元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「エクステ」

2007-03-03 06:39:28 | 映画の感想(あ行)

 大杉漣の超弩級ウルトラ怪演を存分に楽しめる一編。貨物コンテナから見つかった大量の毛髪と少女の死体が発端となる怪異譚など、ここではあまり重要ではない。

 不遇の死を遂げた少女の“呪い”は、大杉扮する遺体処理係兼エクステ(付け毛。ヘアエクステンションのこと)作成者の病的な髪フェチぶりがパワーアップするきっかけに過ぎない。彼はその“呪い”に悩まされるどころか、逆に吸い取って自らの“野望”を達成するための道具にしてしまうのだから恐れ入る(爆)。髪に頬寄せスリスリする場面に始まって、毛髪でデコレーションした車を乗り回し、時にはヒッピー風のイッちゃった扮装で“♪マイへア~、マイヘア~♪”と楽しそうに歌い踊るド変態ぶりには、思わず喝采を送りたくなる。本年度の助演男優賞は早くも彼に決定ではなかろうか(笑)。

 そんな彼に付け狙われるのが栗山千明が演じる髪の綺麗な美容師見習い生なのだが、中盤過ぎまではどんよりとした大杉のパートと栗山が出ている部分とが完全に分かれているところが面白い。しかも、双方のトーンが完全に違う。冒頭タイトルなんか完全にアイドル映画のそれだし、栗山が自転車に乗りながら“アタシはスタイリストの卵で、今は美容院に勤めているのだっ!”とかいうモノローグを明るく口ずさむあたりは観ていて気恥ずかしくも微笑ましい(なぜそんな独り言を呟いているのかも、ちゃんと理由が示される ^^;)。

 そして彼女の姪が母親から虐待を受けて転がり込んでくるあたりは、それ自体でひとつのドラマとして成り立つほどヴォルテージが高い。虐待母を演じるつぐみが憎々しい好演。「長い散歩」の高岡早紀なんぞ足元にも及ばない存在感であり、虐待の理不尽さと非道ぶりを強調する。

 もちろんクライマックスは画面一杯に毛髪が入り乱れるバトルになるが、ここでも主役は大杉で(笑)、最後の最後まで楽しませてくれる。園子温監督の作品は初めて観るが、オフビートなホラーと笑いのコラボレーションは無視できない個性だと感じた。同監督の他の作品もチェックしてみたい。舞台になった静岡県の田舎町も風情があってよろしい。

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