Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

アジア大会 陸上競技総括 その1

2006-12-18 | 陸上競技
ドーハで開催された第15回アジア大会は無事に終了した。金メダル獲得数では中国がダントツの 165 個。これは2位韓国 58 , 3位日本 50 , 4位 カザフスタン 23 、5位タイ 13 を足してもまだ及ばず、6位のイラン 11 7位ウズベキスタン 11 を合わせてようやく同数になる。それでも“まだまだ強化は途上段階に過ぎない”と関係者が語るように2年後の北京五輪を控えてまさに強化中といったところだ。

大会7日目より始まった陸上競技。日本の金メダル数は5個。前回の釜山大会では2個だったので躍進と言えるか?それでも70年代は二戦級を送ってもメダルを独占していたのが80年代に入り陸連が“トップクラスをおくらねば”とコメントしたのを思い出す。それだけに前回釜山大会は低迷したのだなぁとおもう。
大会前の日本陸連の試算では金メダルは5個~6個と言われていたが、ハンマー投げの室伏広治が怪我で棄権をしなければもうひとつ上積み出来たと考えられるので、順当な結果だったのかもしれない。しかし、ここ十年ではアジア陸上界も様変わりを見せている。

激変するアジアの長距離界
これまでトラックを含めたアジアの長距離界、かつては日本、それに韓国。女子は中国、日本といった東アジア勢が牽引してきた。今大会の長距離種目のメダリストは下記のとおりだ。

5000m
KURUI James Kavalic カタール
JAWHER Mucheru Salem  バーレーン
ZAMAN Sultan Khamis    カタール

10000m
MAHBOOB Hasam バーレーン
RASHED Essa Ismal カタール
ISA Aadam Ismael   バーレーン

マラソン
HAMI Mubarak Hassan カタール
YASEEN Khalid Kamel  バーレン
大崎悟史 NTT 西日本

3000mSC
SALEM Tareq Mubarak バーレーン
SALEM Gamal Belal カタール
LIN Xiang Qian    中国

カタール、バーレンのメダル争いに日本と中国が僅かに一矢報いる結末に。しかし、地元カタール勢では KURII, RASHED, HAMI, SALEM は2005年にケニアからそして ZAMAN がブルンジから“移民”してきた選手。バーレーン勢でもYASEEN が昨年にケニアからの移民組。他のメダリスト達もアフリカからの移民選手かも? アジア記録も今や 3000mSC, 5000m, 10000m はカタール勢が占める。日本陸連は今大会のマラソンで金メダルを獲れば日本代表に内定すると発表したものの内定者は決らなかった。ソウル、釜山、広島、北京でのアジア大会は秋季に開催されたがバンコックやドーハの様な暑い地域での開催は12月だ。実業団駅伝などのイベントが控えており、ベストメンバーを起用出来たかはわからない。かつてアジアではお家芸だった 3000m SC には選手がエントリーされていない。1986年のソウルでのアジア大会は中山、谷口、そして瀬古、新宅、金井らヱスビー勢が出場したが、それは2年後に控えたソウル五輪の“下見”を兼ねての出場だった。いまやカタール、バーレンの選手達は長距離トラック種目では“ワールドクラス”の実力だ。今年アジア記録を出したカタール Shaheen のタイムは12分51秒98 その他5000m 金メダルの KURUI, 銀メダルの JAWHER は12分台が自己ベスト。4位の前田が13分39秒42。レース展開を見ても 2000mから3000mのラップタイムが2分39秒に急激にペースがあがり、最後の1000m が再び2分31秒。ラスト1週が 53秒8 日本の国内レースでもラスト1周を55秒でカバーする選手を見たことはあるが、それまでのラップタイムで1000m が2分30秒台などと言うレース展開ではなかった。アジアでもトラックレースで日本人選手は太刀打ち出来ないのか?
女子は10000m で福士加代子が貫禄の金メダルを勝ち取ったのを始め、銀2個 ( 5000m 杉原 マラソン 島原 ) 銅2個 ( 10000m小南 マラソン小幡 ) と長距離王国の面目躍如だ。特に福士はレース開始から常にラップを取る独走。2年後の北京ではメダルなるか? 男女マラソンに言える事は今大会にはまだエース級を送っていない事で、これまで男子マラソン大会4連覇を続けていた韓国マラソン界は深刻な状況らしい。 しかし日本男子もエース級を送ったところで今回の HAMI , YASEEN と互角に走れただろうか? 更なる飛躍を期待したい。

進化する短距離陣
かつてこう言われたことがある。“マラソン、長距離はビジネスクラス。短距離、フィールドはエコノミー。中距離は席が無い。”しかし、今やビジネスクラスとエコノミークラスの席替えがなされている様だ。 100m (伊東10.00 ) 200m ( 末続 20.03 ) のアジア記録は日本人が保持している。 ただ不気味なのはサウジアラビ勢。男子100m 決勝の前は日本の塚原、小島が自己記録では1位、2位 だったが優勝をさらったのはサウジの HABEB 。カタールと言う“地の利”を生かしたのと、スタミナが有る様な感じがした。しかも大会公式ホームページには彼の自己記録が記されていない。不気味だった。レースを複数走る大会ではスタミナは大切だ。1本だけでよいグランプリレースには強いが何本もレースを走る五輪や世界選手権、アジア大会の様な大会で結果が出ない選手はスタミナ不足で肝心の決勝戦で結果が出ないという事。アテネ五輪で結果が出せなかった末続はまだスタミナが発展途上過程ではなかったか?このアジア大会から翌年の世界選手権、翌々年の北京五輪に向けて“持久力”の向上にも取り組んでいるのでは無いか? リレーは残念な結果に終わった。 4 x 100m リレーは日本では本命視されていたが、実は優勝したタイも今年に国内記録を更新したばかりでタイでは期待されていた種目。それに100mは3位に SONDEE が銅メダルを採っている。そして1970年代には日本のスプリンターと激戦を交えたラタナポールというランナーがいた短距離“伝統国”。マスコミが考えているほどの番狂わせでは無いと思う。
それよりも 4 x 400m リレーでメダルに届かなかったのが無念だ。男子400m では高野進以来、世界を走れるランナーが出てこなかったがここに来て底上げが出来てきた。山口有希が 45”18 金丸裕三が 45”41 。山口の記録はエントリーされたランナーの中では優勝した、ただ1人44秒台をマークするサウジアラビアの AL BISHI に次ぐ2番目だったのでメダルの期待もあったのだが。2人とも関西人。金丸はまだ19歳。更に進化を続けて欲しい。高校生諸君。君達にもチャンスはあるぞ。そして北京ではリレーでメダルを。
女子はかつて磯崎公美が1982年のアジア大会で 200, 400m を制した伝説がある。しかし、今は旧ソ連邦が入ってきたり、スリランカの英雄 SUSANTIHKA ( 1997年アテネ世界選手権200m 2位 シドニー五輪 200m 3位 ) らの地域の選手が台頭している。100m 金、200m銀 のウズベキスタンの KHUBBIEVA の自己ベストは11秒27。200m ではアジアではまだ23秒台で優勝争いをしているレベルだが 400m では51秒台でメダル争いをする様になってきた。そこに日本の丹野が銅メダルを採ったのは大きいと思う。私の現役時代、日本の女子は国内の大会では100mは12秒台 200m は24~25秒台。400m は55秒台で優勝を争っていた。リレーでは 4 x 100m で中国に次いで2位。アテネ五輪ではリレーが派遣されたが、次の北京でも。そして一つでも上のランクをと願う。
最近はフィリピン勢の名声を聞かない。女子100m ではリディアデ・ベガがニューデリー、ソウルとアジア大会2連覇を果たした。そして1960年代、戦前はフィリピンスプリンターといかに戦うかが日本短距離界の課題でもあったらしい。フィリピーナと結婚された知り合いが“嫁はんの弟が走るの早くて、フィリピンのある国内大会で優勝して、会社から褒美でスクーターを貰いよったわ。”と教えてもらったことがある。今、この国は陸上競技どころではないのかな?   続く


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