鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1343~鬼平犯科帳パート102

2017-03-29 12:27:04 | 鬼平
今回のお気に入りは、鬼平犯科帳パート102、鬼平犯科帳ができるまで、です。

1月に本屋さんで『ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで』を見かけ購入しました。
これまで「オール讀物」に掲載された「鬼平」関連の記事は、できるだけ目を通すようにしてきました。
本書はそれらを一冊にまとめただけの本だろうなと思っていたので、先日ようやく読みました。
ところが実際は、原典が「オール讀物」だけではありませんでした。
「時代劇専門チャンネルガイド」に掲載された記事も載っていました。
そして本書が、ドラマ「鬼平犯科帳」がいかにして制作されたかを知る上で、資料的価値の非常に高い一冊であることを知りました。
こんなことならもっと早く読めば良かった!

AMAZONの内容紹介を引用します。
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遂に幕を閉じたTV「鬼平犯科帳」シリーズ。
その長い歴史を振り返り、制作スタッフたちの貴重な証言を聞き取るファン必読の書。
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28年間に渡り放送された「鬼平犯科帳」。
その人気の秘密を番組スタッフのプロデューサーから殺陣師や録音技師、美術監督などに直接インタビュー。
今の世で正統的時代劇を放送する上での、苦労話、ここだけの話、内緒の話がテンコ盛り。
さらに「オール讀物」に掲載された「鬼平」関連の記事も収録。
鬼平ファン必読の一冊である。
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とにかくスタッフたちの証言、証言、証言。
ドラマ版「鬼平犯科帳」は、彼らの力が集まって出来ていたのですね。
数々の重要証言をあらためて聞いて、ナルホドと頷きました。

またスタッフから聞こえる、役者たちの陰の声には「ヘー」の連発でした。
お熊の出演回数が少なかった訳。
山田五十鈴が2度目に出演したときの設定変更。
五郎蔵キャスティングとその後。
フランキー堺が「よくぞ俺を思い出してくれた!」と張り切ったこと。
どれもファン垂涎のウラ話ばかりでした。

鬼平が終わった理由のひとつに、シリーズが開始したころは京都にロケ地がいっぱいあったが、今はほとんど無くなってしまったこともあることを知り、28年という年月の長さを実感しました。

「俳優事務」という聞き慣れないスタッフの話も重かったです。
役名無き俳優たち。
彼らの動きが真に迫っていなければ、肝心の場面の迫力は損なわれる。
彼らはエキストラではなく演技者。
時代劇の激減により彼らは生活の維持が困難。
前日に出演予定が決まるため、アルバイトのシフトが組めないためだ。

出演者でありながら最も軽く扱われがちな彼らに注目したこの文章は胸に響きました。
著者である時代劇評論家、春日太一の取材姿勢に敬意を表します。

最後は、脚本家について述べていました。
原作は、行間に意味を持たせる技に長けた連作短編集。
それを1時間のドラマにするには、脚本家の力が必要。
行間が持つ意味を、目に見え、耳に聞こえるようにする力。
短編小説を1時間ドラマに膨らませる力。
脚本家の努力により、原作にはない数々の名ゼリフが生まれました。

「忘れたのか。俺たちは二人だけでひと晩、飲み明かした仲だぜ」(一本眉)

「お前って奴は・・・どこまで義理堅い男なんだ」
「なあに、旦那とチョボチョボでございますよ」(あきれた奴)

「貴様ら外道の刀で、あの女のイロが斬れるのか!」(血闘)

これらの名ゼリフが原作にはなかったことに改めて驚きました。
「脚本家は鬼平ワールドを創り出したもう一人の作家である」
著者の言葉に大いに納得。
あらためて脚本家の努力と才能に敬意を評します。

ドラマのマイベスト5、「盗法秘伝」「血頭の丹兵衛」「兇賊」「密偵たちの宴」「血闘」を観たくなりました。






コメント
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