元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ランボー 最後の戦場」

2008-06-01 07:14:08 | 映画の感想(ら行)

 (原題:JOHN RAMBO)これはマカロニ・ウエスタンである。シルヴェスター・スタローンの当たり役を20年ぶりに復活させた本作、今回はミャンマーを舞台に、狼藉の限りを尽くす地方軍を相手にして八面六臂の大活躍を見せる。

 最近のサイクロン被害での対応に見られるように、ミャンマー軍事政権の姿勢は唾棄すべきものだ。しかし、彼らにとって国を牛耳ることになった必然性というものはあったはずで、これを“絶対悪”として見なすには無理がある。同様にこの映画では善玉として扱われているカレン族の戦士にしても、全人口の7%でしかない民族の武装組織に過ぎない。このようにヨソの国ではうかがい知れない事情というものがあるのだ。単純な善悪の色分けは禁物である。

 ただしこの映画は敵役をその地方でのさばっている“悪代官”みたいな、いわばローカルな扱いにして、ポリティカルな言及を避けていることは脚本の手柄かもしれない。ランボーが助けることになる医療ボランティアの連中も、自ら危険地帯に出かけて勝手に窮地に陥るという、ミャンマーでなくてもアフリカでも中近東でもどこにでもありそうなパターンを踏襲しているし、設定としてはそれほど違和感はないのである。

 さて、地方軍は悪の権化だから手段を選ばず殲滅してもいいという扱いなので、これは“インディアンは悪”という昔の西部劇と同様だ。ただし冒頭“マカロニ・ウエスタン”と書いたのは、イタリアで作られた“なんちゃって西部劇”の方がハリウッド製西部劇よりも数倍血糊が多かったように、この映画のスプラッタ度が通常の戦争アクションより尋常でなく高いからだ。

 悪代官どもが地雷だらけの田んぼを一般民衆に走らせて爆死させるのを皮切りに、村を襲って虐殺する場面の途方もない残虐描写、そしてクライマックスになる河辺での戦闘シーンに至るまで、血しぶきと肉片の乱舞で覆い尽くされている。その徹底ぶりは、驚きを通り越して笑うしかない。ひょっとして監督も兼ねるスタローンはS・スピルバーグの「プライベート・ライアン」を観て“負けられない!”と“奮起”したのではなかろうか(爆)。もっとも、シリアスな戦記物である「プライベート~」とは違い、劇画調に徹しているあたりがスタローン御大らしい。

 ラストはある意味感慨深いが、還暦を迎えても身体は良く動くスタローンのことだから、続編もあり得るのかもしれない。次は久々にアメリカに舞台を戻してテロリストなんかと相対するのも面白いかも・・・・。
コメント
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