元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「僕の彼女はサイボーグ」

2008-06-07 06:43:41 | 映画の感想(は行)

 クァク・ジェヨン監督作品らしい“主演女優で保っている映画”だ。「猟奇的な彼女」や「僕の彼女を紹介します」で立証された通り、女の子を可愛く撮ることにかけてはアジア屈指の腕前を持つ同監督だが(笑)、日本で作られた本作もその持ち味は全面開花している。

 そもそも小出恵介扮する冴えないオタク大学生が簡単にキレイな子と付き合えるわけがないのだが、映画ではそんなことにを気にさせる間もなく、ヒロイン・綾瀬はるかの魅力で観客をノックアウトしてしまう。

 それにしても、この若い女優にはこれほどまでに人を惹きつける力があったのかと思うほど、それはそれは可愛く描かれており、特に最初に主人公の前に現れてニコッと笑いかける場面など、まさに観ていてスクリーンに吸い込まれるようなヤバい感覚に襲われる(爆)。二度目に人間型ロボットとして姿を見せるときは、さすがに冷たい無表情で通すが、常軌を逸したパワーを持て余しつつも次第に主人公を意識するようになる過程がこれまた萌え萌えなタッチで捉えられており、この監督の変態スレスレの感覚には苦笑してしまう。実はこのロボットは未来の自分が送り込んできたという設定で、ほとんど「ドラえもん」の世界なのだが、作者は日本のアニメーションが相当好きなのだろう。

 さて、前半は好調だけど後半は腰砕けというパターンに陥った前述二作に比べれば、この映画のクァク監督は意外と頑張っている。予告編でも示されたように、本作の中盤以降にはカタストロフがやってくる。このロボットの役割はそれを乗り切ることでもあるのだが、かなり強引な筋書きにドラマツルギーが壊れてくると思いきや、何とか二枚腰で土俵際に残ってしまうのには驚いた。

 そして長めの上映時間はタイム・パラドックスに一応の決着を付けるために必要だったことが分かり、作者のマジメな姿勢に感心してしまったほどだ。もちろん突っ込みどころはけっこうあり、特にロボットが主人公を子供の頃に連れて行くところは、どう見ても描写が彼の親の世代の子供時代であり、脚本の練り上げが足りない。

 しかし、監督が外国人ということも考え合わせれば笑って許してしまうレベルのものだろう。SFXは健闘していて、活劇シーンのテンポも良い。難しいことを考えずに気楽に観るのにはもってこいのシャシンだ。ただし、彼女のようなロボットは厳密にはサイボーグではない。サイボーグは脳は人間で身体の一部(あるいは全部)が機械というシロモノである。人間そっくりに作られた彼女は正しくはアンドロイドと呼ぶべきだ。
コメント (2)
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