聖書あれこれ:ノアと洪水(続々)

 
 神はノアに言う。私はすべての人間を絶やそうと決めた。地上に洪水を送り、命あるものをみな滅ぼし去ろう。だが、お前は、糸杉の木で箱舟を造り、食糧を蓄えて、妻と子ら、子の妻らとともに、箱舟に乗れ。また、すべての鳥獣を、その種が生き延びるよう、それぞれひとつがいずつ箱舟に乗せよ。
 こうしてノアは、神の命に従い箱舟を造ることになる。

 七日後から雨が降り始める。ノア一家が箱舟に入ると、神は舟の扉を閉ざす。水はどんどん増し、箱舟はやがて地から浮かび、漂い出す。雨は40日40夜、地に降り注ぎ続け、水は高い山々をも覆ってしまう。こうして地上の全生命は滅ぼされる。

 水は150日の間、地上を覆った。その後、神は雨をやませ、風を送ったので、次第に水は引いていき、箱舟はアララト山上にとまる。さらに水が減ると、山々の頂が現われる。
 40日後、ノアが箱舟の窓を開け、カラスを放ったところ、カラスはあちこちを飛びまわったあげくに、箱舟へと帰ってくる。さらにハトを放つが、とまるところがなく、やはり箱舟へと帰ってくる。

 To be continued...

 画像は、チュルリョーニス「燔祭」。
  ミカロユス・コンスタンチナス・チュルリョーニス
   (Mikalojus Konstantinas Ciurlionis, 1875-1911, Lithuanian)


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聖書あれこれ:ノアと洪水(続)

 
 さて、映画「ノア」に登場する、カインの血を引く王トバル・カインは、聖書にも名を連ねるカインの子孫で、人類史上、青銅や鉄など刃物を鍛えた鍛冶の始祖。ちなみに彼の腹違いの兄弟ヤバルは、牧畜の始祖、ユバルは楽器演奏の始祖とされる。

 もう一つ、映画「ノア」に登場する、アンソニー・ホプキンス扮する、よぼよぼの、ノアの祖父メトセラ。彼は969歳という、聖書のなかでの最長寿。聖書の記述どおりに計算すると、洪水はぴったり、メトセラが死んだ年に起こっている。
 なので、神はわざわざメトセラの死を待って、洪水を起こした、という解釈もあるという。まあ、映画のように、その他人類とともに洪水に流されて死んだのかも知れないけれど。

 以下、「創世記 6~9章」からの備忘録。

 人間が地に増えはじめたとき、神の子らは、自分の好む美しい娘を選んでそれぞれ妻に娶った。彼らが娘たちに生ませたネフィリム(巨人)は、太古の名高い英雄だった。

 神は地に悪がはびこるのを見て、人間を創造したことを悔い、人間をこの地上から拭い去ろう、と言う。ただし、その時代のなかで正しく、まったき人間だったノアだけは、恩恵を得た。

 To be continued...

 画像は、ミレイ「箱舟へのハトの帰還」。
  ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais, 1829-1896, British)

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聖書あれこれ:ノアと洪水

 
 随分前のことだが、近くの映画館で上映していた映画「ノア 約束の舟」を観に行った。相棒曰く、「聖書は教養だからね」
 ……ってホントは、エマ・ワトソンが見たかっただけに決まってる。

 子供の頃、人類がこんなにも好戦的なのは、それがあまねく殺人者カインの血を引くからだ、と聞いたことがあった。なるほどねー。

 が、これはどうやら間違いらしい。聖書によれば、人類の始祖はアダムとイブ。二人の息子である兄カインが、弟アベルを殺したエピソードは、人類最初の殺人として有名な話。
 で、アベルが殺されてしまったのなら、人類はやはり殺人者カインの末裔なのか……というと、そうではなく、アダムとイブには、殺人の悲劇後に生まれたセトという息子がいる。のちに大洪水で人類はほとんど滅亡し、ノア一家だけが生き残るのだが、ノアは、このセトの子孫に当たる。

 なら、殺人者カインの末裔は洪水で滅びたのか……というと、そうでもない。カインとセトは、それぞれ妻を娶っていて、彼女らはセト以降に生まれた、アダムとイブの娘たち(らしい)。
 聖書の記述は、女性たちの系譜が貧弱だ。が、カインの子孫も、セトの子孫も、妻を娶って子を生んでいる。妻たちには、殺人者カインの血が入っていたかも知れない。

 To be continued...

 画像は、シェーンフェルト「大洪水」。
  ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルト
   (Johann Heinrich Schönfeld, 1609-1684, German)


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聖書あれこれ:ダニエルの幻視(続々々)

 
 ペルシャ王クロスの治世第三年、ダニエルはさらに、大いなる戦いについての幻を見る。

 ダニエルはチグリス川岸で、亜麻布の衣を着、腰に金の帯を締めた、一人の人を見る。身体は緑柱石のよう、顔は稲妻のよう、眼は燃える松明のよう、腕と足は磨き上げた青銅のよう、声は群集の声のようだった。
 このとき、他にも人々が連れ立っていたが、この幻を見たのはダニエルのみだった。

 ペルシャに三人の王が立ち、続く第四の王は富強をきわめ、ギリシャ王国を攻撃する。ギリシャの一人の勇ましい王(アレクサンドロス)が立ち、大いなる権力をもって支配するが、その王国は子孫以外が受け継ぐ。

 南(エジプト)の王と北(シリア)の王との抗争、云々。北の王に代わり、卑しむべき者(アンティオコス・エピファネス)が、奸計をもって北の王となり、権力を増す。
 王の軍勢はエルサレムの神殿と城郭を汚し、常供の燔祭を退け、偶像を据える。王は契約を破る人々をそそのかして神に背かせる。多くの人々が王に与し、迫害された人々は倒れる。終わりはなお定めの時まで来ないからだ。

 王はいよいよ神をも越えて驕り高ぶり、異邦の神を崇め、他国に攻め入る。だが、終わりの時になって、南の王が彼と戦う。北の王は大軍をもって南の王を、さらに麗しの地(エルサレム)をも、侵略、略奪し、多くの人々が殺される。
 王は新たな戦争のために、エルサレムに宿営する。だが、終わりの時が来る。天使ミカエルが立ち上がり、真理の書に名を記されたユダヤの民は救われる。死者は甦り、知恵ある者は輝き、義に導くものは星のように永遠となる。

 ダニエルよ、お前は終わりの時までこの言葉を秘し、この書を封じておけ。多くの者は探り調べ、知識が増すだろう。終わりの時は、神殿が汚されてから1290日が定められている。忍んで待ち、1335日に到る者は幸いである。

 ……と。

 画像は、ドレ「四つの獣についてのダニエルの幻視」。
  ギュスターヴ・ドレ(Gustave Doré, 1832-1888, French)

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聖書あれこれ:ダニエルの幻視(続々)

 
 ダリヨス王治世の元年、ダニエルは預言者エレミヤの書により、エルサレムが荒廃から救われるまでに70年の歳月を経なければならないことを悟る。

 そこでダニエルは切々と神に祈る。すると天使ガブリエルが飛来し、ダニエルに告げる。

 お前の民とお前の聖都については70週が定められている。これは罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻と預言を封じ、至聖者に油を注ぐためである。
 それゆえ、エルサレムを再建せよとの言葉が出てから、メシアなる君が来るまで7週と62週あることを知れ。苦難のうちに広場と堀は再建される。
 その62週の後、メシアは不当に断たれ、都と聖所は滅ぼされる。終わりは洪水のように到来し、戦いが続き、荒廃は避けられない。だが定められた終わりが、破壊者の上に注がれる。……と。

 To be continued...

 画像は、ドロスト「ダニエルの幻視」。
  ウィレム・ドロスト(Willem Drost, ca.1633-1680, Dutch)

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