大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第38回

2011年03月10日 14時46分39秒 | 小説
僕と僕の母様 第38回



いったい誰だ? 何だ? と思って順平に聞いてみた。

「最近あの子よく見かけるけど 何処のクラスなんだろう 何してると思う?」

「一年だよ」

「ああ、そうなんだ。 あんまり見かけないと思った。 えっ、でも何で一年が この校舎にいるの?」 僕達二年生と一年生とでは 校舎が違うのだ。

「このクラスの誰かに 興味があるみたい」 初耳だ。

「えっ、誰?誰?」 興味津々になってしまう。

「分かんない。 でも一人で来るっていうのは いい根性してんじゃん」 いつも一人なのだ。

「ああ、そう言われれば。 普通 誰か友達と来るもんね」 本当にいい根性してるなと思った。

「まぁ、あの顔じゃあ 誰も相手にしないだろうけど」 憎たらしい盛りの 高校生の言葉が出た。

「そんなこと言って 順平だったらどうすんのさ」 三日月の目で聞いてみた。

「気持ち悪いこと言わないでよ」 真剣に嫌がってる。 順平は相当顔で判断するようだ。

それからも その女の子の出没は続いていた。



ある日 旧部長と旧三年フルート先輩が来てくれている時に 新部長が

「今度コンクールの予選会があるから 曲をそろそろ決めなくちゃならないんだけど どう、今やりたい曲ある?」 と皆に聞いてきた。

「いつですか」 この春に入部してきた 僕と同級生の男子が五人いたが その内の一人が聞いた。

「夏休みに入ってすぐ」

こんな少ない人数で 何を演奏するの? と考えてしまった。

ブラバンと呼ぶには 十分ではない筈だ。

僕のそんな思いは誰に伝わることもなく 話が進んでいく。

本当に出来るの? という感じで 同級生フルートの方を見ると 向こうもそう思っていたようで お互い目をあわせていたが そんな二人の思いとはウラハラに 先輩たちや入部して来た同級生の男子二年生達はノリノリだ。

ちなみに この同級生男子達は 僕より酷い、全くの素人だ。 楽譜も読めないようである。 

「取りあえず みんなそれぞれやってみたい曲を言ってみて。 出来る出来ないはその時に考えよう」 部長がそう言った。 

どんな曲がやれるって言うのだろう。 僕と同級生フルートはずっと黙っていた。 先輩たちで盛り上がっている。

「そこの二人、何かやりたい曲とかないの」 先輩フルートが僕のほうを見ながら そう聞いてきた。

フルート同士 女同士で同級生フルートの方を 見てくれれば良いのに どうして僕のほうを見るの。

どうしよう どう返事をしよう 「はあー」 と言って考える振りをしていると 同級生フルートが助けてくれた。

「急に言われても何も思いつきませんし どんな曲があるのかもまだ良く分かりません。 ね、陵也君そうだよね」 ・・・なんてしっかりしたお子様なんだ。 同級生とは思えない。 

「はい」 あまりの感心に ついウッカリ同級生相手に 敬語で答えてしまった。

「そうか、無理かなあ。 でも何でも良いから もしやりたい曲が見つかったら いつでも言ってよ。 今日中に決めなくちゃいけないわけじゃないし、私たちもまだまだ考えたいしね」 その言葉に 僕に代わって同級生フルートが

「はい、分かりました。 考えておこうね陵也君」 頷くだけの僕は情けない。

「はーい、じゃあ今度の練習 ・・・無理かな、来週位までに考えといて」 そう言って新部長はその日は帰って行った。

その後は誰も練習することなく どの曲がいいだのと みんなで話していたので この盛り上がりの中一人で音を出すのもな、と思い 少しの間だけ 話に加わるようなそぶりを見せて「あの僕今日はもう帰ります」 と言って帰ることを伝えると

「ちゃんと曲、考えてきてよ」 とトランペット先輩とフルート先輩に言われて「へへ」 っていう感じで 何となく返事をして部室を出てきた。

校舎を出ようとしたときに 旧三年フルート先輩に出くわした。

途中まで部室で例の話しを聞いていたのだが 部室を出て職員室に寄ってから 今帰ろうとしていたところらしい。 

「久し振り」

「うん」



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