鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1338~小林路子②

2017-03-17 12:10:24 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、小林路子②です。

以前「きのこの絵本」という絵本の感想を書きました。
その時に書いた著者のプロフィールを引用します。
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著者はプロの画家だったのに、きのこ好きが高じて、きのこの絵ばかり描くようになったそう。
そんなことをしていたら食べていけないだろうということで、付いたあだ名が「仙人」。
本人も納得し、作品の隅にマル仙と入れるようになったとか。
イギリスの王立キュー植物園に、著者のきのこ絵が所蔵されている、という凄腕。
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絵本を買ったときに、AMAZONのカスタマーレビューで著者のエッセイが面白いことを知り、いつか読もうと思っていました。
そこで選んだのが、今回ご紹介する「なにがなんでも!きのこが好き」です。
19年前発行のかなり古い本です。
日本経済新聞社から発行されており、帯・扉のコメントを森毅・京都大学名誉教授が書いています。
きのこにはまって、変人呼ばわりされている絵描きのエッセイを、なぜ日本経済新聞社が発行し、京大名誉教授がコメントを寄せているのでしょうか?
この謎は、本書を読まねば解決しません。
ということで、興味津々読むことにしました。

感想を書く前に、AMAZONの内容紹介を引用します。
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ともかくおかしい、きのこにはまってしまった絵描きの生活を描く。
"きのこ採り""きのこ料理""きのこ中毒のコワーイ話""きのこを飼う""きのこグッズ"など、きのこの楽しさをお教えします。
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また本書の帯に書かれた、京大名誉教授のコメントも引用します。
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きのこにはまってしまった絵描きの生活。
ともかく、おかしい
笑いながら、地球を見ることをおぼえよう。
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さあいよいよ、きのこ仙人のきのこワールドに突入!

ナルホド、面白い。
凄腕の画家にしてきのこ仙人ということで、どんな奇人変人かと想像していましたが、ごく普通の方でした。
一例を紹介します。
まつたけ山には、下草を刈り、胞子を散布して、見回りをする自警団がいます。
ある夜、不審な車を発見します。
こんな夜中に何をやっているんだ!と声を掛けると、若い男女があわてて顔を上げたそう。
「そちらのまつたけならどうぞ」と言ったとか言わなかったとか。
・・・というような下ネタ話をちりばめつつ、著者はきのこにまつわる面白い話を続けます。

著者は、急斜面で滑って崖から放り出され、7~8m下の地面に背中から叩きつけられた経験を語っています。
それなのに、奇跡的に怪我ひとつしなかったそう。
その晩は、頭が軽いからとか、あの地に「仙人殉職の地」の碑を建てたらどうか?と酒飲み話で盛り上がったそう。
自分ならそんな目にあったら熱が醒めちゃいますが、この仙人は気合の入りが違います。

料理を作る時間があったら絵を描いていたい、と書いている割には、きのこ料理のフルコースの紹介はお見事。
きのこの種類から調理手順、出来上がりと味わいまで、まるで目に見えるような表現力です。

お得意の毒きのこ事例集も面白かったです。
ナメクジが食べているから毒きのこではない、というのは迷信である理由を、一言で説明しています。
「代謝系も酵素も、人間とは違う生き物だからです!」
ナルホド、納得。
仙人は、ずっとナメクジが大嫌いだったが、近年は慣れてきたと書いています。
それどころか、ナメクジに生まれ変わって、毒きのこをパクパク食べるのもいいかな、ですって!
さすがきのこ仙人。
ナメクジに生まれ変わりたいなんて言う人、他にいないと思いませんか?

毒の強弱だけでなく、人体への影響も種類や個人によって違うなど、中毒話は実に深いです。
中途半端に知識のある人たちが、数多く中毒にみまわれていることを知るにつけ、これまで確実な種類だけを食べてきて正解だったと、胸をなでおろしました。
きのこによる幻覚作用の件は影響を考えて濁した表現で書いていましたが、日本にもそういうきのこがあることを知りました。

最後の章は、きのこグッズ蒐集について。
著者が蒐集を始めたのは、某大学教授の部屋で膨大な蒐集品を見たことがきっかけになったことが書かれていました。
ナルホド、本書の帯・扉のコメントを京都大学名誉教授が書いていた理由がここで判りました。

本書全体を通して、きのこの名称・食毒だけでなく、生物界における菌類の立ち位置など、硬軟取り混ぜた記述でバランスが良かったです。
また大学教授との交流があったり、著者自身がきのこ絵の第一人者であることを考え合わせると、日経新聞の読者が満足する内容だったことも判りました。

最後にすべての謎が解けて、すっきり本を閉じることができました。
趣味とは言えないくらいはまった著者のきのこエッセイ、実に面白かったです。

2月は“こけワールド”に魅力を感じ、3月は“きのこワールド”に魅力を感じました。
知らない世界の魅力を堪能することって楽しいです。
また違う世界をのぞいてみたいと思います。




コメント
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