元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「タマもの 突きまくられる熟女」

2009-10-23 06:23:57 | 映画の感想(た行)
 2004年作品。まずは上映画質の悪さに絶句した。ダビングを繰り返したビデオテープほどのクォリティしかない(・・・・というか、それを元にした画像を映写に使っているのだろう)。これでカネ取って観せようというのだから、天神シネマのサービス水準は相当低いと言わねばなるまい。しかも、時たま画像がストップする。そのことに関しての劇場側の釈明は無し。この小屋はダメである。シネテリエ天神時代からのスタンプカードが貯まっているのであと1,2回は通うかもしれないが、それ以降は足を運ぶ気はない。

 さて、本作は“ピンク七福神”の一人と言われるいまおかしんじの監督作だが、ヒロインの造型が面白い。ボウリング場に勤務し、自身もボウリングを嗜む彼女は数々のトロフィーを獲得しているが、私生活は孤独だ。それを表現するかのように、終盤になるまで彼女は一言も発しない。また、口をきかせないことは孤立感の表出であると同時に、言い訳無しで自身の感情をストレートにぶつける主人公の行動様式をも明示させている。

 彼女には年下の恋人がいるが、ほとんど心が通い合っていない。何やかやと世話を焼く彼女を相手は“重く”感じていて、それどころか元より優柔不断で身勝手な野郎であるため、たやすく浮気する。挙げ句の果ては、同じ職場の女と懇ろになり婚約までしてしまう。そして、他に女がいることをヒロインに告げたのは婚約後だ。

 主人公が文字通り重い口を開くのがラストで、そのシチュエーションも相まって衝撃度はかなりのもの。単に“愚かな女の末路”という片付けられ方を拒否するかのごとく、突き抜けたような純情が前面に出ているのは、作者の人間観察が非凡であることの証左に他ならない。

 主演の林由美香は小柄ながら上質のルックスと均整の取れたプロポーション、そして張りつめた演技で強い印象を残すが、残念ながら本作を撮った翌年に30歳代前半の若さで急逝してしまう。惜しいことをした。

 なお、劇中で彼女が作る料理は実に美味しそうだった。特に彼氏に作ってやる弁当は絶品。劣悪な画質からでも十分それは伝わってくる。最近の日本映画では「南極料理人」や「のんちゃんのり弁」と良い勝負である。
コメント
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