元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ディスクロージャー」

2008-05-04 19:21:48 | 映画の感想(た行)
 (原題:Disclosure)94年作品。ワシントン州シアトル。大手ハイテク企業の副社長の座は、たたき上げで人望も厚い主人公の製造部長(マイケル・ダグラス)ではなく、運と口先三寸と色仕掛でノシ上がってきた若い女重役(デミ・ムーア)だった。しかも彼女は主人公の昔の恋人。気まずい雰囲気に仕事もうまくいかない主人公を、彼女は副社長室に呼び出す。そしていきなり関係を迫った。いったん“その気”になったが何とか逃げ出した彼を、彼女はセクハラ疑惑で告発しようとする。“逆セクハラ”の罠にはまった主人公の反撃なるか。原作はマイケル・クライトン。監督はバリー・レヴィンソン。

 ハッキリ言ってしまおう。どうでもいい映画である。セクハラ事件を契機に、企業における男女間の断層とか、フェミニズムと保守主義の対立とかいった深い問題に入るのかと思ったら全然違う。フツーのおじさんが淫乱な女とアホな社長(ドナルド・サザーランド)のケチな陰謀に必死に抵抗するというサスペンス・ドラマであった。まーそれでも良く出来ていれば文句はないのだが、映画中盤に底が割れてしまうプロットの甘さ。いつの間にやらセクハラ問題は脇に追いやられ、サエない“活劇”に終始するこの映画のどこが“全米騒然の超話題作”(当時のチラシにそうある)なのか。

 収録に一週間かけたという“逆セクハラ”シーンは全然大したことない。日本のピンク映画ならこれ以上のものを1時間もあれば撮れるだろう(それにしても整形ばりばりのD・ムーアのバストは見ていてシラけるぜ)。ヘンに凝った美術も効果なし。

 バリー・レヴィンソンはこの少し前まで「レインマン」や「わが心のボルチモア」のような秀作を手掛けていたのに、本作では個性のかけらも見えない“やっつけ仕事”に終始している。題材について深く突っ込むとか、少しは観客を考えさせてやろうとか、そんなこころざしの高さがどこにもない。

 それにしても、劇中出てくるヴァーチャル・リアリティ・データベースシステムには笑った。大仰な仕掛なんだけど、用途と機能はただの廉価版データベース。もうちょっと考えて作ってほしい。
コメント
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