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ギリシャ神話あれこれ:盲目の予言者テイレシアス

 
 予言者というのはなかなか怖ろしい存在で、子供の頃の一時期、私は、ひょっこり予言者に出くわしたらどうしよう、望まない未来の姿を、すでに決定済みのものとして、ことごとく示されたらどうしよう、と悩んだことがあった。誰もが担うべき運命を持ち、それが宇宙の意志によって“書かれている”以上、その運命を知る方法があり、知る方法によって知った人間があることが、自明のように思えたから。
 未来なんて、大まかにならまだしも、事細かく知ってしまったら、生きていく気にもなりゃしない。
 
 ギリシャ神話に登場する稀代の予言者、盲目のテイレシアス。彼は、テバイの建国者カドモスが大地に蒔いた竜の牙から生まれた戦士スパルトイの末裔。

 ゼウスがアルクメネの夫に化けて、一夜限りの夫となりすましたこと。蛇を殺した赤ん坊ヘラクレスが、将来、無類の英雄となるだろうこと。テバイ王ペンテウスが、ディオニュソスを信仰しなければ八つ裂きにされて死ぬだろうこと。テバイの先王ライオスを殺害したのは、その息子オイディプスその人であること。スパルトイの血を継ぐ者をアレス神に捧げれば、テバイはアルゴスに勝利するだろうこと。赤ん坊ナルキッソスが、自らを知ることがなければ長生きするだろうこと。……などなど、数々の名予言。
 死して冥府にあっても、なお生前どおりの知力を失わず、オデュッセウスに、ポセイドン神の息子の眼を潰した呪いで、帰還が困難きわまるだろうことを予言した。

 To be continued...

 画像は、ザンキ「ヘラに盲目にされ、ゼウスに予言者にされるテイレシアス」。
  アントニオ・ザンキ(Antonio Zanchi, 1631-1722, Italian)

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