チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第140話 送り彼岸

2008年03月24日 | チエちゃん
 暖かい春の日和の中、5歳のチエちゃんは、お母さん、おばあちゃんと送り彼岸の墓参りにやって来ました。
チエちゃん家はおじいちゃんが初代でしたから、まだお墓がありませんが、親戚のご先祖様のお墓参りをするのです。
荷物は、ぼた餅とお煮しめの入った重箱、お茶の入った小さな薬缶、線香とマッチ、それから、彼岸花も忘れずに持ちました。
約1㎞の道のりをテクテクと歩いてゆきます。

 チエちゃん家が檀家となっているお寺は山の中腹にありました。墓地は、その西側斜面に段々に並んでいます。
あちこち親戚のお墓を巡るには、斜面を上ったり、下りたりしなければなりません。墓地の間の小道はところどころ松の根っこがゴツゴツと露になっています。

 チエちゃんは、何時になく、はしゃいでいました。

 走ると ころぶぞ~!

言われたそばから、チエちゃんは松の根っこにつまずいて転んでしまいました。

 うえ~ん、・・・・・

お母さんに抱き起こされたチエちゃんの額から、血が噴出しています。

 お墓でこさえた傷は残るっていうがらなあ
 チエの顔にキズでもついたらなじょすっぺなあ

おばあちゃんも心配そうに覗き込んでいます。

 チエちゃんの額の出血はまもなく止まり、傷も大したことなく完治したのですが、やはり、おばあちゃんの心配のとおり、そのキズは残ってしまったのです。
余程注意をして見なければ、気付かないくらいの痕なのですが、古い言伝えというものは、あながち迷信とばかり片付けることができないものだと、墓参りをする度に思い出されるのでした。