本物を観るということ(続)

 
 前に、以前から知っていた別の画家が、掲示板上で、ほとんど美術展には足を運ばない、と平然と書いているのを読んで、ショックを受けたことがある。その直後、直近で足を運んだ美術展を取り上げ、自分は現物を観たがお前は観たのか、と書いているのに、二重にショックを受けた。
 話題となっていた美術展は、日本洋画史上、重要かつ著名な画家の企画展だったのだが、これだけの画家の絵なら、普通に美術館に足を運んでいれば、当企画展でなくとも、自然と何度か現物を観る機会があったはずだった。だからますますショックだった。

 ついでだが、この、美術展に行かない画家は、写真から絵を描くのは弊害だ、という持論の正当性を主張する際に、先の、美術展に行くべきとする画家の、同じサイトを援用していた。彼はそのことを知っているのだろうか。……
 描く対象となる現物は、現物を写した写真とは全然異なる(から、写真から描くべきではない)、と主張する画家が、現物の絵を観ずに、その絵の写真で済ますというのも、解せない話だと思う。

 これは私の勝手な感想なのだが、どうも画家には、自分と自分の描く絵との二者関係に入り込む人が多いように思う。本物の絵を観に行く画家が少ない、というのも、そのためかも知れない。

 画像は、アイケン「アトリエのカオス」。
  シャルル・ヴァン・デン・アイケン(Charles van den Eycken, 1859-1923, Belgian)

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