大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第178回

2015年02月20日 14時58分19秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第170回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第178回



「おっともうこんな時間になっていますな。 今日はご実家に泊まられるんですか?」

「いえ、下手に泊まると母が喜ぶのでやめておきます」

「あらあら、冷たいことを」

「これからこちらに来る度に泊まって帰ると期待されても困るので。 夜遅くまでは話し相手をして夜中に帰ります」

「その方が道も空いていますな。 それでは今日はこれくらいにして・・・どうですかな、これからこうして時々ここで勉強をして行きませんか?」

「はい、やっていきたいです。 あ、でも正道さんのお時間は大丈夫なんですか?」

「私の日程に合わせてもらう形にはなると思うのですが、それでも宜しいですかな?」

「はい。 そのほうが私の気が楽です」

「そう言ってもらえると私も気が楽です。 さしずめ研修みたいなものですな。 えっと、来週は私に予定が入っていますので再来週は宜しいですかな?」

「はい」

「では再来週の今日と同じ時間くらいという事でお願い出来ますか?」

「はい」

「それでは 再来週でお願いいたします。 えっと・・・私は失礼して先に出させていただきますが、琴音さんが仔犬と一緒にいたいのでしたら いつまでも居て下さって結構ですよ」

「じゃあ、あと少しだけ・・・ねっ、ワンちゃん」

「仔犬は今とても幸せですな」

「あの、このワンちゃんの名前は付けていないんですか?」

「ははは、みんな仔犬と呼んでいるんです。 そう言われれば仔犬っていうのが名前になっちゃっていますね」

「仔犬ちゃんですね・・・クスッ、何だか呼びにくいですね」

「あ、そうでした。 それとこれを」 鞄の中から差し出されたのは2枚のカードだ。

「車にETCは付いていますかな?」

「はい」

「それは良かった。 こちらがガソリンスタンドのカードです。 それとこちらがETCのカードです。 これからはこれを使ってください」

「え? そんな、これは受け取れません」

「何を仰ってるんですか。 普通、交通費を出しますでしょ?」

「でもまだ教えていただいているだけですから」

「研修期間にも企業は交通費を出しますよ。 まぁ、企業の様に大きくはありませんがな。 さ、受け取ってください」

「でも・・・」

「これを受け取ってくださらないと簡単に呼び出しにくいじゃありませんか、ねっ」

「・・・はい。 それでは遠慮なく」

「有難うございます。 いいですか、ガソリンカードも遠慮なく使ってくださいよ。 私用も何も区別することはありませんからな。 ガソリンを入れるときはこのカードで入れるように」

「はい」 声が少し小さい。

「それでは私はお先に失礼させていただきますな」

「はい、有難うございました。 お気をつけて」 仔犬を抱っこしたまま正道を見送り、また椅子に座った琴音。

「ねぇ、仔犬ちゃん 私やっていけるかしら? 仔犬ちゃんやみんなの声が聞けるかしら? みんなの痛みを取ってあげることができるかしら?」 仔犬の頭を撫でながら独り言のように言うと ウツラウツラとしていた仔犬が目を開け、琴音の目をじっと見てそして可愛い声でアン! と一声上げてまたウツラウツラとし始めた。

「可愛い。 まだワンって言えないのね。 お返事してくれたの? 私にも出来るって言ってくれたの?」 思わず頬ずりをした。

暫くの間仔犬を抱いていたが、後ろ髪を引かれながらも仔犬をケージへ戻し

「また来るからね。 毎日みんなに可愛がってもらうのよ。 みんな仔犬ちゃんのことが好きなんだからね。 みんなに愛されているんだからね」 そう言い残し実家へ向かった。

実家では待ってましたとばかりに母親が待ち構えていた。

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