大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第44回

2011年03月21日 01時49分45秒 | 小説
僕と僕の母様 第44回



この時が初めての ムカムカだった。

それまでも 母様の口から出てくる 色々なアルバイト君の話で アルバイト君が母様のことを「お母様」 と呼んでいると言うことを聞いて あまりいい気はしなかったが こんなにムカムカすることもなかったし 何よりも 嬉しそうにアルバイト君のことを話す 母様の話を聞いてあげなくちゃ と言う思いが先にあった。

「・・・」 何も話したくない、挨拶なんてとんでもない。 でも仕方なくそっぽを向いて 軽くお辞儀だけした。

「こんにちは」 アルバイト君は 何の余裕があるのか知らないが 微笑みを十分に出して そう言ってきた。

「先に駐輪場に行ってる」 そう言って僕は出て行った。 しばらくアルバイト君と母様は 話をしていたようだった。 

後から母様が出てきて第一声が「きちんと挨拶くらいしなさいよ」 半分怒ってバイクのエンジンをかけだした。

母様も怒っているが 僕もムカムカだ。

どうしてこんな風に ムカムカしてしまうのか その時にはどれだけ考えても 分からなかった。

母様が ふー、っと大きく深呼吸して「今日、どこ行こうか」 怒りを抑えて聞いてきた。

「友達の所に行く約束があるから 先に帰ってて」 目を合わせないで 自転車をまたいだ。 約束なんてあるはずない。

「そう、じゃ、先に帰る」 やっぱりちょっと不機嫌だ。

ご挨拶が大切な母様にとっては 大変な怒りの根元になったのだろうと思うけど 考えるだけで また一層ムカムカしてくる。 そのうちに腹も立って イライラしてきた。

それからは母様が アルバイト君の話をしても あんまり乗り気で聞くという態度が 出来なくなった。

母様がそれを感じているのか いないのかは分からないが そんなことも無視しているかのように 相変わらずほとんど毎日 アルバイト君の話が出ていた。

母様のいけないところだ。 相手の心を思いやるっていう事が出来ない。



もう一人は、俗に言う芸能人だ。 


この芸能人というのは 音楽をやっていてバンドを組んでいる。 まあまあメジャーなバンドだ。

母様はそのバンドの ボーカルが大好きなのだ。

僕が小学校六年生の時に ファンになってから ずっとライブにも出かけていて CDも勿論予約までして買っている。

ボーカルも大好きだけど バンド自身の音楽性も気に入っているらしく その中でもアレンジが特に好きらしい。

これもまた 僕が高校一年生の終り頃までは 同じように「この曲良いね」 なんて言っていたのだが 自分でも気づかない内に いや、もしかして あのアルバイト君のことが あってからなのかもしれない。

母様がそのボーカルの話をしても「どこが良いの」 とか「もうこの曲聞き飽きたから」 とか「らしくない曲だね」 とかって 冷たい返事をし出していた。

母様は 日頃からそのボーカルの どこが好きなのか 自分自身よく分からない と言っているのに 僕のあまりの冷たさに 突っ掛ってくることもあった。

それなのに相も変らず

「ネェネェ、今度の新曲良いと思わない?」 そう言って買ってきたばかりの CDをセットし始めた。

どうしてそんなことが出来るんだ 人の気持ちを 思いやれって言ってるのは 母様だろう! 

「この曲良いねとかってしつこいよ。 別にお母さんが言わなくても 僕が自分でそう思えば お母さんにそう話しかけるよ。 大体、このボーカルの どこが良いって言うんだよ」

イラつくように いつもより大きな声で言った。





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