大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第31回

2011年03月02日 14時02分51秒 | 小説
僕と僕の母様 第31回



ほとんど毎日と言っていいほど 母様は僕の「ただいま」 の声に続いて「お帰り、今日は学校どうだった?」 と聞いてくる。

その日の事はたいてい話すし 特に僕が聞いてほしい事なんかがあると「聞いて、聞いて 今日ね・・・」 なんてテンション高く話すのだが ブラバンの先輩達や 同級生と一緒に帰っていることは軽く話せるのに この三年フルート先輩と話をしていて すっかり遅くなった時には 「部活が長引いた」 と嘘を言って この事を話さなかった。 
 


ブラバンに顧問の先生は三人いる。

二人が男の先生で その内の一人が楽器経験者だ。

楽器経験者の先生は 何度か様子を見に来てくれた事がある。 もう一人は名前だけの顧問で 一度も来たところを見た事がない。

そしてもう一人が女の先生で 一度部室である音楽室のカギを 開けに来てくれた事があるくらいで 僕が入ってからは 練習自体に顔を出したのを 一度も見た事がない。

見た目は生徒と区別がつかないほど若い先生だ。

音楽の先生で 芸大を卒業しているから 音楽的な事は この先生が本来指導する役目であるようだが 見た目と同じで 音楽以外の頭の中は高校生並み イヤ、もしかしたら中学生並だ。

そんなものだから 自分自身での楽器演奏や 音楽史、音楽理論は知っていても 指導となるとどうなのだろうか?

学校では携帯電話の持込が禁止になっている。

とは言っても みんな隠し持っていて 休み時間には教室の隅に隠れて ピッピピッピやっているのだが 何人かは鞄検査で先生に見つかって 没収されている。

それは生徒のみに対してそうであるのは分かっているが 先生達もやはり生徒の手前 学校に携帯を持ってきていても それを人目に付くようには置いていなくて 大抵鞄の中に入れているようだ。 

それなのにその音楽の先生は 放課後僕たちが居る部室に入ってきて「ごめーん、ちょっと静かにしてて」 と言って携帯を取り出し 誰かに電話しだした。

本人はヒソヒソ声で喋っているつもりなのだろうが 声が高いから丸聞こえだ。

「お母さん、今日遊びに行くから 晩御飯いらないから、いい?」 なんて事を言っている。

そして電話が終わると「ありがとう」 といって部室を出て行った。 先生という自覚が薄いようだ。

いつかなんかは 休み時間に教室の外で順平を待っていた時に 女子トイレの前で 何か不自然な感じで キョロキョロしているところを見かけた。

何をしているのだろうかと思いながら その様子を見ていると 何かのタイミングを計ったかのように 急いで女子トイレに入って行った。

「陵也ワルイ、先行ってて」 順平が教室の窓から顔を出して そう言った。

「ああ、分かった」 そう言った僕は トイレの向こうにある教室に 移動をしなくてはいけなかったので そのすぐ後にトイレの方に歩きだした。

するとトイレに近づいた時に 中からマタマタ携帯で話す声が聞こえた。

どうも友達にかけていて 今日の約束の確認をしていたようだ。

先生が携帯をポケットになおしながら トイレから出てきた時に僕と目があった。

「今の聞こえた?」 どうしようというような目で聞いてきた。

僕は笑って「うん」 と答えると「お願い、先生たちには内緒にしてて、でないと怒られちゃう」 と懇願してきた。

あなたも先生でしょ、しっかりしようよ、と言いたい気持ちを抑えて 笑いながら

「大丈夫、内緒ね」と返事をした。



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