すべてのモモちゃんたちのために

 
 昨夏、福島の五色沼を旅行した際、電車のなかで、モモちゃんという5歳の女の子に出会った。モモちゃんと母は、母の実家に帰省する途中だった。あのとき私たちは、囚われない大人のもとでは、当然に子供はどこまでも真っ直ぐに伸びていくものなのだという実例を、久しぶりに見て、晴れ晴れしい気持ちになった。
 あのモモちゃんの笑顔が頭から離れない。

 福島周辺で何マイクロシーベルトの放射線量が計測されると、政府やマスコミは、レントゲンやCTを引き合いに出し、その数値の小ささを強調し、問題がないと主張する。だが、それは一時間当たりの数値で、そこに一日居れば、×24、一週間暮らせばさらに、×7、計、×168となり、一般人の一年間の被曝限度量をはるかに上回る数値となる。
 もちろんこれは線量を単純計算したもので、放射性物質を取り込む体内被曝、体内濃縮については除外されている。
 こんなことは、すでに多くの人々が指摘している。

 ドイツのサイトがいち早く作成した放射能ダスト拡散予報を、気象庁のほうは作成する気がないらしい。できることをやらない、やろうとしない、そのくせ、「命がけで」「心を一つに」等の精神論と、「ただちに健康被害にはならない」等の言葉の詐術でごまかそうとするのは、明らかな不作為だ。

 政府はパフォーマンスに現地を巻き込んで現地視察を予定していたが、降雨の予報で急遽取りやめた。被曝の可能性があるからではないか。

 なぜ、福島の人々と、風下となる数十キロ圏内の人々とを、避難させないのか。せめて子供たちと若い人たちだけでも。

 画像は、ノルデ「学者と少女」。
  エミール・ノルデ(Emil Nolde, 1867-1956, German)
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