元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ぱいかじ南海作戦」

2012-07-28 06:52:48 | 映画の感想(は行)

 観ていてノンビリは出来るが、ただそれだけといった感じの映画だ。椎名誠の同名小説の映画化。勤務先が倒産し、嫁さんには逃げられ、失意のどん底にあった主人公の佐々木が“自分探し”のために訪れた西表島で一癖も二癖もある連中と付き合うハメになるというコメディ。監督はこれが長編映画監督デビューになる細川徹である。

 最初に佐々木が出会うのが、浜辺でホームレス生活を送る怪しい四人組だ。彼らと意気投合する佐々木だが、しばらく経つと四人組は佐々木の荷物とカネを奪って姿を消してしまう。たちまち窮地に追いやられる佐々木の“救世主”になったのが、都会生活に疲れて島にやってきたオッコチくんという青年。佐々木は彼を言いくるめて、生活費を出させることに成功。

 やがてアパとキミという女子二人も加わり、浜辺での生活も板に付いてきたところで、彼らはくだんの“ドロボウ四人組”に対して戦いを挑むという話だ。

 阿部サダヲ扮する佐々木のモノローグに乗って、調子よく話が進むところはよろしい。ホームレス連中に簡単にダマされた情けない野郎であるにもかかわらず、サバイバルの達人を気取って3人の“新参者”に向かって蕩々とウンチクを垂れるのも笑える。ただし、彼らが立案する“作戦”というのがテントの周囲に鳴子を配置したり、落とし穴を掘ったりといった“子供レベル”である点はあまり愉快になれない。しかも実際はそれらと関係なく決着が付いてしまうのだから、観ているこちらは鼻白むばかり。

 また主人公の別れた妻がCMディレクターで、撮影隊を引き連れて島にやってくるという終盤の展開も取って付けたようで愉快になれない。中盤までのサバイバル路線を緩い感じで続けていけば、上質の“環境ビデオ”みたいなノリで盛り上がったと思うのだが、残念だ。

 阿部サダヲは相変わらずの快演だが、オッコチくん役の永山絢斗やピエール瀧をはじめとする泥棒軍団も気持ちよさそうに演技をしている。ただし、キミに扮する佐々木希は最悪だ。まったく演技が出来ないのに、どうして映画に出ていられるのだろうか。今回特にアパ役として貫地谷しほりという芸達者が隣に控えていることもあり、その大根ぶりは痛々しい限り。今後よほど優秀なスタッフに恵まれない限り、女優業から足を洗った方が良い。

 肝心のラストは正直言ってワケがわからない。原作もそうなっているのかどうか知らないが、これでは途中で映画作りを放棄したと捉えられても仕方が無いだろう。
コメント
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