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コインの裏表

2010-08-03 | 井原今朝男『中世の借金事情』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2010年 8月 3日(火)01時27分18秒

今日は信濃川河川敷の土手に寝そべって、日本一を自称する長岡の花火大会を見ていました。
途中までは柏崎の方がよかったなあ、などと思っていたのですが、だんだん迫力が増してきて、最後の方は尋常ではない興奮を味わえましたね。
それにしても、新潟県民の花火に対する思い入れは何だかすごいです。
どんより雪雲が垂れこめる冬の間のうっぷんが夏に爆発するのかもしれません。

さて、債権と債務ですが、これはコインの裏表のような関係であって、大屋氏が言われるように同じものを別の方向から見ているだけですね。
そして債権債務の発生原因のうち、一番重要なのは契約であり、かつ契約は大多数が双務契約ですから、当事者の双方が債権者であり、かつ債務者という関係が非常に多く見られます。
売買契約だったら、売主は目的物の引渡し義務(債務)を負い、代金請求権(債権)を持つことになり、買主は逆に目的物の引渡し請求権(債権)を有し、代金支払い義務(債務)を負担することになります。
これが賃貸借契約とか雇用契約とかの継続的契約になると、双方に無数の債権債務が次から次へと生じてくることになりますね。
債権債務の束が契約関係だということもできます。
こう考えると、債権者は強者、債務者は弱者だから、債務者を保護しなければいけませぬ、債権者と債務者は共存しなければなりませぬ、というような井原氏の発想は、債務者と債権者の関係を固定的に捉えている点だけをとっても、ずいぶん奇妙な感じがします。
井原氏は独自の正義感・倫理観に溢れていて、債権債務という一般的・抽象的・技術的レベルで自己の正義感・倫理観を貫こうとするのですが、それぞれの正義感・倫理観を持った普通の人はそんなことは考えず、誰のどういう債権を保護すべきか、逆に誰のどういう債権は権利行使を抑制せねばならないか、という発想をしますね。
労働者の賃金債権は重要だから国が企業に働きかけて確実に弁済されるようにしなければいかんとか、下請けの中小・零細業者が大企業にいじめられないようにするため、その手形債権(大企業の手形債務)の弁済期はあまり長期ではいかんとか、社会的に重要な債権は現行法でもいろんな形で保護が図られている訳ですね。
他方、例えば消費者金融業者の債権は立法や判例によって様々な制約を課せられています。
債権債務は多種多様、債権者・債務者も多種多様だから、誰のどういう債権を問題とするのかという観点を抜きに、広く債務者一般を保護しようなどと考えると、ずいぶん奇妙な帰結が生じてきます。
私も野球賭博のことなど良く知らないので、下の設問は適当に考えたのですが、要は債権者・債務者は別に固定的な関係ではなく、また債務者が常に弱者である訳でもない(債務者である暴力団は弱者とはいえないし、かといって高額のあぶく銭を賭け事に使う相撲取り側が弱者ともいえない)という当たり前の事実を確認してみたかった訳です。

>筆綾丸さん
>公序良俗違反の法律行為
契約が無効というのは契約に基づく債権債務は発生しないという意味ですね。
外形的には債権債務のようなものがあったとしても、国家はそれを債権債務とは評価しない、従って債権者を称する者が裁判所に訴えても、裁判所はその債権の実現に協力しない、ということですね。
とはいっても、暴力団などはそもそも国家の助力を得ようとは思っていないのですから、理屈を言っても仕方がないといえば仕方ないですね。
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