元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「仄暗い水の底から」

2012-07-13 06:26:56 | 映画の感想(は行)
 2001年作品。「リング」などで知られる鈴木光司の同名短編集におさめられている「浮遊する水」の映画化。娘の親権を夫と争っているヒロインが生活を立て直そうと新しいマンションに引っ越すが、そこで怪異現象に遭遇するという話だ。監督は中田秀夫。

 どうもパッとしない出来だ。どんより濁った色調の画面と舞台背景に、ジットリ湿った空気感で観客の神経を逆撫でする作戦はいいとして、肝心のショック場面の御膳立てが従来の作品とほとんど変わらないのでは平板な印象しか受けない。中田監督は自己のホラー演出パターンが当時すでに多くの観客によって見切られていることを知るべきだった。



 原作の読み所は古いマンションに出現する少女の亡霊ではなく、ヒロインの異常とも言える潔癖かつ被害妄想的な男性恐怖症である。映画でもそのあたりをサイコ・サスペンス風に突っ込めば面白い結果になったかもしれないが、問題を親子の絆にスリ替えてしまったため、凡庸な“母もの”のルーティンに終始してしまう。これではダメだ。

 そもそも、昼間働く母親がなんで子供を幼稚園に通わせるのか。普通は保育所だろ。それでいて“ヒロインが夕方に娘を迎えに行けなくなること”を重要なプロットにしようというのだから、この作劇は根本的におかしい。なお、主演の黒木瞳は熱演だけど怖がりすぎ。それに対して、子役は達者(笑)。
コメント
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