地球は女で回ってる

 
 「地球は女で回ってる(Deconstructing Harry)」を観た(監督:ウディ・アレン、出演:ウディ・アレン、カースティ・アレイ、ジュディ・デイヴィス他)。
 最近、相棒はウディ・アレンものにハマっている。多分、似ているんだろう。この映画の主人公も、アメリカ的な軽さや滑稽さを抜いて、誠実に真っ直にしたら、まるで相棒。

 主人公はニューヨークの流行作家ハリー。これまで、私生活での妻や恋人や姉など女性をモデルに、デフォルメして小説を書いては、彼女たちの激怒を買ってきた。
 かつて放校された母校に表彰してもらえることになったが、彼は目下スランプ気味。おまけに、表彰式に同席してくれる人が見つからない。

 大学の表彰式に向かうという現在進行形のドラマをベースに、愛人との過去の回想の小ドラマ、それをモデルに書いた小説の小ドラマが、ペタペタと貼り合わさる。現在のハリー、過去のハリー、小説のなかのハリーが、交互にストーリーを織りなしていくという、面白い構成。
 最後には現実と小説の世界とがごっちゃになり、小説の登場人物が現実に現われて、主人公を諭し、励ます始末。

 この主人公、小さい頃から無類の女好き、幾つになっても成長しない。大いに博識で、エスプリが利いていて、おまけに脳の回転が速く、マシンガンのように喋りまくる。でも周囲からは、「科学とセックスしか信仰しない」なんてイヤミを言われる。
 鬱病気味で、いつもくよくよし、ぐだぐだと弁解する。酒と薬と女なしでは暮らせず、何度結婚してもすぐに浮気してしまい、そのたびに離婚する。
 周囲には罵倒され、自分でも自己嫌悪に陥るけれども、何を改めるわけでもなく、相変わらずダメ人間のまま。だらしのない最低男が、次々とひどい目に会い、やることなすこと、ろくな結果にならない。

 主人公のハリーを演じるのはウディ・アレン本人なのだから、ハリーの言動は、本音という気もするし、冗談という気もする。まあ、一種の自虐趣味かも知れない。
 最後にスランプを脱出し、やけに自信たっぷりに創作活動に向かうハリー。考えてみれば、状況は何も変わっていないわけで、これからも周囲を憤激させ、周囲に悪態を吐かれながら、小説を書くんだろうけれど。
 ……他人事じゃない。

 画像は、レヴィタン「東洋のショールを纏ったユダヤ女」。
  イサーク・レヴィタン(Isaak Levitan, 1860-1900, Russian)
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