元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

定価10万円クラスのスピーカーの試聴記。

2009-10-17 06:41:04 | プア・オーディオへの招待
 先日、オーディオシステムのスピーカーを買い替えたことを述べたが、新しい機種としてB&W社685を決定する前に同価格帯の製品をいくつか試聴しているので、それらの印象をリポートしたい。

 まず、同じB&Wの製品であるCM1。過去に何度も試聴しており、音質の概要も分かっていたつもりだが、今回は私が所有しているアンプのSOULNOTEsa1.0と接続し、改めてサウンドをチェックしてみた。やはりCM1は低能率であるだけに、音圧感が低い。さすがにヴォリュームを上げると、奥に広い音場に闊達で明瞭な音像というこのスピーカーの特徴が少しは出てくるが、この製品を鳴らすのに低出力のsa1.0を使わなければならない道理はなく、早々に候補から外した。

 次に聴いたのはFOSTEXGX100である。FOSTEXはスピーカーユニットで知られる国内メーカーだが、近年はスピーカーシステムにも意欲的な製品を投入している。GX100は最も安価なモデルながら、高品位なパーツをふんだんに使った戦略商品だ。

 聴いた感じはとてもクリアである。中高域には一点の曇りもなく、低域も締まっている。伸びとキレの良さが光る機器で、価格を考えればコストパフォーマンスは相当高い。しかし、能率が低くsa1.0では鳴らしきれていないのも事実だ。さらに国産品の特徴である“音の暗さ”が感じられ、聴く曲によっては音色が冷たい印象も受ける。常時聴きたいモデルではないことは確かなので、これも導入を見合わせた。

 DynaudioのエントリーモデルであるExite X12も試聴した(画像参照)。前の2機種より少し定価が高いこともあってか、ワンランク上の展開を見せる。とにかく音場が広大だ。情報量も高水準を維持する。音色は明るいが、陰影の表現にも長けている。実売価格は10万円を切るということで、十分射程内に入る。

 しかし、本機はインピーダンスが4Ωしかなく、説明書に“インピーダンスが8Ω以上のスピーカーを繋げて下さい”と明記してあるsa1.0でドライヴするには不安が残る。実際、他の高出力アンプで駆動した場合に比べれば、sa1.0では力感がイマイチだ。しかも、Dynaudioのスピーカーは使いこなしに細心の注意が必要で、リアバスレフによるセッティングの制約にも懸念があったので、あえて選外とした。

 以上、SOULNOTEの取扱店にてsa1.0を繋げて試聴した機器を紹介したが、他のショップでもいろいろとスピーカーを聴き比べているので、それらについて述べたい。

 QUAD11L2はこのクラスでは人気の高い機種だ。滑らかで艶のある音色には定評があり、特にヴォーカルの再現性は見事である。キャビネットも鏡面仕上げであり、一般ユーザーの所有欲をそそる。しかし、B&Wの685と比べれば実売価格差ほどにはレンジ感などの音質の違いはない。また、低音の出方がリアバスレフ特有の空気感を伴うものであり、後方の壁との距離をかなり取らないと真価を発揮しないモデルのようだ。

 MONITOR AUDIOSilverシリーズは最近一斉にモデルチェンジされたが、定価10万円クラスのRX1は私がショップに足を運んだ時には入荷していなかったので、前機種のRS1を試聴した。このブランド特有の澄んだ音像表現とスッキリとしたレンジ感が楽しめたが、奥行き表現は不得意だ。MONITOR AUDIOはハイエンドモデルにもこの傾向があり、ポップス系には申し分ないがクラシックやジャズの臨場感はイマイチだと思う。

 DALIのMenuetIIは何度も試聴しているモデルだが、サイズに似合わない音場の広さと上品で艶のある中高域はいつもながら感心する。キャビネットが小さいため低音の量感が足りず、それとインピーダンスが低いこともあって導入は出来なかったが、このクラスでは際立った存在感を持っているのは確かだ。なお本機は既に生産が終わっており、近々新しいMenuetが発売されるものの、この持ち味が新製品に引き継がれるのかどうかは未知数である。

 ついでに以前使っていたKEFのiQ3の後継モデルであるiQ30も試聴してみた。ハッキリ言って印象は良くない。基本構成は前作と変わらないが、高域だけを無理に引き延ばした感じで、バランスが悪い。しかもその高音は純度が低く、余計な強調感がある。B&Wの685と並べて比べてみると質的にかなりの差があり、しかも繋ぐアンプや使用するケーブルによってはキンキンと聴きづらくなる。個人的にはまったくの期待はずれだった。



 今回最も好印象だったのは、MUSEHEARTS-2CXである(画像参照)。MUSEHEARTとは聞き慣れない名前だが、ピュアオーディオ専門の広告代理店である美梼(ミューズ)社が展開しているブランドで、限られたショップでしか扱わないガレージメーカー品だ。

 とにかく音像が鮮明。しかもまろやかさがあり、聴き疲れしない。音場は広く、上下方向と奥行きの表現に優れる。国産品にしては音色が暗くない。あらゆるジャンルに対応出来る。B&WのCM1よりも明らかに解像度や分解能などのパフォーマンス能力は上。CM1のアッパークラスであるCM5ですら凌駕する。DynaudioのExite X12に比べても情報量は互角だが、音場展開ではS-2CXの方を好むリスナーも多いだろう。さらにS-2CXは低能率でも低インピーダンスでもない。クセのない音色から考えてアンプをあまり選ばないと思われる。

 残念ながら値付けが表示価格から1円も割引できない商品で、これではプライスがB&Wの685の約二倍になってしまうことから購入は断念したが、10万円代前半の予算でスピーカー導入を考えているユーザーにとってはベストバイの一つだ。それにしても、スピーカーの分野でも国内ではガレージメーカーの頑張りが目立つ。今後、家電量販店に置いてある商品しか買わない一般ピープルと、能動的に良い商品を見付けようとするユーザーとの間では、選択肢に関してかなりの差が付くのかもしれない。
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