元・副会長のCinema Days

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「寄生獣 完結編」

2015-05-11 06:58:00 | 映画の感想(か行)

 パート1はそこそこ楽しめたが、この続編は尻すぼみ。もっとスケールの大きな話になるべきところを、程々のレベルで手を打ったような感じは否めない。原作がどうなのかは知らないが、観終わって随分とショボい印象を受ける。テレビ画面にて向き合うのが丁度良いような作品のサイズだ。

 右手に寄生生物ミギーを宿した高校生・泉新一の暮らす町に、パラサイトに与するような市長が就任。市役所は異生物の巣になり、パラサイト達は組織化され一大勢力を築き上げようとしていた。一方、前作の高校での死闘により異生物の脅威をハッキリと認識した警察当局は、対パラサイト特殊部隊を結成して奇襲作戦の準備を進める。そんな中、人類との共存を模索するパラサイト・田宮良子は人間の子を産み、ミギーと共生する新一の行動を注視していた。やがて彼らの前に最強のパラサイトである後藤が現れ、全面対決に突入する。

 多数の死傷者を出したパート1での惨劇を経て警察が動き出すのは分かるが、どう考えても県警本部や警視庁レベルで対処出来る事態ではない。警察庁等の政府当局が乗り出さなければならないケースだと思う。そもそも、警察はどうやって市役所が敵のアジトになっていることを知ったのだろうか。

 劇中にパラサイトに寄生された人間を見分けることが出来る凶悪犯が登場するが、コイツはSATの突撃作戦に同行したにも関わらず、いつの間にか一人で逃げおおせている。パラサイトに関する特ダネをマスコミに売り込もうとするジャーナリストが勿体振ったように出てくるが、危険なインベーダーの存在に気付いているのは彼だけではないはず。これでは、日本のマスコミはすべて無能だと言わんばかりの極論ではないか。

 後藤と警官隊とのバトルを具体的に描かないのも不満だが、新一と後藤との対決の場がいつの間にか放射性廃棄物の処理場になっているのは御都合主義の極みである。最低、田宮良子と警察との立ち回りが衆人環視の元に展開される時点で、世の中すべてがひっくり返るような一大事に発展して然るべきだが、相変わらず舞台は新一らが住む町から一歩も外に出ない。

 斯様に大事なことが描かれていないくせに、新一とガールフレンドの里美とのラブシーンは必要以上に長い。ラストなんか、当然画面の中にいるべき人物が見当たらないという不手際をそのまま提示しており、脱力するばかりだ。取って付けたような“本当の意味での寄生獣とはパラサイトではなく人間なのではないか”というテーマも小賢しい限り。

 山崎貴の演出は相変わらずパワフルで活劇場面もソツなくこなしているが、それだけでは作劇の不備をカバー出来るはずもない。新一役の染谷将太は、今回は後藤を演じた浅野忠信に負けているので減点(笑)。唯一の救いは田宮良子に扮した深津絵里で、演技の幅を広げるという意味で、本作の出演は有意義だったのではないだろうか。

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