元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ドリアン・ドリアン」

2009-10-12 06:55:00 | 映画の感想(た行)
 (英題:Durian Durian )2000年作品。香港の歓楽街で体を売って稼ぐ中国本土の若い女を描いたドラマ。フルーツ・チャン監督が香港で評価が高い理由は、エンタテインメント一色の香港映画界の中で珍しくシリアスなリアリズム路線(しかもスター俳優抜きで)を取っており、その“孤高ぶり”が一目置かれているからだと思われる。しかし、アジア映画総体で見れば、そういう製作スタンスだけで高評価は得られるとは限らない。少なくとも私は本作を面白いとは思わなかった。

 チャン監督の身上は“香港返還ネタ”であるが、すでに過去3回も同じ題材を扱っており、すっかりマンネリである。確かに香港人にとって中国への返還は重大な事件なのだろうが、いつまでもそこに拘泥していては幅広い映画ファンの共感を得るには至らない。せめて一作ごとにアプローチ方法を変えて多才ぶりをアピールしてもらいたいものだが、この作品も相変わらず“即物的なドラマツルギーと素人起用によるリアリズム狙い”という手法を繰り返すのみ。

 しかも、舞台を中国本土に広げたことによりストーリーが多様性を示しているのに対し、一本調子の演技しかできない素人を何の考えもなく出演させているあたり、まことに迂闊と言うしかない。おかげで語り口に起伏がなくなり、観ていて死ぬほど退屈だった。

 キャストも魅力がなく、得に主演のチン・ハイルーとかいう女は単に“京劇が出来る”というだけで顔も十人並みだし全くスクリーンに映えない。いいかげん、チャン監督は“自然な作劇だけでは映画にならない”という常識に気付くべきだ。
コメント
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