魔の国境越え、再び(続々々々々々々)

 
「もう国境だ。これで半分来たよ」
 相棒はそう励ますけれど、どこからカウントして半分かって言うと、トリエステからなんだ。トリエステからバスでムッジャまで稼いだ距離と同じだけ、今度はコーペルまで歩かなきゃならないなんて、あんまりだよ。
 
 旧国境検問所は、普通の民家やらブドウ畑の庭やらのあいだにあって、私にはほとんど見分けがつかない。けれども相棒は感無量。
「この検問所だって、冷戦時代には悪魔のような存在だったんだよ! 旧ユーゴは云々……」
 こうしてみると、国境ってホントに、社会関係のつまらん産物だねえ。

 ところで、国境は坂の途中にあって、スロヴェニアに入ってもそのまま坂が続くことに、なんだか私は騙されたような気になった。そりゃあ、考えてみたら当然なんだけど。
 スロヴェニアに入った途端に、民家の数がグンと減って、野ざらしの空き地やら、畑やらの緑が増えた。延々と坂を上り切ったところで、道が交錯し始める。

 国境を越えて集落を二つ通過して、三つめの大きな集落がコーペルなのだと、相棒が言う。
 は、は、は、この辺りがようやく最初の集落なわけね。「ほんのちょっと歩くだけだよ」なんて、相棒は慰めるけど……

 でも下り坂だったのでそう感じたのか、あまり歩かずに次の集落に入った。庭の手入れをしているおじさんに、コーペルの方向を確認する。
「コーペルまで? オ~ッ……」
 おじさん、片手のひらで顔半分を覆って、それは難儀だな、と言わんばかりに嘆息する。

 今更どうにもならない。とにかく、海に向かって坂を下りていけば、コーペルなのだという。葡萄畑やオリーブ畑の道を、遠く海の青を眺めながら歩き続ける。

 To be continued...

 画像は、コーペル近郊、オリーブ畑の傾斜。

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