元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アウトレイジ ビヨンド」

2012-11-20 06:45:59 | 映画の感想(あ行)

 単調な映画だ。関東を根城にする大手暴力団・山王会は、5年前のクーデター騒ぎを経て、会長が交代した後は政界にまで手を伸ばそうかという勢いを誇示するようになる。悪徳刑事の片岡は、暴力団壊滅を図るため山王会と関西の巨大ファミリーである花菱会とを対立させようと裏工作を仕掛ける。その一環として片岡は、前作で抗争に負けて服役していた大友を無理矢理に出所させ、彼の山王会に対する遺恨を利用しようと企む。

 何よりつまらないのは、本作のメインディッシュであるはずの“騙し合いと裏切り”というモチーフが、メリハリも無いまま全編に渡って漫然と並べられている点だ。

 この“騙し合いと裏切り”というネタがインパクトを持つためには、一方で“信頼と協調”という正反対のモチーフをしっかりとキープしておかなければならない。もしも“信頼と協調”というフレーズがヤクザ映画に似合わないと思われるのなら、それを“(建前としての)仁義”と言い換えてもいいだろう。ところが本作にはそれが全くないのだ。

 どのシークエンスを見ても、あるのは“騙し合いと裏切り”ばかり。登場人物の誰かがのし上がると、すぐさま粛正されるというパターンの繰り返し。これではいくら凄みを効かせたセリフの応酬や残虐シーンが出てきても“ああまたか”といった具合で、ほとんど盛り上がらない。

 もっとも、見せ方を面白くすれば、たとえ“騙し合いと裏切り”のオンパレードであっても映画的興趣は得られるだろう。しかし、この映画には観る者を退屈させないだけの映像的ケレンがまるで足りない。わずかにバッティングセンターでの殺しの場面に興味を惹かれる程度で、あとは冗長な展開に終始する。

 前作で生き残った三浦友和、加瀬亮、小日向文世、そしてビートたけしに加え、今回は西田敏行や高橋克典、新井浩文、神山繁らが顔を揃えるが、いずれも怒号と罵り合いの連続では、いい加減飽きてしまう。

 それにしてもあのラスト、北野武監督はかつての「仁義なき戦い」のようにシリーズ化でも狙っているのだろうか。ヤクザ映画に対する需要が限りなく小さくなった現在、得策とも思えない。もうちょっと違う題材で勝負してもらいたいものだ。

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5 コメント

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北野映画 (十瑠)
2012-11-20 14:38:51
そもそも北野武の映画は好きじゃないので、これも数年後のレンタルでも観ない可能性が高い作品ですが、元・副会長さんの記事には、こちらも観て来たかのような納得感が。
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コメント、ありがとうございました。 (元・副会長)
2012-11-21 07:07:38
 北野武の作風は独特なので、観る人によって評価が分かれますね。また、作品自体も作風に題材がマッチしている場合としていないケースとの差が激しく、出来不出来がとても大きいです。

 それにしても、本作は先のヴェネツィア映画祭に出品されましたけど、個人的には「この程度で出品できるのか?」という不遜な感想を持ってしまいました。まあ、結局は無冠でしたけど、当然かなと・・・・(^^;)。

 北野監督には、以前の「座頭市」みたいに“外から持ち込まれた企画”をやってほしいですね(自分で考案する題材はどうもネタ切れの感がありますので)。

 それでは、これからも宜しくお願いします。
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Unknown (こうじ@季節の小箱)
2012-11-22 21:43:15
見ました。
ビートたけしさんのファンなので、
何でも、よく見えます。

でも、この映画は、元・副会長さんに同感のところがたくさんあります。

出演者が、全然、悪者に見えませんでした。
もっと徹底的に悪いのかと期待したんですが、
みんないい人に見えました。
たけしさん、年をとって
いい人になっちゃったのかなあ、って感じです。

「悪の教典」
上映すること自体は危険なので反対ですが、
映画としてはよくできていると思いました。
「のぼうの城」と連日で見ましたが、
「悪の教典」の方が、10倍、よいできだと思います。
原作も、上巻はすごく面白いですし。

まとまらなくて、すみません。
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コメント、ありがとうございます。 (元・副会長)
2012-11-24 10:47:12
たけしの映画で私が一番好きなのは「あの夏、いちばん静かな海」なのですが、この映画には彼自身は出ていませんね。今後は監督に専念した作品も観てみたいところです。

「のぼうの城」は私の仲間内でも評判悪いです。ヒットしている原因は・・・・というとよく分かりませんが、たぶん“戦国もの”だからじゃないかと思っています(←理由になっていない ^^;)。

貴志祐介の作品は、やっぱり初期のものが最高です。「ISOLA」と「黒い家」は映画化されましたが、原作の足元にも及びませんでした。「クリムゾンの迷宮」の映画化を望みたいところですが、ロケ地が撮影困難な場所になるので無理っぽいですかね。「天使の囀り」はグロ趣味が強くて映画化しても大ヒットは期待出来ないかもしれませんですが、カルト映画にはなりそうです(笑)。

それでは、今後ともどうかよろしくお願いします。
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Unknown (こうじ@季節の小箱)
2012-11-26 00:14:00
僕も一番好きなのは「あの夏、いちばん静かな海」です。
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