大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第50回

2011年03月29日 16時54分40秒 | 小説




                       日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように






僕と僕の母様 第50回



いつも思うのだけど 母様の表現ってきっと他人が聞くと 幼稚的であったり、人とちょっとズレていたりしているように 思われるのだろうが 僕にはそんな風に 聞こえないし、思えない。

その幼稚な言葉やズレた言葉 そして その考え方の方が的を得てるんだ。

単に僕が 母様に染まってしまったのかもしれないが でもその美味しいとか、お腹いっぱいになるとかっていう表現の意味が 今は何よりも当てはまると思う。

母様の言いたいことが その言葉によって すべて表現されているのだ。 そしてその言葉によって 僕も心の中が溢れそうになるのだ。

他の言葉では ここまで溢れそうにはならないだろう。

自分の質問も忘れて

「うん、こんな美味しいもの 初めて食べたっていう感じ」 溢れそうな心で 素直に言った。

「えっ、何? お母さんの料理は それに劣るっていうの? どういう事?」 そういうこと言ってないでしょう。

「そう言う意味じゃないじゃん」 せっかくの心が 冷めてくる。

「当たり前でしょ、誰でも分かるっていうの。 何、本気にしてるの、バカじゃない」

「・・・ハァ~・・・」 ため息しかでない。 僕もまだまだ修行が足りない。

母様のペースは難しい。

母様が僕をリラックスさせるために 言ったと思っていた言葉「充実、満喫、満腹」 本当は リラックスさせるために言ったんじゃなくて もしかしたら 母様の今までの経験から得た 心の言葉なんだろうか。 少し疑問が残った。



母様にけなされ、励まされながらも 夏休みが始まろうとして 刻一刻と コンクール予選の日は近づいてきた。



とうとう 夏休み突入。

今まで どちらかといえば優しかった先生が 切羽詰ってきたのか だんだんと怒鳴る日が増えてきた。




そして今日は最終練習の日だ。 明日はいよいよ当日となる。

この日は遅くまで全員で合わせばかりをしていた。

誰かがトチる。 曲が止まる。 先生が怒鳴る。 トチった所の少し前からやり直す。 こんな事の繰り返しだ。 明日どうなるんだろう。

そんなことを考えながらこの日は終わった。

クタクタに疲れた手と口で家に帰った。

「ただいま」 リビングに入って ソファーに座っている母様に言った。

「お帰り 遅かったわね。 おかず温めなおそうか?」 ソファーから立って キッチンに向かいながら そう言ったので

「最終練習が長引いたんだ。 あ、温めなくていいよ。」 コンロに火を点けかけた 母様の手が止まった。

「まぁ、冷たくはなっていないから いいかしら」 お鍋から お皿によそっている。

「明日コンクール予選の日だから朝起こしてね」 私服に着替え 脱いだ制服をハンガーに掛けながら僕が話した。

「えっ、明日なの?」 僕の夕ご飯をテーブルに並べながら母様が聞いてきた。

「何度も言ったじゃない」

「知らなーい、聞いてなーい」 笑ってる。 完全に忘れてたんだ。

「言ったよ」

「何時に起こせばいいの」 聞いてたことを認めない。 仕方ないか、この母様なんだから。

「学校に行ってから会場に電車で行くから・・・」 そこまで言うと

「なんで学校に行くの?」

「楽器を積まなくちゃいけないから」 そう言いながら僕はテーブルについた。

「持って帰ってきてないの?」

「明日先生たちが 車に積んで会場まで運んでくれるから 持って帰る必要ないんだ」

「ふーん、で、何時に起こすの?」

「六時半」

「ちゃんと一回で起きてよ」

「無理」 

そのいらない一言で頭を叩かれた。





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