今回のお気に入りは、伊藤計劃②です。
伊藤計劃(いとうけいかく、プロジェクト・イトウ)の「ハーモニー」を読みました。
著者は、デビュー作「虐殺器官」の発表からわずか2年後の2009年に、この「ハーモニー」を遺して亡くなっています。
「虐殺器官」のストーリーは衝撃的でしたが、本書のストーリーもまた衝撃的。
そして著者の人生も衝撃的。
きっともっともっと素晴らしい作品を書きたかったでしょうね。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア"。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した――それから13年。
死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはすの少女の影を見る――
『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
=====
以下、ネタバレ注意。
もっとも古い作品なので問題ないと思いますが・・・。
虐殺器官の発動により、アメリカで大量虐殺が行われた。
その混乱の中、原爆が盗み出され、世界中で原爆テロが発生した。
世界は政情の混乱と放射能汚染により、暗黒の時代を迎えた。
後に大災禍と呼ばれたその時代に終止符を打ったのは、WatchMeにより一人一人を体内から管理する生府だった。
自分の身体は自分だけのものと考える少女3人は、生府に対し反旗を翻す。
本書の序章、この見事な設定を思い出すだけでゾクゾクします。
「虐殺器官」で描かれた悲惨な世界は、序章に過ぎませんでした。
本書では、「虐殺器官」の世界がその後、想像を超えた恐ろしい世界に変貌してしまう瞬間を見事に描いています。
「虐殺器官」のラストシーンはアメリカでも大量虐殺が行われる、という衝撃的なものでしたが、本書のラストはさらに衝撃なものでした。
見せかけのユートピアに戦いを挑んだ元・少女と、世界の混乱を食い止めようとしたもう一人の元・少女。
彼女たちに決着が付いたその果てにあったのは、人々を脳まで統制する「ユートピア」でした。
大量虐殺は悪魔の所業でしたが、ユートピアはさらなる悪魔の所業です。
すべての人々が自我を持たないことで訪れる平和には、人間性のカケラもありません。
これではいくら健康で長生きしても、死んでいることと変わりがないのです。
よくもまあこういう両極端な状況を考えたものです。
タイプがまったく違いますが、ジェイムズ・ホーガンの「巨人たちの星」シリーズで毎巻毎巻新しい世界を見せてくれた、
あの新鮮な驚きと感動を思い出しました。
プロジェクト・イトウの優れた頭脳なら生み出すことができたであろう、「ユートピア」の延長線上にある新たな世界を堪能したかったなぁ・・・。
伊藤計劃(いとうけいかく、プロジェクト・イトウ)の「ハーモニー」を読みました。
著者は、デビュー作「虐殺器官」の発表からわずか2年後の2009年に、この「ハーモニー」を遺して亡くなっています。
「虐殺器官」のストーリーは衝撃的でしたが、本書のストーリーもまた衝撃的。
そして著者の人生も衝撃的。
きっともっともっと素晴らしい作品を書きたかったでしょうね。
AMAZONの内容紹介を引用します。
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21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア"。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した――それから13年。
死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはすの少女の影を見る――
『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
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以下、ネタバレ注意。
もっとも古い作品なので問題ないと思いますが・・・。
虐殺器官の発動により、アメリカで大量虐殺が行われた。
その混乱の中、原爆が盗み出され、世界中で原爆テロが発生した。
世界は政情の混乱と放射能汚染により、暗黒の時代を迎えた。
後に大災禍と呼ばれたその時代に終止符を打ったのは、WatchMeにより一人一人を体内から管理する生府だった。
自分の身体は自分だけのものと考える少女3人は、生府に対し反旗を翻す。
本書の序章、この見事な設定を思い出すだけでゾクゾクします。
「虐殺器官」で描かれた悲惨な世界は、序章に過ぎませんでした。
本書では、「虐殺器官」の世界がその後、想像を超えた恐ろしい世界に変貌してしまう瞬間を見事に描いています。
「虐殺器官」のラストシーンはアメリカでも大量虐殺が行われる、という衝撃的なものでしたが、本書のラストはさらに衝撃なものでした。
見せかけのユートピアに戦いを挑んだ元・少女と、世界の混乱を食い止めようとしたもう一人の元・少女。
彼女たちに決着が付いたその果てにあったのは、人々を脳まで統制する「ユートピア」でした。
大量虐殺は悪魔の所業でしたが、ユートピアはさらなる悪魔の所業です。
すべての人々が自我を持たないことで訪れる平和には、人間性のカケラもありません。
これではいくら健康で長生きしても、死んでいることと変わりがないのです。
よくもまあこういう両極端な状況を考えたものです。
タイプがまったく違いますが、ジェイムズ・ホーガンの「巨人たちの星」シリーズで毎巻毎巻新しい世界を見せてくれた、
あの新鮮な驚きと感動を思い出しました。
プロジェクト・イトウの優れた頭脳なら生み出すことができたであろう、「ユートピア」の延長線上にある新たな世界を堪能したかったなぁ・・・。