[11月28日/日本経済新聞 朝刊]
ヤマハが著名な高級ピアノメーカーであるオーストリアのベーゼンドルファーを買収することで27日合意した。複数の交渉関係者が明らかにした。買収額は推定で1500万ユーロ前後(約25億円)で、28日にベーゼンドルファー側がウィーンで発表する。ヤマハはグループのブランド力を高めて、課題だった超高級市場の攻略に乗り出す。ベーゼンドルファーは現在、米系ファンドのサーベラスの傘下にある。ヤマハはベーゼンドルファーの全株式を取得する方向で最終調整する。
[11月29日/朝日新聞 朝刊 ヤマハ、ピアノ名門ベーゼンドルファー買収へ]
ヤマハは28日、オーストリアの世界的ピアノメーカー、ベーゼンドルファー(本社・ウィーン)の買収に向け、優先交渉権を得たことを明らかにした。ヤマハが全株式を取得する方向で最終調整している。ベーゼンドルファーは1828年創業で、米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともにピアノメーカーの「世界御三家」と呼ばれる。年間生産量はわずか数百台で、創業からの累計も5万台に満たない。現在は米投資会社サーベラス傘下のオーストリアの銀行が同社の株式を所有しているが、経営難から売却先を探していた。ヤマハは、ピアノの販売金額シェアでは世界一。販売力を生かしてベーゼンドルファーの経営を立て直し、高級ピアノ市場を開拓する考えだ。
ベーゼンのようなニッチなメーカーの存続が危ういことはそうびっくりするような話ではない。しかし身売り先が日本のメーカーで、しかも買収額がたったの25億円ってホント?一体ヨーロッパの人々の誇りはどうなっているんでしょうか?25億円でウィーンの至宝を手放すのか。音楽では並々ならぬ誇りを持つ地元でも相当な反発があることは想像に難くない。
そこでちょっと海外メディアを覗いてみると、
英国タイムズ紙はヤマハの勝利を詳報している。
Yamaha calls the tune in fight for pianos.
(call the tune = 勝利宣言を音楽用語とかけ合わせている)
また地元ウィーンの『
Der Standard』と『
Die Presse』にはいくつかの記事がでてました。直ぐには認めたくないのでしょうか、慎重なようです。どちらも現地11月27日の時点では地元のピアノメーカーBrodmannとヤマハが買収に向けての最後のデッドヒートを演じていることが報じられている段階だ。
このBradmannだが、ベーゼンより古く、ここから職人が独立してベーゼンを作ったようだ。しかし現在ではピアノの生産は中国で行われており、職人がいるわけではない。またベーゼンも数年前までずっと米国のKimballの支援を受けていたが、やっとオーストリアに戻った至宝はまた流出というのが実態のようだ。
この買収によって日本の一般消費者に恩恵があるような気が残念ながらあまりしない。ベーゼンは多少安くなって欲しいという願望はあるが、どっちみち庶民が買える値段ではないしね。ベーゼンのルートを経由して良い木材が日本に入ると良いんですが。
(追記 : 日本ベーゼンドルファーHPより)
日本ベーゼンドルファーは2007年11月27日をもって全ての業務を終了いたしました。