マイン川畔の古城にて(続)

 
 駅から延々歩いて20分。普段なら何でもない距離と時間が、体調が思わしくないとズンとこたえる。
 到着したユースホステルは、施設はすっかりそのままなのだが、オープンしている気配がない。つまり休業中というわけで、まあ想像はしていたけど、一番安易な道が断たれた東洋人二人、思わず落胆の吐息を洩らす。

 が、ユースの門には、別のリーズナブルなホテルを案内する大きな看板が立っている。再び腹痛に襲われた相棒がトイレに行っているあいだ、私はこれらホテルの名前と場所と値段とを、一字一句慎重に書き写す。
 とにかく案内されたホテルに行って、行き当たりばったりに交渉し、駄目ならそこで別のホテルを紹介してくれと、当たって砕けろの図々しさで泣き込むことにして、ドイツ旅行始まって以来のホンモノのホテルへと向かうことに。

「そうと決めたら、ローテンフェルスのユースをキャンセルしておかないと」
「ドイツ語で話しちゃ駄目よ。英語で言わなきゃ」
 相棒はいつも片言のドイツ語で話しかけ、ドイツ語が分かる奴だと勘違いした相手がマシンガンのようなドイツ語で返してくるのに、太刀打ちできずにいる。なので、今回は堅実に対処するよう注意する。 
 で、途中で出くわした電話ボックスで、相棒、気が重そうにドタキャンの電話を入れる。

「今日の予約をキャンセルしたいんですが」
「#%〆♂♀! じゃあ明日来るの!? お金は!? ※§$£¥≒∽!」
「ソーリー! アイム・シック! アイ・キャント・ゴー・トゥ・ユア・ユーゲントヘアベルゲ! ソーリー!」

 キャンセル料を払えと言われたら、こうなった原因はユースの傷んだハムだと持ち出すつもりだった相棒。ドイツのユースには世話になっているので、あまり事を荒立てたくはなかったところを、相手が譲歩してくれて、なんとか無事にキャンセルできた。

 To be continued...

 画像は、アシャッフェンブルク、旧市街への道。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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