元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ジェーン・エア」

2012-07-07 07:11:19 | 映画の感想(さ行)

 (原題:ANE EYRE)さほど中身は濃くないが、キャストの頑張りと映像面でのアドバンテージにより、観賞後の満足感は決して小さくはない。ジェーンを演じるミア・ワシコウスカは“あまり美人ではないが、確固たる意思を持つ女性”という原作の設定通りのパフォーマンスだ。

 もっとも“美人じゃなくて気が強い女”だけならば映画の主人公としてのアピール度は低いが(笑)、ワシコウスカには品がある。そして「永遠の僕たち」でも見せたような独特の透明感もある(ハリウッドで仕事をしている女優の中では、こういう持ち味は珍しい)。ロチェスター役のマイケル・ファスベンダーも実に良い。一見粗野だが実は真っ直ぐな気持ちを秘めているあたりの表現は、なかなか説得力がある。ジェイミー・ベルやジュディ・デンチといった脇の面子も申し分ない。

 アドリアーノ・ゴールドマンのカメラによる英国ダービーシャー州の風景は、本当に美しい。荒涼としているが、千変万化する天候とそれによってさまざまな色合いを見せてくれる大地の有り様は、作品の風格を高めている。アカデミー賞候補にもなった、マイケル・オコナーによる衣装デザインも素晴らしい。

 しかし、映画の筋書きの進め方は感心しない。ヒロインの性格に大きく影響を与えたのが、子供時代の叔母のリード夫人とその子供達の虐待、および無理矢理に入れられた教育施設ローウッドでの出来事であるはずだが、本作ではかなり端折られている。だから最初から“主人公はこういうキャラクターなのだ”という設定になり、どうも話に宙に浮いた感じになる。もちろん、長い原作を約2時間に収めなくてはならないためにエピソードを削るのは仕方が無いが、もっと脚色にメリハリを付けるべきだっただろう。

 キャリー・ジョージ・フクナガの演出はソツがないが、前作の「闇の列車、光の旅」ほどの才気は感じられない。そもそも“どうしてこの古典を現在映画化するのか”という動機が窺えず、作品のコンセプトとしてはテレビの2時間ドラマと似たり寄ったりだ。なお、音楽担当のダリオ・マリアネッリはここではベストの仕事をしている。流麗なメロディは本年度屈指の名スコアになるだろう。サントラ盤はオススメだ。
コメント
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