学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

『ダグラス・ノース 制度原論』

2018-11-20 | 松沢裕作『生きづらい明治社会』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年11月20日(火)11時24分59秒

近代製糸業の研究史も一応押さえておくか、と思って石井寛治氏の書評に登場する山田盛太郎(1897-1980)の『日本資本主義分析 日本資本主義における再生産過程把握』(岩波書店、1934)をパラパラ眺めてみたのですが、この「講座派」の聖典は晦渋な文体だけで近づきがたく、さすがにここまで手を広げるのは人生の無駄遣いだなと思って止めました。

山田盛太郎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E7%9B%9B%E5%A4%AA%E9%83%8E

山田は1930年に「共産党シンパ事件」で東大を追われ、36年の「コム・アカデミー事件」で「講座派」仲間と一緒に検挙されるなど戦前は大変でしたが、戦後は一転、教授として東大に復帰して50年に経済学部長、53年学士院会員となるなど栄華を極めていますね。
それにしても、野呂栄太郎・平野義太郎と並ぶ「講座派三太郎」でありながら、「叙勲二等授瑞宝章」「叙従三位、賜銀杯一組」というのは若干妙な感じもします。
ウィキペディアで山田の顔写真を見ると、眼の形が左右で違っていて、少しブキミな雰囲気ですね。
アル・カポネ配下の殺し屋みたいな風貌、といったらさすがに失礼かもしれませんが、少なくとも治安維持法違反で逮捕される側というよりは逮捕する側の特高刑事みたいな感じです。
「講座派」にはもう一人、山田姓の山田勝次郎(1897-1982)がいますが、こちらは政治学者・蝋山政道(1895-1980)の弟で、地元・高崎の山田家の婿養子となって山田姓になっただけで、山田盛太郎との親族関係はありません。

山田勝次郎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E5%8B%9D%E6%AC%A1%E9%83%8E

山田勝次郎は岳父の死去を受けて高崎倉庫(株)の社長となり、戦後も日本共産党の正式な党員でありながら地方経済界の重鎮でもあったというなかなか珍しいタイプの人ですね。
その自宅と蔵書は、現在「山田文庫」という財団法人が管理しています。
写真を見ると、いかにも元京都帝大助教授らしいインテリ顔をしていますね。

http://www.takasakiweb.jp/takasakigaku/jinbutsu/article/16.html

ま、それはともかく、『日本資本主義分析』は遠慮して中林真幸編『日本経済の長い近代化 統治と市場、そして組織1600-1970』(名古屋大学出版会、2013)の中林氏による「序章」を読んでみたところ、経済学的な「所有権」概念についての説明が新鮮でした。
そこで、「新制度派」の経済学者の本を読む必要があるな、とは思ったのですが、全く不案内な分野なので何を読んでいいのか全然分からず、とりあえず瀧澤弘和・中林真幸監訳『ダグラス・ノース 制度原論』(東洋経済新報社、2016)を手に取ってみたところ、私のような経済学に縁のない者でもそれなりに理解できて、けっこう面白いですね。
ということで、「新制度派」の経済学者の著作をまとめて読む必要を感じているので、次の投稿が少し遅くなるかもしれません。

岡崎哲二「(書評)ダグラス・ノース 制度原論」
http://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/20160428_3622.html
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