押し込んで、ホームへ向かうエスカレーターに乗ったのです。
きっぷを〝とりあえず胸ポケットに押し込んだ〟のが、運の尽き
もともと胸ポケットには、「携帯電話」が入っていました。そのポケットへ、さらに「乗車券と特急券」を2枚重ねた状態でスッと滑り込ませたわけです。

エスカレーターでホーム階へ着くと、列車はまだ入線していなくて、待ち時間がありました。

次の瞬間、私は、胸ポケットから携帯電話を取り出そうとしていました。
ポケットに「乗車券と特急券」が一緒に入っていることは、早速、忘れてしまっていた

胸ポケットから抜き取られる携帯電話。
それにくっ付いて、乗車券と特急券も引きずり出される。
しかし、私はそれに気付いていない。
私の手が掴んでいるのは、携帯電話だけ。

ぴゅうううぅぅぅぅぅぅぅ~。
計ったように、プラットホームを風が吹きぬけた。

胸ポケットから携帯電話を取り出した瞬間、2枚のきっぷもポケットから飛び出して、宙に舞った 
風に躍る、きっぷ2枚。
事に気付いた私は、宙に舞うきっぷを掴もうと、ジタバタした。
「ムッ ハッ ターッ!
1枚は掴んだ。
でも、もう1枚は、風が連れ去った。
逃げていく、きっぷ。
一瞬、ホーム上(床面)に落下した。
「落ちた! チャンス!拾えるぞ!」
だが、駆け寄った私の手が伸びるよりも先に、次の風が吹いて、きっぷをさらった。
逃げていく、きっぷ。
最後は、木の葉のように転がりながら、ホームから線路へ落ちていった
「げげーっ きっぷが線路に落ちたぁっ

手でキャッチできた1枚を、改めて見る。乗車券だった。
ということは、線路に落ちたのは特急券だ。のぞみ号の指定席特急券だった。

まだ列車は入線していない。
私は、ホームから少し身を乗り出して、線路を見おろした。
「あっ、あそこに落ちているぞ!」
線路上に落ちている特急券を、目視で確認できた。
どうにかして拾い上げることはできないか…?
次の風が吹いたらまたどこかへ飛んでいきそうで、危うい。

私は、ホームの駅員を呼び止めて、事情を話した。
その地点の線路を指さして、特急券を落としてしまったことを伝えた。
駅員もホームから覗き込んで、線路上にきっぷが落ちていることを確認してくれた。
ホーム下の業務通路から拾い上げられるかどうか、状況を調べてくれることになった。
すぐにホーム上から拾うのは難しいようだ。

まもなく、ホームに列車が入線する旨、アナウンスがあった。

16両編成の新幹線電車が、勢いよく、ホームへ進入してきた。
〝ダダーン。ダダン、ダダーン。ダダン、ダダーン……〟(←入線時のジョイント音である)

入線先頭の16号車から、15号車、14号車…と、結構なスピードで私の目の前を通り過ぎていった。
当然ブレーキが掛かっているので、電車の速度はどんどん落ちていって、停車するわけだけれども。
果たして、線路上のきっぷはどうなったか? 非常に不安だ。

ホーム下の業務通路まで確認に行ってくれた駅員が、私のところへ戻ってきて、言った。
「いま、この列車が到着するときに、風圧できっぷはどこかへ飛んでいってしまったようです…」
もはや、きっぷの行方は分からないという。
新幹線の風圧!? もう絶望だ

かくのごとき次第で、私は、
『新幹線のプラットホーム(改札内)に居るけれど、新幹線特急券を所持していない奴』
という、ややこしい立場に陥った。乗車券しか持っていない
「あなた、特急券を持っていないんですか!」と不正乗車を疑われたら、どうするよ。
私の潔白を…。唯一事情を知ってくれているこの駅員から、私は離れてはいけない。

「こうなってしまった状況で、今から新幹線に乗るには、僕はどうすればいいですか?」
私の問いに、駅員は即答した。
「もう一度、特急券を買い直してください」

なんということ もういっぺん買えってか

駅員は、こんなことも言った。
「きっぷをもう一度買い直して乗車したうえで、あとで紛失したきっぷが見つかった場合は、それと引き換えに払い戻しを受けられる」と。
規則なのだろうけれど、でもそれは、紛失したきっぷを〝私が〟見つけ出した場合の話なのだろう。飛んでいった特急券を、私が見つけて、取り戻してこなければいけない。けれど、線路に落ちたあげく新幹線電車の風圧でさらに吹き飛ばされて行方不明になってしまった1枚の特急券を、プラットホーム上しかウロウロできない私が見つけ出すのは非常に難しい。現実的に無理だろう。
また、きっぷを買い直して京都へ帰った場合に、「あとで、紛失したきっぷを発見」しようとするには、私はきっぷを探すために改めて東京駅へ出てこないといけないじゃないか それこそ有り得ない。

特急券を買い直すように、という駅員の指示に従った。
私は改札口へ降りていって、改札の駅員にも事情を丁寧に説明し、窓口で特急券を買い直した。
東京から京都までの「のぞみ」指定席特急券。五千何百円します。
京都へ帰ろうとしていた旅の最後に、思わぬ出費だった。

飛んでいった特急券は、行方不明になってしまったので探しようがない。
もったいないけれど、あの特急券は「捨てた」と思うことにして、それ以上は探さなかった。
人生あきらめも大事だ、と思ってみたりした。

気を付けましょ、落とし物。
みなさんも、ポケットにきっぷを入れるときはご注意ください。
(*^-^*)