鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

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お気に入りその1009~竹鶴政孝パート247

2015-01-30 12:32:26 | 竹鶴
今回のお気に入りは竹鶴政孝パート247、マスターブレンダーの自叙伝③です。

北海道新聞の夕刊に連載されたニッカウヰスキー第3代マスターブレンダー佐藤茂生氏の自叙伝から興味深いエピソードをご紹介します。
今回は第3話から第7話までです。

「私のなかの歴史~ウイスキーとともに」

○第3話 大切な役割 10年先見据えて樽を管理

ウイスキーのブレンダーはお酒の方向性を決める大切な枠割を担っています。
樽は180L、250L、500Lの3種類あり、何十万樽もあります。
古い樽、新しい樽、シェリー樽、バーボン樽もあります。
これらの味わいの違う樽を混ぜ合わせて、均一な商品を作る。
同じブランドのものは常に同じ品質のものにする。
少しの数ならいいのですが、何十万樽もあるわけですから、専門的な知識と技能がないと継続できないわけです。
ブレンダーはウイスキーの最終的中身造りの責任者です。
10年くらいをめどにし、ブレンダーは仕事をしています。
既存の原酒から今日のウイスキーを造る、明日に向けた新たな商品を造り、長い目で見た原酒造りを本社と工場が一体となり取り組むのが仕事です。
また将来に向け、原酒を残していかなくれはなりません。
8割は使っても2割は残しておく。
それがブレンダーとして上に立つ者の責任ですね。
ウイスキーは息をしています。
気候、風土の影響を受け、熟成が進行します。
それぞれの蒸溜所、樽ごとに時間とともに変化し続けます。
その変化したものを官能評価し、意図的に組み合わせて、商品を作り上げていくのがブレンダーの仕事です。
自然に任せるだけでなく、人間の知恵を加えていく。


○第4話 高級化 スーパーニッカ増産に力

1981年にブレンダーの責任者になりました。
そのころは、日本のウイスキー業界全体が伸びている時代でした。商品開発の主力は高級化の方向でした。
ニッカはとくにスーパーニッカに力を入れていました。

宮城峡蒸溜所は私の入社した1969年に稼働しました。
竹鶴政孝さんが複数の蒸溜所を造るという夢を宮城の新川川(にっかわかわ)との遭遇で実現しました。
最初からこの場所を知っていたわけではなく、息子の威さんが政孝さんの指示で、東北地方の場所選びの調査中にたまたま水の音に気付いて出会った、という信じられない因縁の場です。


○第5話 新しい発想 モルト原酒100%に懸ける

1984年に柏工場のブレンダー室長になり、初代のチーフブレンダーになりました。
このころ、新しい発想の商品を作っていこうという提案がありました。
ウイスキーの原点に戻るということで、モルト100%のピュアモルトの開発です。
ピュアモルトは、やや陰りが見えたウイスキー市場に光を与えたと思います。


○第6話 級別の廃止 家庭用市場は崩壊の危機

1989年以降、特級ウイスキー市場の減少に歯止めがかかりませんでした。
ブレンデッドウイスキーとして新しいウイスキーができないか検討しました。
そのひとつとして宮城峡蒸溜所にあるニッカ独自のカフェスチル(竹鶴政孝さんがスコットランドから導入した連続式蒸留機)を使って麦芽100%のカフェ式モルトウイスキーを開発しました。
これを「カフェモルト」と命名しました。
これを樽に詰めて熟成して商品化したのが「オールモルト」です。

1989年酒税法が改正され級別が廃止され酒税が一本化しました。
2級のハイニッカが大幅に値上がりし、家庭用ウイスキー市場の崩壊を招きました。
特級ウイスキーは値下がりしましたが、スコッチウイスキーが大幅に値下がりしたため、贈答品としてのイメージを落とし、ウイスキー全体の足を引っ張る結果となりました。
ウイスキーは何を出しても需要が減る一方できつかったですが、新たな市場としてシングルモルトの充実と年数表示品の品ぞろえが必要になると考え、原酒の選別と蓄えを進めていきました。


○第7話 重責引き継ぐ クリアブレンド 秘策的中

1997年ニッカウヰスキーの3代目マスターブレンダーになりました。
通常業務はチーフブレンダーに任せ、取材やセミナーなど外に出る機会が増えました。
1997年の酒税法改正でウイスキーが減税され、1000円以下でウイスキーが出せる状況が復活しました。
そこで登場したのが1000円の「ブラックニッカクリアブレンド」です。
家庭用に使えるのではないかと期待していた「ノンピートモルト」原酒を使いました。
「ブラックニッカクリアブレンド」はニッカの代表的ブランドになりました。


コメント
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