テレマン 組曲「ドン・キホーテ」

 
 相棒にテレマン(Georg Philipp Telemann)を教えてもらった。
「テレマンって当時、名声の点でも人気の点でも、バッハを凌ぐほどだったんだよ」
 
 言われてみれば、うん、とってもポピュラーな楽しい曲ばかり。楽才に恵まれて、世俗の心配もなく、その上きっと能天気な人だったんだろうな。曲には暗さが微塵もないし、かと言って軽薄でもない。私は大好き。

 組曲「ドン・キホーテ」はテレマン後年のもので、曲も快活で陽気そのもの。「ドン・キホーテの風車攻撃」、「ドゥルシネア姫に寄せる愛の溜息」、「ロシナンテのギャロップとサンチョ・パンサの驢馬のギャロップ」など、どれも表題どおりの曲で、そのシーンが一つ一つ眼に浮かんで愉快々々。
 さあ、次は「眠りにつくドン・キホーテ」だよ、と相棒に言われて、私も眼を閉じて心静かに曲を待っていると、突然、ドン・キホーテは戦い始めてしまった。彼は夢のなかでも、愛と正義のために走り回っているのだ。あはははは、傑作~、と二人して笑い転げた。

 妄想と現実がことごとく衝突し、滑稽な失敗ばかりを繰り返すドン・キホーテを前にすると、私はいつも、某大学教授ピエーロ氏を思い出してしまう。彼の行動は滑稽そのものだが、当の本人はいつでもどこでも大真面目なのだ。
 ただ、その行動は、ドン・キホーテは善意から発し、ピエーロ氏は悪意から発するのだけれども。

 画像は、セザンヌ「ドン・キホーテ」。
  ポール・セザンヌ(Paul Cezanne, 1839-1906, French)
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