学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

井原今朝男氏『日本中世債務史の研究』

2011-12-17 | 井原今朝男『中世の借金事情』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2011年12月17日(土)07時53分59秒

アマゾンから、

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「井原今朝男の『日本中世債務史の研究』、Amazon.co.jpでお求めいただけます。
以前「日本史 > 鎌倉」関連の秋山哲雄の『都市鎌倉の中世史―吾妻鏡の舞台と主役たち (歴史文化ライブラリー)』またはその他の本をチェックされた方に『日本中世債務史の研究』の発売について、ご案内いたします。商品について詳しくは、商品のリンクから詳細ページをご確認ください。
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というメールが来たので、歴史文化ライブラリーの連想から、一瞬、『日本中世の借金事情』の案内が今頃来たのかなと思ったのですが、よく見たら井原今朝男氏は東京大学出版会から7,560円の新著を出されるんですね。
内容は、

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現代とは異なるルールで成立していた中世社会特有のモノの貸借=授受の実態、所有、契約概念の特徴を古文書群から描き出す。
中世におけるモノの貸借や授受が,いかに現代と異なる法則で成り立っていたのか.利息,質地をめぐる一枚の借用状からだけでは解釈できない実態を,そこに連なる古文書群をひもとき社会のルールを見出す.借り手と貸し手が共存する中世社会の特徴を明らかにする.

序 章 日本中世債務史研究の提起
第一章 中世借用状の成立と質券之法
第二章 中世の計算貨幣と銭貨出挙
第三章 中世の年貢未進と倍額弁償法
第四章 東国荘園の替銭・借麦史料
第五章 東国の為替と借用証文
第六章 室町期の代官請負契約と債務保証
第七章 日本中世の利息制限法と借書の時効法
第八章 中世請取状と貸借関係
第九章 中世契約状における乞索文・圧状と押書
終 章 中世債務史の時代的特質と当面の研究課題

【著者紹介】
井原今朝男:国立歴史民俗博物館教授
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というものですが、国立歴史民俗博物館のサイトを見たところ、

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研究成果公開促進費(学術図書)
日本中世債務史の歴史
研究期間:2011年度
研究代表者 井原今朝男 (本館・研究部)
研究目的
1、中世債務史研究の専門論文を体系化・理論化し、学術専門書として刊行することによって、日本史学における債務史という研究分野を創造することの必要性を学界に認知させることを第一の目的とする。
2、2008年のサブプライムローンの証券化された不良債権問題で世界金融危機と債務危機問題が関心を呼んだ。歴史学の分野から、中世債権論による経済法則を提示することによって、近代債権論の理論的欠陥を問題提起し、自由市場経済原理を相対化して債務危機回避のための一研究分野として債務史研究の現代的意義を人文社会科学界に提示することを第二の目的とする。
3、これまでの日本史学や経済史分野においては、経済現象を売買取引一元論によって分析する方法が定着している。本書は、経済現象を売買取引と貸付取引との二大原理の併存によって分析する方法論を日本社会経済史研究としてはじめて提示する。債務返済の処理方法にも歴史的変遷があることをあきらかにし、私有財産制と自由契約論を絶対とし、債権者の権利保護のみを優先して債務者の権利を無視して破産に追い込む近代債権論の世界は歪な歴史段階であることを指摘する。債務者と債権者が共存し債務と返済の循環をスムーズに展開できる経済原理をみんなの社会正義にすることが、21世紀の人文社会科学分野の課題であることを世論に訴えることができる。

http://www.rekihaku.ac.jp/research/list/subsidy/2011/saimu.html

となっているので、こちらを見る限り、歴史文化ライブラリーの『日本中世の借金事情』から特に問題意識は変化していないようですね。
井原今朝男氏の所謂「近代債権論」(これもたぶん井原氏の造語。少なくとも井原氏のような特異な思い入れをもってこの言葉を使う法律学者はいない)の理解は問題が多く、私は残念ながら『日本中世の借金事情』を高く評価できないので、7,560円出して新著を買うつもりはありませんが、この本に対して歴史学研究者からどのような書評が出るのかについては興味があります。
中世経済史となると、東大教授の桜井英治氏や慶大教授の中島圭一氏あたりが書かれることになるのでしょうか。
もう少し若手だと川戸貴史氏あたりですかね。
あるいは、昔から井原氏と論争している東大史料編纂所の遠藤基郎氏も適任でしょうか。
書評が出揃ってから新著を図書館で借りて、書評者の見解とともに少し検討してみたいと思います。
なお、前著についての私の評価は『学問空間』の「カテゴリー」「井原今朝男『日本中世の借金事情』」にまとめてあります。

http://blog.goo.ne.jp/daikanjin
http://blog.goo.ne.jp/daikanjin/c/8ff50a9526f435fda9a8bc8f507ebebe

昨日、私の住んでいる宮城県南部の大河原町では初雪が降り、今朝も雪が積もっていますね。
福島県の飯館村あたりでも雪景色が見られそうなので、これからちょっと出かけてみます。


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