Mr.コンティのRising JAPAN

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Mtildasa そして世界の女子サッカー

2007-10-05 | FIFA Women's World Cup
9月30日、第5回 FIFA Women’s World Cup はドイツがブラジルを 2-0 で降し大会2連覇を飾った。我らがなでしこ達はアルゼンチンを破るなど健闘はしたもののベスト8には残れなかった。今大会のアジア代表勢では地元中国、北朝鮮そしてオーストラリアがベスト8に進出しただけに少し残念な気がした。
9月24日、オーストラリア女子代表 Matildas はブラジルと死闘の末 2-3 で敗れベスト4入りは果たせなかったが、これまで初出場を果たした1995年スウェーデン大会から3大会連続で未勝利でグループリーグの壁を破れなかったが今大会は初戦でガーナを 4-1 で破り大会初勝利を飾ると強豪ノルウェーに 1-1 で引き分け、第三戦では当面のライバル、カナダをロスタイムの Cheryl Salsisbury の起死回生の同点ゴールで引き分けベスト8進出を決めた。
この試合は両チームベスト8を目指して激しい女の戦いが繰り広げられ、 1-1 から85分にChristine Sinclair のヘッドでカナダが勝ち越し、誰もがカナダの勝利、ベスト8を確信した後の Salisbury の同点ゴールだった。



179 cm のCheryl Salsibury は33歳のベテラン選手。代表歴も 138 Caps, 34ゴール ( ワールドカップのゴールを含む ) のキャリアーを持つ。ワールトカップもオーストラリアが初出場を果たした 1995年大会から出場し今大会が4回目のワールドカップとなる。 昨年7月アデレードで開催されたワールドカップアジア地区予選の準決勝日本戦でもその存在感を示しその試合で勝利を収めワールドカップ出場を決めた。Salsibury はかつて日本の L リーグ宝塚でプレーした事がある。
そして準々決勝のブラジル戦、立ち上がり4分に Formiga に先制点を許し 16分には重鎮である Salsiburyが怪我で退場。しかも替って投入された Kate McShea が Renata へのファールで PKを与えてしまい立ち上がり23分で2失点と苦しいスタート。しかし36分にバックパスを拾った Matildas のエースストライカー De Vanna のゴールで1点を返すと 75分には Colthorpe の代表通算2ゴール目で同点に追い付く。 Colthorpe は22歳。20歳のSally Shipard と共に Matildans の将来を担う選手と言われている。 Shipard は昨年のワールドカップ予選でも結構日本を苦しめた。その後ブラジルのテクニックに Matildas の豊満なフィジカルで対応するゲーム展開が続いたが75分 Christina のゴールで突き放され 2-3 で大会を後にする事となった。



それでも大会初戦のガーナ戦でワールドカップ史上初勝利を飾り、カナダ戦では終了直前に追い付き決勝トーナメント進出を決め、準々決勝では優勝候補ブラジルと死闘を演じるなど昨年の Socceroos を彷彿させる展開に地元のサッカーファンの間では大いに話題になったらしい。またこの大会は地上波の SBS で中継されサッカー少女達に大いに良い影響を与えたと思われる。 9月29日に Aussie Stadium で開催された Sydney FC 対 Newcastle Jets のハーフタイムに Matildas の Salisbery, Joanna Peters そして Colthorne が紹介された。そして一通り公開インタビューが終わると彼女達はスタンドからサインを求めるファン達に一人ずつ丁寧にサインをしていた。そして特に目に着いたのが小学生くらいの女の子達。彼女達には特になにかしら丁寧に語りかける様にサインをするこの日の Matildas 達の心情が良く分かる気がした。Aussie Stadium は球技専用スタジアムなので観客とピッチとの位置が非常に近い。こういう競技場が日本でも増えてほしいんだけど、陸上競技経験者からするとやっぱりトラックも欲しいなぁ…..
翌日 SBS で放映された World Games と言う番組で, Matildas  の GK Melissa Barbieri が出演していた。ワールドカップ終了後、再びアメリカでは女子プロサッカーリーグを2009年に再スタートさせる動きがあり、今大会は Barbieri をはじめ Caitlin Munoz などの Matildas Plyer に声が掛かっているらしい。 Barbieri のコメントではアメリカでのプレーに積極的な姿勢を見せていた。それはオーストラリアの全国女子リーグ National League が2004年に崩壊し、その後女子リーグの復興の目処が立たない事にも大いに寄与する。 3年目を迎える A League は何とか興隆の兆しを見せてはいるのだが….. 実際にオファーを受けている Salisbary はかつて New York Power と言うチームでプレーをし、彼女の加入によりオーストラリア女子選手達が続いてうくれる事を願う、と新星米国女子リーグの Tonya Antonucci Chair Man は語る。更にワールドカップで Matildas の指揮をとった Tom Sermanni にも触手を伸ばしている。 Sermanni は2003年に New York Power 監督を務めた経験もある。 そして最も注目されている選手が、今回のワールドカップオールスター16名に Matildas からただ一人選ばれた Lisa De Vanna. だろう。 
今回のワールドカップベスト8の報奨金として FFA から彼女達に支払われた金額は AS$5,000 ( 約 50万円 ) 。自国の国内リーグが崩壊し、殆どの選手が持ち出し、手弁当でワールドカップに臨んだ選手達にとってこの金額が妥当かどうかは推して知るべしであろう。そして彼女達には来年の五輪は無い。1次リーグで敗退したなでしこが北京五輪に出場権を得て北朝鮮に敗れた Matildas 達が北京五輪に出場出来ない事をどう思っているだろうか?? ただ、ワールドカップがいまあったから精神的に切れずにやっていけたと言う選手も多い。オーストラリアでは何とか Matildas 選手達の流出を阻もう、と言う声もあるが、大方の世論は彼女達に同情的だ。国内リーグの再構築の目途もつかないオーストラリアに留まる必要があるのかと…… それに20歳の Sally Shipard は語る。
“19歳の時はいつもホテルのバーホールに行く時は常に身分証明書を持ち歩いていた。(オーストラリアでは18歳までアルコールが禁止 ) わたし達は男子の選手ほどスポットは当たらないが、髪を下ろしたとき(ピッチを離れた時)も少女達の手本となる責任があると思っている。”

ワールドカップ予選の台湾戦の後もシャワールームに入る前に何十分も試合観戦に来たファンへのサインを選手達は続けていたといわれている。 女子サッカーは男子の様にグローバル的に一つの“商品” として確立する事は難しいだろう。現在はNew York, Los Angeles, Washington DC, Boston, Chicago, Dallas そして St Louis のチームが名乗りを上げているらしいがAntonucci 会長は最低でも10 チームにしたい考えらしい。この際一極集中では無いがアメリカ大陸にワールドクラスのトップスターを集めて世界に向けて発信してみてはどうだろう?そこには欧米の選手ばかりでなく、
日本、中国そして北朝鮮の選手達も入ったら面白いと思う。女子サッカーの世界での確立、彼女達が持つ使命はロナウジーニョやアンリ、メッシらが持たないそれかもしれない。 ワールドカップオールスター16名は下記の通り。

GK : Nadine Angerer (GER), Bente Nordby (NOR).
DF : Li Jie (CHN), Kerstin Stegemann (GER), Ariane Hingst (GER), Ane Stangeland Horpestad (NOR).
MF : Daniela (BRA), Formiga (BRA), Kelly Smith (ENG), Renate Lingor (GER), Ingvild Stensland (NOR), Kristine Lilly (US).
FW : Lisa De Vanna (AUS), Marta (BRA), Cristiane (BRA), Birgit Prinz (GER).