子供の時天皇杯の準決勝戦、決勝戦をテレビで見る事が年末から元旦にかけての1つの行事みたいだった。
それは父親がヤンマーディーゼルに勤めていたからだ。70年代初め日本を代表するチームだったヤンマーは天皇杯決勝戦の“常連”だった。同じ職場の“社員”達の活躍を楽しみにしていた様だった。そして決勝戦が終わったらよく仕事仲間と思われる人から電話が掛かって来ていた。 あの世界の“カマモト”も職場にいて何度も仕事上で話をしたとよく父は言っていた。
子供の時テレビで見た国立競技場にいつかサッカーを観に行きたいなぁ…と子供の時に思ったものだった。
J-League 発足前は天皇杯決勝戦が世間一般では最もサッカーに触れられる試合だった。
それから40年近くが経った。サッカーはプロリーグが発足しワールドカップ連続出場を果たし一般人の関心も取り巻く環境も劇的に好転している。それでも天皇杯決勝戦は私の中でサッカーの関心事としては高い試合だ。
そして人生で初めて決勝戦を現場観戦する機会に恵まれた。それもこれも愛する京都サンガFCのおかげだ。
2012年、平成24年の元旦の朝はやや雲の多い空だった。雨の心配はなさそうだったけど気温は低くなりそうだった。
幸運にも手に入れた決勝戦のチケット。 着て行く服は準々決勝戦の湘南戦そして続くマリノス戦と同じ服装にした。勝ち運が逃げない様に…しかし気温が下がりそうなのでアンダーパンツ、要するに股引は履いて行った。それが裏目に出なければ良いがと最後まで迷ったがよく考えれば自分の服装で試合結果が左右されるはずもないことであった….
千駄ヶ谷駅を降りた時はよく晴れた天気になっていた。しかしこの駅で降車した乗客の殆どはFC東京のマフラーやレプリカを纏っていた。やはり“地元”は違うなぁ…と思ったけどわたしは昔からどちらかと言えばアウェーゲームの観戦が好きだった。
競技場入りしたのは試合開始の約40分前。心配だったのは席が空いているかなぁ…と言う事だった。 家を出る前に見た女子日本選手権の決勝戦では両ゴール裏は結構人が入っていた。
京都サポーター席の方は東京側程ではないがもう満席に近かった。天皇杯決勝戦はやはり違う。でも関東にも多くサンガサポーターがいる事が改めて解りそれを嬉しく思った。
結構前の方の席で並びで5席ほど空いているところを見つけた。しかし座席には白色と紫色の紙のボードが置いていた。周囲の人に“ここ空いていますか?”と訊ねると“どうぞ”と言ってくれたので誰かが確保していたのならまたどけばいいやと思いそこに座る事とした。そしてそこは誰にも確保されていなかった。 人文字用のボードがあらかじめ置かれていたので多くの人がそこは空席ではないと思われていた様だった。
向こう正面にはFC東京のサポーター達が陣取る。マリノス戦では“アウェー席”がサンガサポーター席だったけど決勝戦では“地元”であるFC東京が“アウェー側”で京都が“ホーム側”の席が充てられた。
そして東京側からは“J1なんてララ~ラララララ~ラ♪”との合唱が始まった。今年からJ1なのになぁと思っていると、続いて“俺達J1 !! “ とのコールが始まった。おいおい昇格を自慢しているんかいな?と思っていると”お前らJ2 !! “ とのコールが始まった。サンガサポーター達からはブーイングが飛ぶがはっきり言って返せる言葉が無かった。
昨シーズンはJ2で2度対戦し 1-4, 1-6 の連敗と言うよりも惨敗。 しかしその後は工藤が復活する等システムを変更し最後の9試合を8勝1敗で乗り切っている。だから東京相手にどこまでやれるのか楽しみでもあった。
東京のスタメンは準決勝のセレッソ戦と同じスタメン。 9月10日J2リーグで対戦した時とほぼ同じスタメン。しかしあの時はGK は権田でなく塩田。そして石川直宏はベンチスタートで田邉が起用されていた。その時は開始11分に宮吉が先制ゴールを決めたが以降6連続失点を喫しFWルーカス には3ゴールも決められた。石川と並んでもっとも警戒すべき選手であった。
愛するサンガのスタメンは前の試合で警告を受けて出場停止のCB秋本に替って安藤淳がそのポジションに入り加藤弘堅が右SBに。そして中村充孝と組むボランチにチョンウンリョンが出場停止から還って来た。 安藤はCBでの起用は178cmという長身が買われたのかもしれないけど本来MFの選手。大丈夫か?と思ったけどこの試合がサンガでの最終試合となる弘堅のスタメン起用は本当にうれしかった。
そして選手達が入ってくる。天皇杯と書かれたところに並ぶのはどちらのチームだろう…と思った。そしてFC東京サポーター席の人文字に感心したけど、帰宅後テレビで見たらこちら側の人文字も鮮やかだった。
観客席から見ていると東京の選手の上背の高さが目に付く。
後で調べると羽生と左SBの椋原以外は 全て175cm 以上の選手だった。
東京のキックオフで始まった試合は開始早々の45秒、スローインを受けたルーカスが福村のマークを受けながらも素晴らしいミドルを放ち、2分50秒には高橋が森下のマークを振り切り縦パスを石川に通しドリブルシュートを撃つ。共に水谷がナイスセーブで止める。5分34秒には右SB徳永のクロスに石川がヘッドを放つがCB森下がCKに逃れる。開始から右サイドからの速攻に脅威を感じさせられる。そうかと思えば8分27秒には右サイドから谷澤が中に入れ高橋を経由して石川に送られクロスを放り込まれるがここは安藤がクリアー。マリノス、ベルマーレが見せなかった力強い“推進力”を見せつけられている様だった。
しかし先制ゴールはサンガに生まれた。 13分中盤からドゥトラがドリブルで上がると今野と梶山が挟み込むようにマークに入り、梶山に当たって前にこぼれるとそこには中山が。博貴がそのままドリブルで持ち込み東京ゴールにシュートを蹴り込んだ。
一斉に周囲が立ち上がる。よしナイスシュートだ。なるべくリードの時間を長く……と言う期待は長く持たなかった…..
東京は左CKを得ると石川がショートコーナーを送りそのリターンをファーサイドに送るとそこには今野がいた。今野がファーサイドをヘッドで狙う、ボールの先に飛んだウリョンはクリアーしきれずゴールインとなりあっという間に東京に追い付かれてしまった。
出来るだけリードをする時間を長く取りたいと思っていたんだけどなぁ~、と一気に落胆してしまった。
試合後今野が“先制されてちょっとパニックになった。”と語っていた様にこのゴールは東京イレブンに落ち着きを取り戻したと思う。そして同点ゴール後石川が再び2列目右に戻った。
19分26秒にはFKからルーカスに安藤と弘堅のマークを受けながらもシュートに持ち込まれ水谷が右に倒れて何とか止める。
サンガの攻撃は前線の宮吉とドゥトラのドリブル頼みであるがドゥトラにボールが入ると中盤がフォローに入る前に2人、3人と囲みに来るのでボールがキープできずすぐに東京に攻撃が移ってしまう。東京の前からのプレスも厳しく、ボランチの高橋、梶山が高い位置に張り続けられクリアーボールも拾われたり跳ね返されてしまう。 やはり圧倒的な強さでJ2を制するチームは違うなぁ…と思っていると何やら椅子が揺れ出した。その揺れは大きくなり小さくなってもけっこう長く続いた。周囲でおびえる人達も少なくなかった。
電光掲示板上のポールを見ると結構揺れていた。 今年も地震の恐怖に悩まされるのだろうか…..
しかしピッチ上では何事も無かった様に試合は続いていた… こんな時の試合判断はどうするのだろう…と思っていると電光掲示板に地震の事が伝えられた。 試合終了後帰途に着くときに交通機関が問題なく動いていればいいんだけど…と思った。
25分過ぎからまた石川が左サイドに回って来て、27分26秒には羽生からパスを受け中央に送りルーカスのシュートを引き出す。これはGK水谷の正面に飛んだ。 石川のマークを何とかしないとなぁ….と思うと30分頃にまた右サイドに戻って来た。
そして35分12秒、サンガPAすぐ外でFKを与える。 サンガDF陣は上背が…誰かに合わすのかな….と思っていたらCB森重が蹴ったFKは直接目の前のサンガゴールネットに吸い込まれる逆転ゴールとなってしまった。
あぁひっくり返された…と狂喜するピッチ上の東京の選手達を見て9月10日の試合結果を思い出しながら呆然とそう思った。
逆転した東京は右の徳永、左の椋原と言った両SBまでどんどん上がって来ていた。そしてワンタッチパスがどんどん回りサンガDF,中盤のマークをずらして更に攻勢に出て来る。36分47秒には羽生からのパスを受けた石川がルーカスに送り、リターンを貰って放った強烈なミドルはクロスバーを僅かに越える。39分左サイドに回った石川が逆サイドに送り徳永が放ったシュートは水谷がセーブ。
何とかこのまま持ちこたえてくれよと願うが42分9秒、GKを高橋が森下と競りながら前に跳ね返すとそこにはフリーのルーカスが。そしてルーカスには安藤が必死に戻ってマークに入ろうとするもそのままドリブルシュートを決められリードを広げられてしまった。
安藤の位置がちょっと前過ぎた。しかし安藤は本来MFの選手。CBのポジションは…と言う不安を露呈させてしまった。
終了直前、石川が中央のルーカスからボールを受け左サイドから放ったミドルはゴール枠の角を叩いてくれて前半はそれ以上の失点を防げた。 あぁ、やっぱりこれが両チームの力の差か…と重い気持ちでハーフタイムを迎えた…
サンガのキックオフで始まった後半も開始37秒には東京がサンガゴールに攻め込む。最後はルーカスはシュートを撃てなかったが、サンガはどうやって状況を打開するのだろう。久保はいつ投入されるのか…と思った。
京都はショートパスを繋いで東京PA付近に迄来るのだがそこから奪われた時にロングパス1本で一気にサンガゴールを脅かされそうになってしまう。なんだか不経済だなぁ~と思っていると53分58秒、遂に久保裕也が投入された。下げられたのはドゥトラ。この試合はタイトなマークに苦しめられ見せ場は作れなかった。だけどここは思い切って3トップに….は無理だったか…
しかし57分44秒、宮吉のドリブルが止められルーカスが左サイドをドリブルで上がり入れられたハイクロスをウリョンがヘッドでクリアーするが羽生に拾われ石川に送られる。石川は上がって来た今野に送り今野はヒールで石川に戻しそこから放たれたシュートがポストの左をかすめまたもひやりとする。 2点リードもあってか東京は次から次に前線に選手が上がって来て分厚い攻撃を続ける。
58分サンガベンチは充孝を下げて19歳の駒井を入れ、博貴を中に入れ駒井は2列目の左に入れた。
中に入った博貴が64分44秒、左サイドを突破して来た福村のクロスをオーバーヘッドで狙う。シュートは大きく外れたが博貴が中に入った事によりボールキープが出来てパスが前線まで繋がる様になった。しかし最終ラインをなかなか突破出来ない。
そして65分49秒、カウンターから羽生、そして左サイドの椋原と繋がれそこから前線に走り込んだフリーのルーカスにまたも渡り福村がマークに入る前にファーサイドにシュートを入れられてしまった。
これで3点差がついてしまった。 この時点でサンガの勝利は…と思うのはなぁ~と力なく思いながらピッチでの展開を目で追った。
70分41秒、東京ゴール前に迫った福村が梶山に倒されて良い位置でFKを得る。 左サイドの方だけど距離はそうはなれていない。ウリョンがセットをし直接狙ったショットはGK権田が素晴らしい横っ跳びのファインセーブで弾き出してしまった。 あぁあと少しだったのになぁ…よし解った権田。その調子で五輪予選も相手シュートを止めてくれぃ…・ 五輪予選で言えば韓国代表のチョンウリョンのFKを日本代表の権田がストップしたと言う事か…
その直後のウリョンが入れたCKに久保が飛び込みヘッドを捻じ込み1点を還した。
FK を止められ落胆した後のゴールだったので喜びも2倍以上だった。 それにしても久保は何と素晴らしい選手なのだろう。このヘッドも高橋に後方からマークを付かれながらのヘッドだった。 残り時間は20分ある。次にサンガがゴールを決めて1点差とすれば面白くなる…ととたんに希望を持つ様になった。
東京ベンチは71分に羽生を下げて鈴木を入れ75分には谷澤を下げて FW ロベルト・セザーを投入する。 鈴木は羽生のいたトップ下にそのまま入ったがセザーは1トップに入りルーカスが2列目左の谷澤のいた位置に入る。
サンガベンチも76分に弘堅を下げて下畠を入れた。下畠も若い選手だ。サポーター達からはピッチを後にする弘堅にコールを送る…
そしてサンガがボールをキープする時間は更に長くなる。しかしDF陣はラストパスを通させない。 86分40秒工藤がルーカスに倒されて得たFKはクロスバーを越える。 87分20秒、久保が森重からボールを奪い工藤、宮吉と繋ぎ再び久保にボールが入るが東京DF陣は3人がかりでストップ。90分迄に1点を返せばロスタイムで…と胸算用すると今度は東京がカウンターからサンガゴールに迫る。 セザーが右サイドから切れ込み中に入れると鈴木と下畠が縺れながらゴールに雪崩込みそこに水谷が身体を投げ出す。ボールはこぼれて戻った安藤がクリアーを。
ロスタイムは3分と表示される。 3分で2点は…
91分13秒スルーパスを受けた駒井がクロスを送るが森重がクリアー。 ドゥトラが退いたサンガは高さがない…
91分53秒 久保が下畠からパスを受けたところを今野がファールで止めてFKに。ウリョンがボールをセットする。さっきと距離は同じそして今度は右サイドから。もう時間的に同点は不可能だ。でも最後に決めて俺達を喜ばせてくれ….と思うがファーサイドを直接狙ったウリョンのショットはバーに当たりピッチに跳ね返る。
こぼれ球を拾った宮吉が工藤に送りミドルを放つがルーカスがヘッドでクリアー。そのこぼれたところを拾った森下が東京ゴール前に放り込むがここもルーカスがヘッドで跳ね返す。
そして試合終了を告げる西村祐一主審のホイッスルが鳴った。
あぁやっぱり甘くは無かったなぁ~。 これが正直な感想だった。
昨シーズン、最後は連勝したけど結局J2リーグの7位に終わっているのだ。そんな結果で ACL に出場すること自体甘い考えだったのかもしれない。 確かに鹿島、マリノスを連破したけどこの東京戦を見るともし仮に来シーズンJ1に入っても直ぐに降格してしまう可能性は低く無い。 じっくりと鍛えて力を付けてまずはJ1に昇格をして欲しいと強く願った。
幸い若い選手が多くまだまだ発展途上段階、もっと強くなれると手応えを感じるサポーターも多いだろう。
表彰式を終えた両チームの選手達がそれぞれ場内を回る。サンガの選手達が東京サポーター席の前で挨拶をし拍手を浴びてこちらにやってくる。 鹿島戦は貴重な決勝ゴールを決めたが以降は3試合無得点に終わった宮吉は悔し涙を流している。
弘堅、金成勇ら今シーズンを最後にサンガを去る選手達に声援を送る。
次に東京の選手達がやって来た。 こちらから拍手と“東京!東京!”と声援を送る。
“ACL 頑張れよ !! 1次リーグなんかで負けるなよ !!”と 私は叫んだ…
後片付けを手伝い、何人かのサポーター達に挨拶をして帰途に着いた。 国立競技場前から地下鉄に乗車すると中は全て東京サポーター達。あらら完全アウェーだわ…と思っていると1人のサポーターと目があった。
“そちらは強すぎたですね。こちらは弱すぎましたね。”私が言うと
“いえいえ、是非昇格して下さい。今度はJ1でやりましょう。”といってくれたので
“ACL頑張って下さい。観に行きますから。”と答えたら、結構受けた….
確か Brisbane Roar と同じ組になるはずなので楽しみなのは変わらない。また Warren のユニフォームを着て行こう。
息子もACLなら観に行くだろうか…
今年何回サンガの試合を見られるかな….. 帰って録画した試合を見ていたら前半の途中で寝てしまった…..
みなさん本当にお疲れさまでした そして俺も。
それは父親がヤンマーディーゼルに勤めていたからだ。70年代初め日本を代表するチームだったヤンマーは天皇杯決勝戦の“常連”だった。同じ職場の“社員”達の活躍を楽しみにしていた様だった。そして決勝戦が終わったらよく仕事仲間と思われる人から電話が掛かって来ていた。 あの世界の“カマモト”も職場にいて何度も仕事上で話をしたとよく父は言っていた。
子供の時テレビで見た国立競技場にいつかサッカーを観に行きたいなぁ…と子供の時に思ったものだった。
J-League 発足前は天皇杯決勝戦が世間一般では最もサッカーに触れられる試合だった。
それから40年近くが経った。サッカーはプロリーグが発足しワールドカップ連続出場を果たし一般人の関心も取り巻く環境も劇的に好転している。それでも天皇杯決勝戦は私の中でサッカーの関心事としては高い試合だ。
そして人生で初めて決勝戦を現場観戦する機会に恵まれた。それもこれも愛する京都サンガFCのおかげだ。
2012年、平成24年の元旦の朝はやや雲の多い空だった。雨の心配はなさそうだったけど気温は低くなりそうだった。
幸運にも手に入れた決勝戦のチケット。 着て行く服は準々決勝戦の湘南戦そして続くマリノス戦と同じ服装にした。勝ち運が逃げない様に…しかし気温が下がりそうなのでアンダーパンツ、要するに股引は履いて行った。それが裏目に出なければ良いがと最後まで迷ったがよく考えれば自分の服装で試合結果が左右されるはずもないことであった….
千駄ヶ谷駅を降りた時はよく晴れた天気になっていた。しかしこの駅で降車した乗客の殆どはFC東京のマフラーやレプリカを纏っていた。やはり“地元”は違うなぁ…と思ったけどわたしは昔からどちらかと言えばアウェーゲームの観戦が好きだった。
競技場入りしたのは試合開始の約40分前。心配だったのは席が空いているかなぁ…と言う事だった。 家を出る前に見た女子日本選手権の決勝戦では両ゴール裏は結構人が入っていた。
京都サポーター席の方は東京側程ではないがもう満席に近かった。天皇杯決勝戦はやはり違う。でも関東にも多くサンガサポーターがいる事が改めて解りそれを嬉しく思った。
結構前の方の席で並びで5席ほど空いているところを見つけた。しかし座席には白色と紫色の紙のボードが置いていた。周囲の人に“ここ空いていますか?”と訊ねると“どうぞ”と言ってくれたので誰かが確保していたのならまたどけばいいやと思いそこに座る事とした。そしてそこは誰にも確保されていなかった。 人文字用のボードがあらかじめ置かれていたので多くの人がそこは空席ではないと思われていた様だった。
向こう正面にはFC東京のサポーター達が陣取る。マリノス戦では“アウェー席”がサンガサポーター席だったけど決勝戦では“地元”であるFC東京が“アウェー側”で京都が“ホーム側”の席が充てられた。
そして東京側からは“J1なんてララ~ラララララ~ラ♪”との合唱が始まった。今年からJ1なのになぁと思っていると、続いて“俺達J1 !! “ とのコールが始まった。おいおい昇格を自慢しているんかいな?と思っていると”お前らJ2 !! “ とのコールが始まった。サンガサポーター達からはブーイングが飛ぶがはっきり言って返せる言葉が無かった。
昨シーズンはJ2で2度対戦し 1-4, 1-6 の連敗と言うよりも惨敗。 しかしその後は工藤が復活する等システムを変更し最後の9試合を8勝1敗で乗り切っている。だから東京相手にどこまでやれるのか楽しみでもあった。
東京のスタメンは準決勝のセレッソ戦と同じスタメン。 9月10日J2リーグで対戦した時とほぼ同じスタメン。しかしあの時はGK は権田でなく塩田。そして石川直宏はベンチスタートで田邉が起用されていた。その時は開始11分に宮吉が先制ゴールを決めたが以降6連続失点を喫しFWルーカス には3ゴールも決められた。石川と並んでもっとも警戒すべき選手であった。
愛するサンガのスタメンは前の試合で警告を受けて出場停止のCB秋本に替って安藤淳がそのポジションに入り加藤弘堅が右SBに。そして中村充孝と組むボランチにチョンウンリョンが出場停止から還って来た。 安藤はCBでの起用は178cmという長身が買われたのかもしれないけど本来MFの選手。大丈夫か?と思ったけどこの試合がサンガでの最終試合となる弘堅のスタメン起用は本当にうれしかった。
そして選手達が入ってくる。天皇杯と書かれたところに並ぶのはどちらのチームだろう…と思った。そしてFC東京サポーター席の人文字に感心したけど、帰宅後テレビで見たらこちら側の人文字も鮮やかだった。
観客席から見ていると東京の選手の上背の高さが目に付く。
後で調べると羽生と左SBの椋原以外は 全て175cm 以上の選手だった。
東京のキックオフで始まった試合は開始早々の45秒、スローインを受けたルーカスが福村のマークを受けながらも素晴らしいミドルを放ち、2分50秒には高橋が森下のマークを振り切り縦パスを石川に通しドリブルシュートを撃つ。共に水谷がナイスセーブで止める。5分34秒には右SB徳永のクロスに石川がヘッドを放つがCB森下がCKに逃れる。開始から右サイドからの速攻に脅威を感じさせられる。そうかと思えば8分27秒には右サイドから谷澤が中に入れ高橋を経由して石川に送られクロスを放り込まれるがここは安藤がクリアー。マリノス、ベルマーレが見せなかった力強い“推進力”を見せつけられている様だった。
しかし先制ゴールはサンガに生まれた。 13分中盤からドゥトラがドリブルで上がると今野と梶山が挟み込むようにマークに入り、梶山に当たって前にこぼれるとそこには中山が。博貴がそのままドリブルで持ち込み東京ゴールにシュートを蹴り込んだ。
一斉に周囲が立ち上がる。よしナイスシュートだ。なるべくリードの時間を長く……と言う期待は長く持たなかった…..
東京は左CKを得ると石川がショートコーナーを送りそのリターンをファーサイドに送るとそこには今野がいた。今野がファーサイドをヘッドで狙う、ボールの先に飛んだウリョンはクリアーしきれずゴールインとなりあっという間に東京に追い付かれてしまった。
出来るだけリードをする時間を長く取りたいと思っていたんだけどなぁ~、と一気に落胆してしまった。
試合後今野が“先制されてちょっとパニックになった。”と語っていた様にこのゴールは東京イレブンに落ち着きを取り戻したと思う。そして同点ゴール後石川が再び2列目右に戻った。
19分26秒にはFKからルーカスに安藤と弘堅のマークを受けながらもシュートに持ち込まれ水谷が右に倒れて何とか止める。
サンガの攻撃は前線の宮吉とドゥトラのドリブル頼みであるがドゥトラにボールが入ると中盤がフォローに入る前に2人、3人と囲みに来るのでボールがキープできずすぐに東京に攻撃が移ってしまう。東京の前からのプレスも厳しく、ボランチの高橋、梶山が高い位置に張り続けられクリアーボールも拾われたり跳ね返されてしまう。 やはり圧倒的な強さでJ2を制するチームは違うなぁ…と思っていると何やら椅子が揺れ出した。その揺れは大きくなり小さくなってもけっこう長く続いた。周囲でおびえる人達も少なくなかった。
電光掲示板上のポールを見ると結構揺れていた。 今年も地震の恐怖に悩まされるのだろうか…..
しかしピッチ上では何事も無かった様に試合は続いていた… こんな時の試合判断はどうするのだろう…と思っていると電光掲示板に地震の事が伝えられた。 試合終了後帰途に着くときに交通機関が問題なく動いていればいいんだけど…と思った。
25分過ぎからまた石川が左サイドに回って来て、27分26秒には羽生からパスを受け中央に送りルーカスのシュートを引き出す。これはGK水谷の正面に飛んだ。 石川のマークを何とかしないとなぁ….と思うと30分頃にまた右サイドに戻って来た。
そして35分12秒、サンガPAすぐ外でFKを与える。 サンガDF陣は上背が…誰かに合わすのかな….と思っていたらCB森重が蹴ったFKは直接目の前のサンガゴールネットに吸い込まれる逆転ゴールとなってしまった。
あぁひっくり返された…と狂喜するピッチ上の東京の選手達を見て9月10日の試合結果を思い出しながら呆然とそう思った。
逆転した東京は右の徳永、左の椋原と言った両SBまでどんどん上がって来ていた。そしてワンタッチパスがどんどん回りサンガDF,中盤のマークをずらして更に攻勢に出て来る。36分47秒には羽生からのパスを受けた石川がルーカスに送り、リターンを貰って放った強烈なミドルはクロスバーを僅かに越える。39分左サイドに回った石川が逆サイドに送り徳永が放ったシュートは水谷がセーブ。
何とかこのまま持ちこたえてくれよと願うが42分9秒、GKを高橋が森下と競りながら前に跳ね返すとそこにはフリーのルーカスが。そしてルーカスには安藤が必死に戻ってマークに入ろうとするもそのままドリブルシュートを決められリードを広げられてしまった。
安藤の位置がちょっと前過ぎた。しかし安藤は本来MFの選手。CBのポジションは…と言う不安を露呈させてしまった。
終了直前、石川が中央のルーカスからボールを受け左サイドから放ったミドルはゴール枠の角を叩いてくれて前半はそれ以上の失点を防げた。 あぁ、やっぱりこれが両チームの力の差か…と重い気持ちでハーフタイムを迎えた…
サンガのキックオフで始まった後半も開始37秒には東京がサンガゴールに攻め込む。最後はルーカスはシュートを撃てなかったが、サンガはどうやって状況を打開するのだろう。久保はいつ投入されるのか…と思った。
京都はショートパスを繋いで東京PA付近に迄来るのだがそこから奪われた時にロングパス1本で一気にサンガゴールを脅かされそうになってしまう。なんだか不経済だなぁ~と思っていると53分58秒、遂に久保裕也が投入された。下げられたのはドゥトラ。この試合はタイトなマークに苦しめられ見せ場は作れなかった。だけどここは思い切って3トップに….は無理だったか…
しかし57分44秒、宮吉のドリブルが止められルーカスが左サイドをドリブルで上がり入れられたハイクロスをウリョンがヘッドでクリアーするが羽生に拾われ石川に送られる。石川は上がって来た今野に送り今野はヒールで石川に戻しそこから放たれたシュートがポストの左をかすめまたもひやりとする。 2点リードもあってか東京は次から次に前線に選手が上がって来て分厚い攻撃を続ける。
58分サンガベンチは充孝を下げて19歳の駒井を入れ、博貴を中に入れ駒井は2列目の左に入れた。
中に入った博貴が64分44秒、左サイドを突破して来た福村のクロスをオーバーヘッドで狙う。シュートは大きく外れたが博貴が中に入った事によりボールキープが出来てパスが前線まで繋がる様になった。しかし最終ラインをなかなか突破出来ない。
そして65分49秒、カウンターから羽生、そして左サイドの椋原と繋がれそこから前線に走り込んだフリーのルーカスにまたも渡り福村がマークに入る前にファーサイドにシュートを入れられてしまった。
これで3点差がついてしまった。 この時点でサンガの勝利は…と思うのはなぁ~と力なく思いながらピッチでの展開を目で追った。
70分41秒、東京ゴール前に迫った福村が梶山に倒されて良い位置でFKを得る。 左サイドの方だけど距離はそうはなれていない。ウリョンがセットをし直接狙ったショットはGK権田が素晴らしい横っ跳びのファインセーブで弾き出してしまった。 あぁあと少しだったのになぁ…よし解った権田。その調子で五輪予選も相手シュートを止めてくれぃ…・ 五輪予選で言えば韓国代表のチョンウリョンのFKを日本代表の権田がストップしたと言う事か…
その直後のウリョンが入れたCKに久保が飛び込みヘッドを捻じ込み1点を還した。
FK を止められ落胆した後のゴールだったので喜びも2倍以上だった。 それにしても久保は何と素晴らしい選手なのだろう。このヘッドも高橋に後方からマークを付かれながらのヘッドだった。 残り時間は20分ある。次にサンガがゴールを決めて1点差とすれば面白くなる…ととたんに希望を持つ様になった。
東京ベンチは71分に羽生を下げて鈴木を入れ75分には谷澤を下げて FW ロベルト・セザーを投入する。 鈴木は羽生のいたトップ下にそのまま入ったがセザーは1トップに入りルーカスが2列目左の谷澤のいた位置に入る。
サンガベンチも76分に弘堅を下げて下畠を入れた。下畠も若い選手だ。サポーター達からはピッチを後にする弘堅にコールを送る…
そしてサンガがボールをキープする時間は更に長くなる。しかしDF陣はラストパスを通させない。 86分40秒工藤がルーカスに倒されて得たFKはクロスバーを越える。 87分20秒、久保が森重からボールを奪い工藤、宮吉と繋ぎ再び久保にボールが入るが東京DF陣は3人がかりでストップ。90分迄に1点を返せばロスタイムで…と胸算用すると今度は東京がカウンターからサンガゴールに迫る。 セザーが右サイドから切れ込み中に入れると鈴木と下畠が縺れながらゴールに雪崩込みそこに水谷が身体を投げ出す。ボールはこぼれて戻った安藤がクリアーを。
ロスタイムは3分と表示される。 3分で2点は…
91分13秒スルーパスを受けた駒井がクロスを送るが森重がクリアー。 ドゥトラが退いたサンガは高さがない…
91分53秒 久保が下畠からパスを受けたところを今野がファールで止めてFKに。ウリョンがボールをセットする。さっきと距離は同じそして今度は右サイドから。もう時間的に同点は不可能だ。でも最後に決めて俺達を喜ばせてくれ….と思うがファーサイドを直接狙ったウリョンのショットはバーに当たりピッチに跳ね返る。
こぼれ球を拾った宮吉が工藤に送りミドルを放つがルーカスがヘッドでクリアー。そのこぼれたところを拾った森下が東京ゴール前に放り込むがここもルーカスがヘッドで跳ね返す。
そして試合終了を告げる西村祐一主審のホイッスルが鳴った。
あぁやっぱり甘くは無かったなぁ~。 これが正直な感想だった。
昨シーズン、最後は連勝したけど結局J2リーグの7位に終わっているのだ。そんな結果で ACL に出場すること自体甘い考えだったのかもしれない。 確かに鹿島、マリノスを連破したけどこの東京戦を見るともし仮に来シーズンJ1に入っても直ぐに降格してしまう可能性は低く無い。 じっくりと鍛えて力を付けてまずはJ1に昇格をして欲しいと強く願った。
幸い若い選手が多くまだまだ発展途上段階、もっと強くなれると手応えを感じるサポーターも多いだろう。
表彰式を終えた両チームの選手達がそれぞれ場内を回る。サンガの選手達が東京サポーター席の前で挨拶をし拍手を浴びてこちらにやってくる。 鹿島戦は貴重な決勝ゴールを決めたが以降は3試合無得点に終わった宮吉は悔し涙を流している。
弘堅、金成勇ら今シーズンを最後にサンガを去る選手達に声援を送る。
次に東京の選手達がやって来た。 こちらから拍手と“東京!東京!”と声援を送る。
“ACL 頑張れよ !! 1次リーグなんかで負けるなよ !!”と 私は叫んだ…
後片付けを手伝い、何人かのサポーター達に挨拶をして帰途に着いた。 国立競技場前から地下鉄に乗車すると中は全て東京サポーター達。あらら完全アウェーだわ…と思っていると1人のサポーターと目があった。
“そちらは強すぎたですね。こちらは弱すぎましたね。”私が言うと
“いえいえ、是非昇格して下さい。今度はJ1でやりましょう。”といってくれたので
“ACL頑張って下さい。観に行きますから。”と答えたら、結構受けた….
確か Brisbane Roar と同じ組になるはずなので楽しみなのは変わらない。また Warren のユニフォームを着て行こう。
息子もACLなら観に行くだろうか…
今年何回サンガの試合を見られるかな….. 帰って録画した試合を見ていたら前半の途中で寝てしまった…..
みなさん本当にお疲れさまでした そして俺も。
コメントありがとうございます。
東京は本当に強かった。
横浜Fマリノスよりも鹿島よりも断然強かったです。J1そしてACLでの活躍を祈っております。
こんな強いチームに負けたんだと我々を主わして下さい。
ACLは観戦に行きます。