Mr.コンティのRising JAPAN

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ブラジルに死角はあるのか?

2006-05-23 | FIFA World Cup
これまで開催された18回のワールドカップ全てに出場。これはブラジルだけだ。優勝5回 準優勝2回、セミファイナリスト3回、誰もが知る世界最高の水準を誇るブラジルだがブラジル国民の関心はただひとつ“セレソン”が優勝するかどうかだ。こんな大国と日本は6月22日に対戦せねばならない。世界中のどの国がこのブラジルを破ることが出来るのだろう?

ブラジル代表の23人は以下の通り。

GK : Dida (AC Milan / Italy ), Julio Cesar (Inter Milan / Italy ), Rogerio Ceni (Sao Paulo)
DF : Cafu (AC Milan / Italy ), Cicinho (Real Madrid / Spain ), Lucio (Bayern Munich / Germany ), Juan (Bayer Leverkusen / Germany ), Roberto Carlos (Real Madrid / Spain ), Gilberto (Hertha Berlin / Germany ), Cris (Olympique Lyon / France ), Luisao (Benfica / Porutugal )
MF : Edmilson (Barcelona / Spain ), Juninho Pernambucano (Olympique Lyon / France ), Emerson (Juventus / Italy ), Ze Roberto (Bayern Munich / Germany ), Gilberto Silva (Arsenal / England ) , Kaka (AC Milan / Italy ), Ricardinho (Corinthians)
FW : Ronaldo (Real Madrid / Spain ), Robinho (Real Madrid / Spain ), Ronaldinho (Barcelona / Spain ), Adriano (Inter Milan / Italy ), Fred (Olympique Lyon France ).

私の愛読する Four Four Two Magazine に中々興味深い記事があった。下記の五つの理由からブラジルが何故優勝すると楽観視されているかを疑問視している。

①歴史は繰り返す
これまで5大会の優勝でブラジルが大会前から優勝候補とされていたのは1962年のチリ大会のみ。この時は前回のスウェーデン大会で彗星のごとく現れたペレを中心にワールドカップ連覇が予想されていた。しかし、そのペレは初戦のメキシコ戦でこそゴールを上げ 2-0 の勝利に貢献するも次のチェコスロヴァキア戦で怪我、次のスペイン戦以降ポジションをアマリルドに譲ることになりピッチに立つ事が出来なかった。だが代役アマリルドがスペイン戦の2得点と決勝のチェコスロヴァキア戦での同点ゴールと大会3得点を挙げる。他にもガリンシャとババが4得点ずつ挙げるなどペレ以外の総合力で他国を圧倒していた。以降1970, 1994, 2002 と優勝を重ねるが、前回大会は南米大陸予選から苦戦続きで監督が替わる等大会の結果が不安視される中での優勝であった。だが1970年大会は大会前から欧州勢はメキシコの高地と高温対策に悩ませており、1994年アメリカ大会もスポンサーの関係から欧州時間に合わせて試合時間が決められた為、炎天下の試合が続き逆に欧州勢の切れは悪くなっていった大会であった。優勝した全ての大会がブラジルに期待されていない大会では無かった。 Four Four Two のこの記事には” 1974年大会は連覇が期待されていたが…” と述べられているが、かつて鹿島アントラーズでプレーしたレオナルドはこの行に“当時はペレ世代の終焉で新旧交代の時期であった。”と指摘。私も当時は地元西ドイツの成就、新生クライフのオランダ、そしてイングランドを欧州予選で破った五輪チャンピオンポーランドの台頭と欧州勢の下馬評が高かった大会と記憶する。 1982年スペイン大会は黄金のカルテットを擁しながら2次リーグでロッシのハットトリックの前に屈した。かつて中盤の一人ソクラテスは“決勝トーナメントでイタリアと当たる可能性があるので要注意”と述べているが、このイタリアをブラジルとは結構互角に戦っている。ワールドカップではブラジルの3勝(1PK勝)2敗だ。だが 1982年のセレソンの敗戦の原因は中8日で臨んだイタリアと中2日しかなかったブラジルとのコンディションの差も大きかったと思うのだが。それからマスコミがよく指摘する“ワールドカップが大西洋を渡ったのは1回だけ”というジンクスは今回はわからない。セレソンのメンバーを見ると第3GKの Rogerio Ceni ( サンパウロ ) MF リカリジーニョ (コリンチャンズ) 以外は全て欧州のクラブに所属する選手達だ。おまけにブンデスリーガ所属の選手が4人もいる。ドイツ以外にこれだけブンデスリーガ所属の選手を抱えている参加国はあるだろうか?コンディション調整を含め今や欧州は彼らの“ホームグラウンド”と言えるのではないか?

② FIFA の思惑 
前回大会と8年前のアメリカ大会でのブラジルの優勝は主審の手助けもあったと述べている。アメリカ大会の準々決勝戦、オフサイドポジションにいたロマーリオにボールが出たがロマーリオはわざとボールに触れずそのままボールはべべトに渡り貴重なゴールが生まれたが、このロマーリオのプレーは本当にボールに無関心を“装っていた”と判断できるか微妙だったと言う専門家もいるらしい。そして記憶に新しい前回の決勝トーナメント1回戦のベルギー戦、ビルモッツの完璧な先制ゴールを主審は何故か認めなかった。これは主審が問題だった。オランダ戦の主審はコスタリカ、ビルモッツのゴールを認めなかったのはジャマイカとサッカー界では小国の主審。彼らは大試合での経験に乏しく、ブラジルを負けさせてはいけないと言う意識が働くらしい。94年のオランダ戦後ブラジル協会の Ricard Teixeria 氏は“ワールドカップの勝負はピッチ内ばかりでない”と述べたらしい。 しかし、今回は風向きが異なる。もし今大会欧州勢が優勝を逃せば、次回の南アフリカ大会そして次々回の開催地として有力なブラジルと欧州勢には不利な開催地が続く。従ってUEFA オルセン会長を始め、欧州勢が今大会優勝する必要があると思っている?それにブラジルが連覇すれば先述の Teixeria 氏の権力が強くなりFIFAブラッター会長ブの地位が脅かされるとの危惧がある。

③ ブラジルサッカー協会 CBF の問題
フランス大会の決勝戦。体調が万全でなかったロナウドを強行出場させたのはスポンサーである NIKE の責任であった、とされている。しかし、現在多くの専門家は NIKE はただスケープゴードにされただけで、真の責任者はサッカー協会の CBF にあった。と見られている。 スポンサー料を吊り上げるために協会がザガロ監督以下ブラジルベンチに圧力を掛けたと言われている。 ただこの手の話は多くある。1978年アルゼンチン大会、初戦のスウェーデンとは 1-1 、続くスペイン戦を0-0 と連続して引き分け1次リーグ落ちが不安視された。第三戦は既に2次リーグ進出の決まっていたオーストリア。エジーニョ、ジーコ、レイナウドが外れロドリゲス=ネト、メンドンサ、ロベルトが起用され、そのロベルトのゴールで勝利を収めたが、“メンバーを決めているのは協会でコウンチーニョ監督はただ座っているだけ”と言う噂が飛び交った。確かに唯一得点を決めたレイナウドが外されたのは以外だったが、ジーコは調子が全く上がらず、エジーニョはタフな守備で定評のある選手。ロベルトは続くポーランド戦でも2ゴール。1980年にはバルセロナに移籍するほどのストライカーの資質を備えていた。 しかしもっと気になるのは先述の Teixeria 会長だ。3月にマイナス20度の極寒の中、ロシア代表と親善試合を行なったがその目的はブラジル製ビールのロシア市場での拡販とされているがAmBev社側は否定してる。だがあの時期に氷点下20度の中で試合を行なうこと自身が不可解だ。 Teixeria 会長はセレソンが遠征する際のホテルの手配等を一切仕切っているが、 NIKE Brazil のトーレス会長でさえ“ Teixeria は協会とのこういった係わりを一切話さない”と述べている。 セレソンは今や世界1のドル箱。テストマッチがセレソンの強化以外の目的で組まれる事は明らかだ。

④ 選手に潜む問題
地元ジャーナリストは選手自信の自己満足に危惧を隠さない。確かに彼らは自信を持ってピッチに立ち、いくらかは負けるのではないかとの不安感も持つ選手もいる。しかし、セレソンというブランドが選手達に慢心を抱かせないか?1994年コーチであった、アルベルト=パレイラ、1970年ベテランFWジャイルジーニョは“とにかく慢心、自己満足を取り除く事に腐心した。”と語っている。今の代表選手にそれを自己認識しているかが心配らしい。それから欧州DFはラフに削ってくる。ロナウジーニョがその標的になるのではないか?1966年イングランド大会ではペレがブルガリア、ポルトガルのDF陣に削られまくったが審判はだれもファウルを取らない。この様にして文字通りペレは大会から蹴り出されてブラジルは1次リーグで消えた。ただこの時のブラジルは世代交代の時期に差し掛かっておりそれが上手く進んでいなかったときでもあった。 

⑤ 誇大評価を信じるな?
果たして今のセレソンは一人一人を見るとそんなに突出した選手なのか?ブラジルのマスコミはカフー、ロベルト=カルロス、GKジダの間の空間を“バミューダ三角海域”と呼んでいる。その空間は何がおこるかわからないと言う事だ。ACミランの GK ジダとレアルマドリードのロベルト=カルロスことロベカルは今季それぞれ所属先のクラブでさしたる活躍は無かったとブラジルでは思われている。カフーは怪我で離脱していた期間が長かった。ACミランのジダは歴代のブラジルGKの中では最も有名なクラブチームでレギュラーを得たとされている。 Champions League での好守連発を思い出せば私は決して今季は不調だったとは思えない。歴代のGK、レオン、タファレルと並ぶ選手と思うが黒人GKとなると1950年、ウルグアイに敗れたワールドカップ以来のGKとなるらしい。(1982年のペレスは違ったかな?間違っていたらごめんなさい。)今でも有色人選手は白人選手の中に混じると気後れしてしまうらしい。これは単一国家の日本人には理解し難い事だ。ロベカルは今年33歳。カフーに至っては開幕2日前に36歳になる。もしどちらかに替わってチチーニョが起用されたら“彼は攻撃参加をしたらそこに留まる” とかつての英雄トスタンは杞憂する。 ”スポーツチャンネル” として世界的に有名なESPN ブラジルのTrajano 氏は “センターバックはいつも我々をいらいらさせる“ とコメント。前回のイングランド戦で自らのミスからオーウェンに失点を許したルチアーノをパレイラ監督が未だに好んで起用する事が不可解らしい。 エメルソン、ゼ・ロベルトの二人もブラジル人から見れば“並みの選手”との評価で、アドリアーノ、ロナウドは“輝きを失っている”との事。今大会の南米地区予選ではブラジルは1位で通過したがそれはアルゼンチンと同勝点で並び得失点差で上位に来ただけで、それもホームでチリを 5-0 で破った試合があったからと厳しい評価。今大会予選ではベネズエラ以外全ての国がブラジルから勝ち点を挙げたがこれはブラジルのレベルが下がったと言うよりも南米のレベルは上がったと言うべきだろう。 しかし先述の Trajeno 氏は“優勝候補と言われる事が心配だ”と述べ、ペレと共にワールドカップを勝ち取ったリベリーノも“多くの代表選手は自分の道を踏み外していると思われる。その選手達がワールドカップで従来の力が発揮できるかに掛かっている。”と“非常に心配している”とコメントしている。 ブラジル国民はそうなるように祈っており、他の31カ国はそうならないことを願っている。