大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第49回

2011年03月28日 13時44分04秒 | 小説




                      日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように






僕と僕の母様 第49回



合わせの前に みんなそれぞれパート練習をしている。

その音を聞いていると 何だろうか 昨日思った逃げ出したいような気持ちも 勿論あるんだが なにか今まで経験したことのない気持ちが 心の中にある。 ワクワクする感じだ。

みんなの音を聞きながら 僕も音階やロングトーンをしていく。 ふと心の中で早く合わせてみたいと ほんの少し思った。

心が笑っている。

そうか、これなのか ワクワクする感じの正体はこれなのか。 これが音楽の魅力、ブラスバンドの魅力なのだろうか。

そうであったら 僕はその魅力に まんまとハマってしまったようだ。 さっきまであった 逃げ出したいと思う 心の弱い僕が 何処かへ行ったようだった。

ワクワクの正体が 分かったからなのだろう、その日から僕は 合わせたくって、合わせたくって たまらなくなった。

そして合わせたいがために パート練習も今までになく 一生懸命になった。 いや、今までも 十分一生懸命にやっていた 力が入ったという感じだ。

そんな毎日を繰り返していく内に 僕もなんとか合わせの練習に ついていけるようになった。

それどころか 何回かに一度は 一回のミスもなく 曲を終わらせることが 出来るようにもなってきた。 とは言え、十分に納得のいける音色を 出せているわけではない。

しかし ミス無く無難に吹けたという充実感は この上なく素晴らしいモノである。

これが納得のいく音色であれば それ以上の感動があるのであろう。 

それを経験してみたい。



家に帰って そんなことを母様に話した。

「いわゆる それが向上心の始まりね。 今まで陵也は 向上心の欠片もなかったから 良いことだわ。」 いつもながら 憎たらしいご意見だ。

「どういう意味? 褒めてるの、けなしてるの!」 そんな僕の言葉は 無視されたようだ。 母様はその後も言葉を続ける。

「何よりそれが音楽であることが お母さんは嬉しい。 大丈夫よ、他の人が 褒めてくれてるんだったら 少なくとも 大きなミスはしないでしょうし 例のピヒャーって言う サックスの叫び声さえなければ 分かんないわよ。 それに ピアノの発表会は 一人で舞台に立つけど 今回はみんなと一緒に 舞台に立つんでしょ、そんなに緊張もしないでしょうよ。 きっと大丈夫。 そんなに大層なクラブでもないんだから 深く考えることないわよ。 学校を背中にしょってる訳でもないんでしょ? 失敗したらしたで それも良い経験だし それまでの、その日までの練習が 何より陵也の得た 大切な経験なんだから それで良しっ と言うことよ」 

黙って聞いていたら 言いたい事を言ってくれた。

「そりゃあ、お母さんみたいに 優勝して当たり前の学校じゃないけど 自分のせいで みんなに迷惑かけたら 気になるじゃん、それに失敗するって言ってるの? しないって言ってるの? どっちなの」

「充実感ってイイでしょう? すごく美味しくて すごくお腹いっぱいになるでしょう?」

質問に答えてくれない。





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