1989年シンガポールで開催されたワールトカップイタリア大会アジア地区最終予選。日本は残念ながら1次予選で北朝鮮の後塵を拝して進出出来ず韓国を始め中国、北朝鮮、カタール、UAE、サウジアラビアの6カ国が集って行われた。
この最終予選の展望は韓国が本命、もう一つのイタリア行の切符をどこの国が手にするかが焦点であった。この最終予選の模様は当時NHKのBSで放映された。
韓国は初戦のカタール戦を緊張のせいか終始押しながら勝利をものに出来なかったが、第二戦以降は北朝鮮( 1-0 ) 、中国( 1-0 ) サウジアラビア (2-0 ) と危なげなく勝点を積み重ね続けた。そして2位争い、私は中国と日本を破った北朝鮮に注目していた。中国は初戦のサウジアラビアを麦超の2ゴールで勝利を収めた5日後に対戦したUAEに 1-2 で敗れてしまい、2位争いの混戦に拍車をかける。各国1試合を残して、韓国は既にワールトカップ進出を決め、U.A.E. 勝点5, 中国勝点4, 北朝鮮勝点3, カタール勝点3のサウジアラビアを除くイタリア行きの可能性がある4カ国が最終戦に臨んだ。その最終戦は U.A.E. が韓国と引き分け、中国は 1-0でリードしていながら終了間際の連続失点で韓国に次いで2位になりイタリア行の切符を掴んだ。その星取りは1勝4引き分け。第二戦の中国との“直接対決”での勝利を挙げた以外は韓国を含めた4カ国と引き分け、ライバル達が星の潰し合いと失速を繰り返す中しぶとく勝点を積み重ねた結果のワールトカップ出場であったが、最終戦既に予選突破が決まり、レギュラークラスが並んでいたとは言えモチベーションの上がりにくい韓国相手と言う事も幸運であった。
その後のU.A.E.は、日本がアジアの中で急に台頭して来たのに反比例する様にアジアのトップクラスから徐々に後退を始めている様に見えてならない。1992年広島で開催されたアジアカップで3位、翌1996年地元開催のアジアカップでサウジアラビアに次いで2位に入った程度で目立った。ワールトカップ予選ではアメリカ大会予選は1次予選で日本に敗れ、記憶に新しいフランス大会も韓国、日本の後塵を拝し、日韓大会では2次予選に進むもプレーオフでイランに敗れた。前回大会も北朝鮮に敗れて2次予選には進めず、アジアカップでも2000年レバノン大会は予選でウズベキスタンの敗れて本大会に進めず、2004年アジアカップ北京大会でも1次リーグで敗退。そして昨年のアジア大会では2次リーグ最終戦、地元カタールに 0-4 と粉砕されてしまい、西アジア地区でもカタール、バーレンと言った新興国に先を越される様になってしまい、かつてワールトカップに出場をした事のあるアジアの国では最もマイナーになってしまったのでは無いか?今大会の Odds も Group B では日本、カタールに次いで3番目だ。
しかし、この状況は今年に入り劇的に変わりそうだ。今年1月に地元で開催された Gulf Cup でオマーンを 1-0 で破り史上初の大会優勝を果たす。18回目となる今年の大会は地元で開催される中、そのプレッシャーからか初戦のオマーン戦を 1-2 で落とすが、第二戦のイエメンを 2-1 で破り、準決勝進出をかけた次のクウェート戦に 3-2 で勝利を挙げ、
準決勝サウジアラビア戦を Esmair Matar のゴールで1-0 で降し、決勝戦では再び対戦したオマーンを今度は 1-0 で破り初優勝を勝ち取った。
この優勝はUAEを含めた、サウジアラビア、バーレーン、イラク、カタール、オマーン、クウェート、イエメン8カ国で開催される湾岸諸国では非常に評価されるもので、初優勝をもたらした選手達にはザイード・アル・ナヒヤン大統領から17万豪ドル(約1700万円)のボーナスが贈られたばかりか、主力選手の Iamail Matar はあるファンから2頭のラクダが贈られた。彼がどこでこのラクダを飼うかはわからないが1頭当たり14万豪ドル(約1,400 万円)の価値があるらしい。その上大会MVPの Ismail Matar は更に32万豪ドル(約 3,200万円)のボーナスまで支給された。
俺がこれだけ稼ごうと思ったら何年働かなあかんねやろ……??
そのIsmail Matar こそ今の U.A.E. のスーパースターだ。
今年の Gulf Cup ではクウェート戦での決勝点を含む2ゴール。そして決勝戦では試合を決めるゴールを決めるなどの大活躍。そして2003年日本が坂田(横浜マリノス)平山(FC東京)川島(川崎)らの活躍でベスト8に進出した FIFA U-20 U.A.E. 大会で地元の期待を背負ったU.A.E. はベスト8に留まったが Ismail Matar が大会MVPに輝いた。その時決勝トーナメント1回戦で対戦したオーストラリアU-20 代表には Sydney FC のFW Alex Brosque らがいたが、この U.A.E. に敗れている。その時の印象が“ Matar は偉大な選手だ。大変小柄だが、タッチがうまく覚えている限りでは常に彼を介してゲームが造られていった。”と述懐する。この Matar はアジアカップでの活躍次第では欧州のクラブへの移籍も…..と言われているらしい。
その Ismail と共に期待されるのがゲームメーカーの Mohammed Omarだ。得点能力もありアジアカップ予選では4得点を挙げている。Gulf Cup のイエメン戦でも貴重な先制PKを決めている。
そしてもう一人期待されるのがかつてセネガルを率いてワールトカップで旋風を巻き起こした Bruno Metsu 監督。
2006年6月に同国の監督に就任し、 Gulf Cup でチームを優勝に導くと契約を2010年まで更新した。(でもいつ突然解任されるかわからんぞぉ。) 彼は戦術と言うよりも選手とのコミュニケーションを大事にし、選手との信頼関係を築くことで、 Mohammed Omar は完全に Metsu 監督を“信望”している。 UAE協会の今大会にかける意気込みの表れとして6月13日から7月6日までマレーシアで合宿を張り、ヴェトナム入りするが、マレーシアもイスラム教徒の多い国でモスクも多く宗教的にも問題が無いところをキャンプ地として重視したのかもしれない。そしてマレーシア・キャンプ中はマレーシア、サウジアラビア、バーレーン、インドネシアとの試合が組まれているが、みんなイスラム教の国では無いか???
6月20日PETALING JAYA で行われたマレーシアとの親善試合はFaisal Khalil そして Ismail Matar の2ゴールで 3-1 と快勝した。 Metsu 監督は“試合結果よりも選手達の仕上がり具合に満足”とのことらしい。アジアカップでのU.A.E. は初戦地元ヴェトナムと対戦した後7月13日に日本と対戦する。下馬評ではまだまだ日本がこの組の1位候補であるが、初戦をカタール、第二戦を Ismail Matar のいる UAE と対戦するのだけど…..
Metsu 監督の懸念は“ U.A.E. がアジアカップで優勝を収めた時に首都のアブダビのサポーター達はどんな反応をするだろうか…と言う事らしい。 Gulf Cup の時は大騒ぎであったらしいから…… それよりも日本の大会への準備は大丈夫かなぁ??
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怖いですね・・・最近、UAEは復活傾向にありますし、
西アジアでも新興国もどんどん出てます。
日本もこういう大会一つ一つを大事に戦うことって大事だと
思うのですが、いかんせん協会側からそういう熱いものが
伝わって来ていないのは、私だけ??
コメントありがとうございます。
イラン、イラクは西アジア選手権を経てアジアカップに乗り込んできます。そして日本は....
協会は明らかに4年前よりのこの大会に”臨む姿勢”は冷めた感じがします。
いっそ1次リーグで敗退すればもっと改善されるかもしれないですね?でもだんだん現実味が帯びてきそうです。私の不安が当たらない事を祈ります。