元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「NEXT ネクスト」

2008-05-12 06:34:09 | 映画の感想(英数)

 (原題:NEXT)作り手が途中で放り出したとしか思えない出来だ。2分先の未来を予知できる能力を持っている主人公が、核ジャック事件の解決のため奔走するという本作、映画の焦点は当然“たった2分先しか予知できない超能力者が、どうやって重大犯罪に挑むのか”という、その理詰めのプロセスになるはずだ。

 しかし、この“2分先の予知可能”といった物語の大前提が映画が進むにつれ崩れてきて、いつの間にやら“どんな未来でも予知できる”みたいな感じになってくる。要するに“何でもあり”の状態である。これでは締まりのある作劇が出来るわけがない。

 それでも序盤は“2分先の予知可能”を活かしたシークエンスが展開されていた。たとえば能力を使ってカジノで一儲けしている主人公にカジノの警備陣が迫るが、彼は能力をフル回転させて紙一重のタイミングで追っ手をかわしていく。その段取りは見事だ。そしてカフェにて気になる女性にモーションをかける場面、あらゆる口実を試して正否を“予知”し、最終的には一番妥当なものを採用するという、その根性が実に浅ましくも微笑ましい(笑)。

 ただし面白かったのはここまで。あとはドラマは弛緩する一方である。だいたいロシアから核爆弾を盗み出したという触れ込みの犯人グループの存在感がゼロに等しい。こいつらはチンケなエスパー相手に何をモタモタしているのか。とっとと爆弾をセットして政府なり何なりを脅迫した方が話は早い。主人公が2分後しか読めないのならば、恐るるに足らずだ。

 彼に協力を依頼するFBI側も有効な戦術を立てているわけでもなく、せいぜい“爆発のニュースを2分前に察知して対処させる”といったもの。せっかく予測しても2分では何もできないハズだけどね(脱力)。そして極めつけはあのラスト。観客を完全にバカにしている。こんな結末しか考えられないのなら、わざわざフィリップ・K・ディック御大の原作を登用するなと言いたい。

 ニコラス・ケイジは「ゴーストライダー」に続く“お手軽アクション編”での登板だが、日本では一応有名スターで通っているものの、こんな仕事しか来ないところを見ると、本国では落ち目なのかもね(爆)。捜査官役のジュリアン・ムーアも手持ち無沙汰の様子。印象的なのは、ヒロイン役ジェシカ・ビールのエロい身体の線と、ピーター・フォーク翁の登場ぐらいか。リー・タマホリの演出は「007/ダイ・アナザー・デイ」の頃とは打って変わったようにテンポが悪い。VFXも低レベルで、これは今年のワーストテン入り確実だ。
コメント
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