鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1337~恩田陸②

2017-03-15 12:46:10 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、恩田陸②です。

恩田陸の直木賞受賞を記念して代表作を読もう!
そう思って初めて読んだのは「ドミノ」でした。
主人公が20人以上登場し、彼らの物語がひとつに収束していくという実験小説でした。
読みやすかったけれど、これは代表作ではないはず。
そう思って調べたら、本当の代表作は「夜のピクニック」とのこと。
あれ?
これは前に娘が読んでいた本だ!

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。
それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。
甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。
三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。
学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。
本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
=====

いいオッサンが今さら青春小説なんて・・・と思いましたが読むことにしました。
内容紹介に惹かれるものがあったからです。
自分自身も、学生時代に、毎年42.195kmをひと晩かけて歩くという、「狂歩」と呼ばれる伝統行事を体験していたため、重なるものがあったのです。
あのときは男ばっかりでしたし、どんなことを話しながら歩いたかは全く覚えていません。
確か夜10時に出発して、朝7時に到着していましたから、休憩をはさんで9時間の行程でした。
前半は友人たちといろいろな話をしながら歩いていましたが、後半、とくに最後の10kmはゾンビのように何の表情もなくただ惰性で歩いていました。
そしてゴール後は、ベッドで泥のように眠りました。
足腰の関節は軋み、足の裏は打撲のようになり、1週間くらい痛みが続いたと思います。

本書を読みながら、当時を思い出し、主人公たちのタフさに舌を巻きました。
3倍の時間をかけているとはいえ、2倍の距離を歩くなんて。
それも帰宅組の女子まで。
その上、主人公たちは、高校生活最後の行事の中で区切りをつけなくてはならない事柄を十分話し合い、解決した上でゴールしています。
実に大人です。
体力だけでなく精神的にも彼らにはかないません。
あの頃に本書を読んでいたら「狂歩」の取り組み方が変わっていたかな?
なんて考えてしまいました。

たった24時間の出来事ですが、濃密な物語。
今さら青春小説なんて、と最初は思いましたが、さすがは本屋大賞。
これは名作です。
読んで本当によかった。
本書の解説の「芥川賞や直木賞を受賞した作品が優れている訳ではない、本書が好例だ」には大いに納得しました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする